(公社)土木学会(佐々木葉会長)は10月23日、都内の土木学会本部で「ESCON(エスコン)ビーム」の技術評価証授与式を開催した。認定対象は、超高強度合成繊維補強コンクリート(ESCON)と補強鉄筋を組み合わせた低桁高で軽量なRC桁で、桁高支間比1/20~1/25程度の桁橋への提供を目指し、開発した。
ESCON協会(宮原一郎会長)とエスイー(宮原一郎社長)が技術評価を依頼。土木学会技術推進機構「ESCONビーム」に関する技術評価委員会の二羽淳一郎委員長(東京工業大学名誉教授)は、「依頼項目に示されている材料特性や構造特性で実施された各試験結果が評価基準以上と確認。ESCONの使用により、桁断面を削減し、軽量化と低桁高でありつつも、耐久性に優れたRC梁を実現する」と高く評価、今後、「ESCONビーム」への発展とともに社会資本の整備や品質や安全性向上に対して期待する言葉を寄せた。
授与式には、エスイーESCON事業部の永野誠史設計・企画部長、野澤忠明技術開発部長、ESCON協会の松村英樹技術委員長が出席。土木学会の三輪準二専務理事は、授与式にあたり、「今回、ESCONビームに対して技術評価に授与することになった。技術評価を依頼された、ESCON協会とエスイーに対しては心からお喜び申し上げたい」と挨拶した。
土木学会の技術評価制度は、日本の土木工学で有数な学術経験者や実務経験者が評価にあたり、国内で既往の基準のない新たな分野・技術に関する技術資料(設計施工指針など)の監修を実施し、国内建設市場に加えて海外市場も視野に入れる技術が対象になる。技術評価制度では土木学会の技術推進機構が担当し、今回で29号目の認定技術となった。今回、授与式とともに「ESCONビーム」の内容について紹介する。
橋梁架け替え工事でニーズが増える低桁高橋
まず二羽委員長から「ESCONビーム」の解説があった。橋梁の架け替え事業では桁下制限で低桁高橋へのニーズが増加し、近年では生産性向上の観点から、低桁高・軽量な部材が求められている。
「ESCONビーム」は、150N/mm2の圧縮強度特性を持つESCONを使用することで、従来のRC桁と比較し、桁断面の削減や軽量化を実現する。超高強度鉄筋を使用した場合、曲げモーメント作用に対し、鉄筋に大きな引っ張り応力が発生。ESCONに配合した合成繊維の効果で、曲げひび割れ幅を耐久性上問題ない範囲に抑制可能だ。さらに、ESCONは各種劣化因子の侵入に対して、高い抵抗力を持つ材料のため、「ESCONビーム」は高い耐久性が期待できるとした。
エスイーESCON事業部の永野誠史設計・企画部長は、「ESCONは、国土、社会、そして世界まで革新する無限の可能性を秘めた第3世代のコンクリートとの位置づけで、二羽委員長からご紹介があったと通り高い強度を持ち、高耐久性を持った材料。現在の時節にあった材料ではないかと思う。関係者の方々にESCONビームを活用され、我々もインフラの高度化に貢献したい」と語った。
ESCONビームは桁としての実績はこれからだが、二次製品としてグラウンドアンカー受圧板、耐摩耗性部材、歩道用床版などでは多数実績を積み重ねている。「今回、より大きな構造物として二羽委員長をはじめとする委員会の方々に評価いただき、今回、授与をもとに桁への採用を広めていきたい。苦労した点では、繊維補強コンクリートでは配向性の問題もあり、施工手順に配慮しながら施工を進めていった点が苦労したところだ」(株式会社エスイーESCON事業部の野澤忠明技術開発部長)
桁の採用については、「手持ちの物件はないが、従来工法との比較を進め、たとえば凍害が起きやすい地域であればESCONの耐久性を活かし、リサイクルコストであれば経済性は優位に立つような資料の準備を進めているので、これから広めていきたい」(野澤氏)
エスイーのESCON事業部では、ESCONの開発・改良や「ESCONビーム」を用いた構造物や二次製品の開発を担う。ESCON協会は2024年9月現在で30社加盟しており、協会各社との共同研究も推進中だ。
年内にも数件の技術評価を実施予定
社会構造の変化に伴い、土木の現場に求められる技術のあり方も「標準化」から「多様化」へ変化。個々の品質を確保し、省資源・省エネルギー型の技術、コスト削減に貢献する技術、メンテナンスの容易さに配慮した技術の社会的ニーズが高まっている。社会基盤整備の公共調達システムも大きく変化し、入札・契約での透明性・競争性格の面からも技術が重視される時代だ。
社会経済のグローバル化が進展し、日本の土木技術の国際競争力強化や土木技術での国際貢献に対する要請も高まっており、社会ニーズに適合した技術を正当に評価し、技術開発の成果を普及させ、土木技術の発展に寄与することは土木学会の持つ重要な機能であるため、「技術評価制度」を創設し、第1号案件は2005年10月から開始。今回の案件も含めて29件目になる。
対象は、「材料・工法などの新技術」「コンピュータソフトウェア」「研究段階にある技術の実用可能性」「工事の計画・発注段階での提案技術」の4分野。「土木学会としては、土木技術をより広く開発支援することが重要であり、その支援の一環として技術評価制度を創設した。従来はこの授与式をもって役割を終えていたのだが、それをさらに授与された技術内容をプロモーションするため、技術評価制度の専門サイトをつくり、個別の案件ごとの実績や内容を提供できる状況になっており、制度の普及やプロモーションを進めている。評価の対象となっている案件は数件あり、年内にも授与式をいくつか開く予定だ」(柳川博之土木学会事務局次長兼技術推進機構技術推進課長)
ちなみに、ESCONによる製品群は多岐にわたる。高腐食環境下でも使用できる高耐久集水蓋「グレーチング」、グラウンドアンカー用コンクリート製反力体の「薄型・高耐久受圧板」、エスイー独自の岸壁・護岸耐震補強アンカー工法と併用可能な、切り欠き部蓋部材「カバープレート」、「耐摩耗・耐衝撃性保護パネル」、耐久性に優れた軽量・薄型のプレキャストRC床版「歩道床版」などがある。エスイーのリリースによれば、最近のESCONでは、国土交通省の和歌山河川国道事務所管内で実施された「国道24号橋梁補修工事 B地区 溝橋」でESCONによる現場打ちが初採用された。エスイーでは、同工事での導入では、「ESCONのプレキャスト製品のみならず、今後の現場打ちでの適用に向けて、重要な一歩になった」としている。
これから橋梁の新規工事は減少すると見込まれている一方、大更新工事時代を迎える中、低桁高で高耐久性のRC桁「ESCONビーム」は高いニーズがあり、今後の採用に期待しているところだ。同時に、ESCONにかかわる製品群も多岐にわたり、一部はNETIS(国土交通省新技術情報提供システム)に登録されている。従来のRCやPCを超えた圧倒的な強度と耐久性を備えた新素材として注目を集めているESCONの動向とともに期待したい。
この技術は具体的にどれぐらいの強度があって単価はどんな感じかを記事に書いてほしいw