遠隔支援アプリの導入で現場監督の移動時間を削減
次に、建築現場の現場担当者がタブレットやスマートフォンを通して、現場から離れた場所で建物や躯体の状態などを映像で確認することができる遠隔支援アプリを導入し、リモート検査も展開中だ。
国が2,000社あまりの建設会社を対象に行った調査によると、一昨年1年間で、1か月あたりの時間外労働が45時間を超えていた割合は、職人が5%の一方で現場監督は13%と、2倍以上の開きがあった。現場監督は現場での管理・監督に加えて書類作成といった事務作業もあり、仕事量が多くなる傾向がある。
大東建託でも、検査のために現場間を移動する時間が多く、とくに複数人で行う品質検査はスケジュール調整を要し、工程への影響にも懸念される。今回は建築基準法に基づく中間検査とは別に、建物の品質を確保するため、大東建託が独自に行う「施工者自主検査」にアプリを導入。遠隔での確認場面では、ポインタ機能や遠隔撮影などの記録機能の活用により、遠隔地にいながらもリアルタイムで円滑に意思疎通を図る。

遠隔支援アプリでリモート検査
アプリによるリモート検査により、遠隔地にいても集合検査と同等の検査精度を確保でき、現場管理の品質を損なうことなく、現場管理者の移動時間削減による業務の効率化と生産性向上が可能となる。これまで検査の際、ある現場監督は一人あたり移動に1~2時間あたりかけていたがこの時間を短縮することで、自身の担当の現場でより安全と品質向上の業務に集中できる成果が表れたという。
「遠隔検査の導入で移動時間の30%の削減効果があり、現在、デジタル技術を活用した建築基準法に基づく完了検査などの遠隔実施では、国土交通省の行政検査の試行検証に協力しているところ。このような取組みでより限られた人材で効率よく検査をこなしていく体制を整備する」(泉氏)
ウズベキスタンの大学卒業生が現場監督に
2番目の「建設就労人材確保に向けた取り組みと働き方改革」では、2024年度中に外国人を建設技術者として正社員で採用する方針を示した。経営幹部がウズベキスタンで面接し、現地のタシケント国立工科大学の卒業生から5名を採用予定で、日本人社員と同じ待遇で迎える。12月の来日を経て入社し、入社後は首都圏拠点の工事部門に配属され、施工管理業務を担当する。ウズベキスタン政府も海外で働く学生の就労を支援しており、大東建託がこれに応えた形だ。
「大学訪問を通じて学卒の現場監督の担い手確保に動いているが大変苦戦している。そこで高卒採用も実施しており、高校訪問も積極的に実施しているが、さらなる現場監督の獲得に動き、今後はウズベキスタンの方を現場監督として育成する。将来的には外国人の現場監督の数を100~200人へと増やしていきたい」(泉氏)
ウズベキスタンの建設人材は、最短で入社から4年後に1級建築施工管理技士の資格取得を目指し、大東建託は知識と経験の両面をサポートするほか、来日後、国内社員と同水準の社宅供与、日本語教育などの研修を実施。2025年4月以降は2025年学卒者と合流し、日本人社員と同様のカリキュラムで育成する。
「6月27日にウズベキスタン大使館を訪問し、竹内啓社長とアブドゥラフモノフ大使が懇談し、意思確認をしっかりと図っている」(泉氏)
これまで大東建託は、2014年から協力会社向けに、ベトナム人などの東南アジアからの技能実習生延べ1,335名の受入れを支援してきたが、自社の正社員として外国人を採用するのは初のケースだ。このほか、即戦力人材として、日本で現場監督経験がある高度人材のミャンマー人の採用を開始し、2024年7月から特殊物件に特化した特建工事センターへ1名配属が決定しており、現場監督として活躍に期待がかかる。スキームとしては人材紹介会社が優秀な高度人材外国人を大東建託に紹介し、面接・選考を経て正式に入社する。
最後の柱が「匠マイスター技能選手権」だ。匠マイスター技能選手権は、大東建託協力会の会員(約14,000社・約15万人)の中で、豊富な知識と経験を持ち、模範となる技能者として認定された「匠マイスター」が技術力を披露し、安全性や品質、施工スピードなどを競うもの。
2023年度の大東建託現場の10~20代の造作大工の数が2010年度比で約半数の300名まで減少しており、若年層の建設業界離れの抑制、次世代への技術継承を目的に、2019年~2022年にかけて「造作大工」を対象職種とした「第1回 匠マイスター技能選手権」を開催した。

匠プロジェクト 第1回全国匠マイスター技能選手権東京大会の参加者 / Photo Direction:Cotton’s、Photo:Commercial Brain
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2024~2025年にかけて開催する「第2回 匠マイスター技能選手権」では、第1回の対象職種「造作大工」に加え、「電気」・「設備」の3職種混合チームによるリレー形式で行う。より現場に近い環境で職人の技を目にすることが可能だ。
「職人の技能を見てもらい、『職人はかっこいいな』と感じてもらいたい。建設の魅力を技能選手権を通じて発信したい」(泉氏)
今後のスケジュールは次のとおりだ。
地区大会
- 2024年7月27日(土)東京ビックサイト、石川産業展示場
- 2024年11月2日(土) 西日本総合展示場
- 2024年11月23日(土) 神戸国際展示場
全国大会
- 2025年11月パシフィコ横浜
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建設業は旧3K(きつい・汚い・危険)とのイメージがあるが、泉氏は一刻も早くこのイメージから脱却し、これからは新3K(給料がいい・休暇が取れる・希望が持てる)に加えて、かっこいいと感じ取れる業界へと進展し、今後とも大東建託が新たなことに挑戦する意欲を語った。
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