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「使ってみて、塗るゴムは土木界のオロナイン。どんな傷にも効くのかな、と」

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根津 寿子
公開日:2024.11.05
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9月にあったハイウェイテクノフェアに出展。塗るゴムは関心を集めた。

9月にあったハイウェイテクノフェアに出展。塗るゴムは関心を集めた。

目次
  1. 無機・有機のハイブリッドで、ゴム化する特殊な材料
  2. 耐候性、施工性、経済性、環境性に優れている
  3. ゴム表面のひび割れを塞ぐ効果が期待できる
  4. NETIS申請で苦労した点と、塗るゴムの今後の展望

3年前に耳にした言葉がよみがえる。高速道路の維持管理の最前線、技術に熱くそしてシビアな現場に身を置く道路会社のエンジニアは言った。

「鋼面の防錆、コンクリート面や隙間部の止水に塗るだけ。使ってみて、塗るゴムは土木界のオロナイン、どんな傷にも効くのかなとも感じている。メタルにもコンクリートにも、今後も用途はすごくあると思う。早くNETISにも登録して、誰もが使いやすい環境を整えることで、同じように、物理的にケレン要らずで効き目がある対策を求めている個所とか、経済的にコンパクト施工が必須で本補修までもたせたいとか、そういう現場に役立てられるのでは」

無機形塗料を一貫して製造・販売してきたセラアンドアース(平良一夫代表)の主力ラインナップであるインフラ長寿命化材料シリーズ(セラマックスシリーズ)の新たな補修材料「セラマックスFT70(塗るゴム)」が7月にNETIS(新技術情報提供システム)への登録を完了した。

6年前に開発に着手、複数の高速道路会社から協力を得て、現場に即した施工性で高い施工品質が再現できる材料へとブラッシュアップを経て、2019年に上市した。市場投入後、NETIS申請書類作成と審査側との調整にあたった角和夫さん(日本インシークの技術本部技師長であり、セラアンドアースの技術顧問でもある)に、塗るゴムの概要や用途、NETIS登録などについて聞いた。

無機・有機のハイブリッドで、ゴム化する特殊な材料

――セラマックスFT70(塗るゴム)とはどんな材料ですか?セラマックスシリーズのセラマックスとは、無機材料(セラミック)を最大限(マックス)まで入れていますよ、ということを表したネーミングだと受け止めていたんですけれど、FT70ってゴムの指標か何かですか?

角さん 無機・有機のハイブリッド材料で低分子から常温で高分子化、つまりゴム化する特殊な材料です。反応型紫外線吸収剤と反応しているため、紫外線劣化に強く、下地(母材)を長期間保護するとともに、それ自体による密着性も非常に優れています。

そうそう、FT70とは何ですか?とよく聞かれます。FとはFuture、つまり未来(将来)を意味します。Tとは平良(または塗料の意味もあります)。70とはAgeの70。合わせると、平良社長が未来の塗料を70歳の時に開発した、というものです。

――そうなんですね。古希を寿ぎつつ、七十にして心の欲する所に従えども矩を踰えず、世の中のためになる良い材料みたいな意味に受け止めます。それで、塗るゴムのイメージはどんなですか?

角さん 図-1に示すように大気からの劣化因子となる雨、太陽光(紫外線)、その他窒素酸化物などからコンクリート構造物などを保護します。これまでは、表面被覆工(多層構造の塗装)により保護されていました。ご承知のとおり、表面被覆工は耐候性を付与するためのふっ素樹脂塗料などの上塗り、付着力を与えるエポキシ樹脂などの多層構造で施工されてきました。塗るゴムは、図-1に示すとおり、独自の付着力により1層構造で十分な耐候性を付与します。また、コンクリート構造物においては微細なクラックにも浸透し、硬化する過程で高分子構造となりクラックを塞ぐ特性を有します。

図-1 塗るゴムの防食イメージ

図-1 塗るゴムの防食イメージ

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耐候性、施工性、経済性、環境性に優れている

――それで、そもそもなんですが、NETIS(新技術情報提供システム)に登録する意義とは?

角さん まず、NETIS(新技術情報提供システム)に掲載されることで、技術のPRにつながります。まだ十分知られていない工法や技術についての活用検討機会が増え、施工条件などに適合する現場で当該技術が採用され、活用につながります。さらには、事後評価を行うための調査の実施と事後評価が行われます。

事後評価に伴い、

  1. NETIS(評価情報)に掲載され、技術の一層のPRにつながることとなります。
  2. 技術の評価により技術改善のヒントが得られます。
  3. 評価の結果、活用の効果が優れていた技術は有用な新技術(活用促進技術など)に指定されることになります。
  4. 有用な新技術は、NETISホームページで公表されるうえ、施工者希望型での活用により工事成績評定へ加点されるなど、現場での普及がより一層促進されます。

つまり、材料や工法のPRはもちろんのこと、事後評価が行われれば活用促進やより一層の改良などが促進されることとなり、いわゆる、工法や技術のスパイラルアップにつながっていきます。

NETISに関して一般的に勘違いされているのは、申請して登録されれば国から工法や技術を認めてもらった、ということです。そうではなく、あくまでもこういう技術や工法があり、比較対象があり(比較対象がない場合もある)、使ってもらう機会が用意された、と考えるべきです。申請技術・材料・工法などを使ってもらう機会が欲しければ発注者側に根気よく説明することが必須です。とんとん拍子で使ってもらった場合は、事後評価をしてもらい、さらなる改良や改善を加え、一本立ちの技術や工法に仕立て上げることが必要です。

――セラマックスFT70(塗るゴム)の比較対象となる従来技術はありますか?

角さん セラマックスFT70(塗るゴム)は、常温でゴム化し、なおかつ反応型紫外線吸収剤により紫外線劣化が起こりにくい材料です。それでは、どんな場所で力を発揮できる材料なのか、以下にご紹介します。

  1. 常温でゴム化する
    →表面被覆により外的劣化事象から本体を護る必要がある。
    →クラックが発生し、力学的、材料的な損傷から護る必要がある。
  2. 紫外線劣化に強い
    →紫外線劣化により劣化が進行する材料を護る必要がある。

以上から、従来、コンクリート構造物や鋼構造物の表面被覆材として使用されてきた塗装システムが対象となります。併せて、ひび割れにも浸透し、その後膨張してひび割れを塞ぐ機能も持ち合わせます。

図-2に比較対象となる技術と本技術を示します。

図-2 比較対象技術(表面被覆工と塗るゴム)

図-2 比較対象技術(表面被覆工と塗るゴム)

――そうなると、塗るゴムが従来技術より有利な点は?

角さん 表面被覆工法では、下塗りから上塗りまで最大3層(コンクリートの場合)~6層(鋼部材の場合)程度の厚塗り施工がなされます。塗料は、下塗りから上塗りまでそれぞれ役目を持っており、付着性を担保する塗料、耐候性を担保する塗料など、それぞれ重要です。表面被覆工は、構造物本体を保護するもので紫外線、水、塩分などの侵入を防ぐ役割を持ちます。最上層の上塗りは耐候性に優れたふっ素樹脂塗料を用います。中塗りには上塗りとの接着性を担保するエポキシ樹脂塗料を、下塗りには基材(母材)と中塗りの接着性を担保するプライマーを用います。

塗るゴムは、1層で付着性や耐候性を付与します。耐候性に関しては反応型紫外線吸収剤が入っていることにより表面被覆工の上塗り塗料(有機系)で問題となる白亜化(チョーキング)が起こりません。この結果、上塗り塗膜の劣化が起こりません。また、有機系塗料で問題となる揮発性有機化合物(VOC)がほとんど入っていませんし、希釈剤のシンナーも必要としませんから環境問題が発生しません。費用に関して言えば、材料費が若干高いものの、施工が一層で済むことにより通行規制費などの諸費用が大きく減り、従来の有機系塗料と同程度以下となります。

つまり、耐候性、施工性、経済性、環境性に非常に優れた材料といえます。

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橋の記事を中心に、公共事業の記事を書きます。読んでくださったかたに、お役立ていただける情報発信を心がけています。データサイエンスに関心があります。Master of Business Administration
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