大学に復学したけど、たぶん辞める

山口くんの原チャリ
――今は大学一本という感じですか?
山口くん 一応はそうです。順調にいけば、今年の秋に修了予定です。ただ、大学院を修了する必要があるのかという疑問がありまして、と言うか、辞めたいと思っていまして。大学院にお金をかけるより、一級建築士の資格取得にお金をかけるほうが、将来の役に立つんじゃないか、と言うか、資格取得にお金をかけたいと思っているんです。
西日本の建築物を見るため、原チャリで旅に出る

旅する山口くん(山口くん提供)
――今は旅をしているわけですが、その流れでなぜ、旅に出ようと思ったのですか?
山口くん ボクは大学3年生の時にアメリカに2週間滞在したり、ヨーロッパを1ヶ月ほど周遊したりしたことがあります。日本も東北など東日本各地に行きました。基本的には、いろいろな建築物を見て回るために旅をしてきました。ただ、西日本は、広島や直島以外は、全然見て回っていませんでした。西日本の建築物をもっと見てみたいというのが、今回の旅の目的です。
あとは、日本らしい建築を見たいというのがあります。現代建築は西洋の影響がスゴく入っていると思うんですが、日本らしい建築を自分の目で見て、体験し学びたいという気持ちですね。それが建築を学ぶことだと思っているので。
それから、ボクは自然が好きで、旅の道中で山登りやキャンプをしたいというのもあります。1週間ほど前、標高200mほどの低い山を登りました。
――いつ旅に出たのですか?
山口くん 2週間ほど前です。
――原チャリで移動するのは、建築物と山登り、キャンプをするためですか?
山口くん そうですね。電車とかだと、遠くてとても行けない建築物や山があるので、原チャリ移動にしたんです。キャンプ道具とか荷物も全部積めるし、一石二鳥だなと思いまして。
――今は、香川で期間限定バイトということでしたが、どういうアルバイトをしているのですか?
山口くん 香川にあるリゾートホテルでアルバイトをしています。なぜホテルかと言うと、設計する側として、ホテルマンや宿泊客のことを考える必要があるため、ホテルの仕事やオペレーションを体験してみたかったからです。そういう専門サイトみたいなのがあるので、そこで調べて応募しました。上限2万円ですが、神奈川から香川までの交通費も出るので、それで決めました(笑)。
今のアルバイトは1月末で終わるので、そのあとはまた別の場所でアルバイトを探して、最終的には「沖縄まで目指そうかな」と思っています。
沢田マンションは立地にもビックリ

山口くんがビックリした違法建築マンション「沢田マンション」(山口くん提供)
――旅に出てから、見て回った中で、印象に残っている建築物はありましたか?
山口くん まず、沢田マンションは、スゴく印象に残っていますね。建築基準法的にはアウトな建築物ですが(笑)。あとビックリしたのは、高知駅からバイクで20分ぐらいのまちなかにあることでした。ボクとしては、あんな大胆な違法建築物だから、てっきりとんでもない場所にあると思い込んでいたので、よくあんなまちなかに建てたなと思ってしまいました(笑)。
普通のマンションと違い、1戸1戸の素材が違ったり、廊下辺りにベランダがあったり、とてもカオスでした。屋上には、ニワトリ、ブタなどの動物がいました。クレーンもありました。テントを置いている住人もいたりして、とにかく賑やかな場所でした。

牧野富太郎記念館(山口くん提供)
あとは、牧野富太郎記念館です。エントランスの部分がとても気持ち良いなと思いました。中庭に竹林があって、それを囲むような建物なんですが、エントランスは、室内ではなく、屋根がかかっている外部のエントランス空間があるんです。
美術館と言うよりも、カフェに来た気分になりました。とても気持ち良くて、過ごしやすい場所でした。重量感ある鉄骨と木の力強さを感じました。

高知県梼原町の雲の上のギャラリー(山口くん提供)
それから、雲の上のギャラリーも良かったです。社寺建築で見られる日本建築の軒を支える斗栱(ときょう)をモチーフにして、木材を組んであるんですね。社寺建築ではスケールは小さい斗栱なのですが、この建物では、スケールが大きくなっていたため、迫力がありました。
また、まっすぐなギャラリー空間なんですが、途中からガラス張りになっていて、景色を活かした建物になっていますね。梼原というまちは、山が多くて自然がキレイなところなので、展望台のようなギャラリーになっていると感じました。
エレベーターを降りて、前を見ると、斗栱部分を真下から見れるシークエンスになっていたのが、スゴく印象に残っています。スゴく迫力のある建物でした。
あれ、まだ3つしか見れてないですね(笑)。
――単純に建築物まで遠いからでしょ(笑)。
山口くん そうですね(笑)。
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旅を終えたら、またa事務所で働く

スケボー店「たつみや文具店」のステッカーが貼られた山口くんのヘルメット
――四国を見て回ったら、次はどちらに?
山口くん まず岡山に入って、広島、岡山、鳥取、島根、山口といった感じで、中国地方を全部回ろうと思っていますが、雪の具合によって、回り方が変わるかもしれません。
――いつまで旅するつもりですか?
山口くん とくに決めていなくて、2025年9月までに終われば良いかなぐらいに考えています。
――今年9月になにかあるのですか?
山口くん a事務所に戻ります。a事務所は対外的には退職したカタチになっていますが、事務所内部では休職扱いになっています。事務所には大学院を辞める話をまだしていないので、戻れるかわかりませんが(笑)。
――建築の就職事情には疎いのですが、山口くんのように、大学を休学して就職して、退職してまた戻る、大学院は復学したけどたぶん辞めるので、旅に出るといったパターンは、珍しいのですか?
山口くん めちゃくちゃ珍しいと思いますね(笑)。普通は休学せずに卒業しますからね。
――a事務所も寛容と言うか、オープンな感じで、良いですね。
山口くん a事務所代表の谷口幸平さんにはとても感謝しています。
時代を横断するような建物をつくりたい
――a事務所でしばらく働いて、いずれは独立したい?
山口くん あと5年ぐらい働いて、代表の方の考え方などを吸収して、準備ができたら、独立したいなとは思っています。今はまだ夢のまた夢ですけどね(笑)。
――建築家になるという夢もあるんでしょう?
山口くん その夢もあります。
――どういう建築家になるというのはあるのですか?
山口くん まず長く残る建物をつくる建築家になるというのがあります。かつ、地域の人に愛される建物をつくりたいです。とにかく、時代を横断するような建物がつくりたいという思いがあります。と言っても、たんに自分の作品というわけじゃなくて、地域やまちづくりも考えながら、地域に寄与する建物をつくりたいということです。建物によって、地域やまちが活性化するということは、起こりうることだと思っているので。たとえば、梼原のまちは、実際に訪れてみて、そう感じましたし。
ボクはネコ好き

満濃池とネコ(山口くん提供)
――最後に読者にメッセージなどがあれば。
山口くん まだ20才代後半なので、コメントするのは難しいですが、ボクは、建築のほかに、スケボーや登山、キャンプ、自然巡り、そしてネコ巡りとかやっています。とくに若い人は、とにかくいろんなことを経験してください。
――コメント中を思いっきり遮りますが、ネコ巡りってなんですか?
山口くん 地域の野良ネコ、ネコちゃんを探すことです。
――なんか果てしない感じがしますが。
山口くん でも、けっこういるんですよ。昨日も会ったんです、ネコちゃんに。
ネコ関連の話で言えば、ある建築家が、ネコのいる場所は居心地の良い空間だと言っていましたが、ボクもそうだと思っています。ネコって、気持ちの良い空間を見つけるのが得意なんですよ。ネコを飼っていたときに、一緒に寝転がるのが好きでした。それもあって、ボクはネコが好きなんです。
――なるほどね。
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楽しそうで良いけどw
こんなこと出きる人は何人いるんでしょう?
きれいな一面だけを切り取っている記事じゃ?
若い人がこの記事だけ見て良いなと思うと問題が起きる気がしますw
これはこれでいいじゃんか。
本人がやろうと思えば誰だってできるよ。
とても素敵だしこの先苦労はあるだろうけどそんなん生きてりゃ普通にあるのよ。
こういう若者が増えていくと時代にあったいい環境になっていくと思うのですごく明るい記事でした。