どういう空間が魅力的なのか、しっかり実証を重ねていく

歩行者空間の体験イベント「GINZA SKY WALK 2024」開催時の様子(写真:東京高速道路提供)
――2023年、2024年にも実証実験的なイベントを実施したようですが、成果や反応などをどう評価していますか?
花木さん 2023年のイベントは東京都主催で、弊社は「協力」という立場でした。東京都さんには、KK線が道路から公共的空間に変わるということを、都民に広く認知してもらいたいというお考えがあり、KK線を通行止めにして、実際に歩いてもらって、こういう場所があるということをアピールするイベントを実施したということです。
2024年のイベントは、東京都と弊社の「共催」として1万5000人の参加者を募り、3日間実施しました。KK線を広く知ってもらうという目的はまったく同じです。
KK線には幅員が狭い場所と広い場所がありますが、道路の幅員が広い箇所については、歩行者の滞留空間として活用することを考えています。2024年のイベントでは、こういった箇所にいろいろなコンテンツ、プログラムを設定して、参加者に体験していただき、活用状況やニーズなどを検証しました。
沿線地域との連携というところは、まだ十分には実証できていませんが、KK線周辺のみなさまや参加者の方々からは、夢のあるプロジェクトだとか、高い場所から見渡すとふだんと違った景色を楽しめたとか、おおむね好評価をいただきました。
ただ、「道路を通行止めにして歩くイベント自体が珍しい」ということもあっての好評価です。これからは、どういう空間が魅力的なのかというところをしっかり実証を重ねていくフェーズに入っていくことになります。われわれとしては、引き続きみなさんのご意見を伺う機会も設けながら、進めていきたいと考えています。

歩行者空間の体験イベント「GINZA SKY WALK 2024」開催時の様子(写真:東京高速道路提供)
新しい公民連携のカタチへのチャレンジでもある
――どういう公共的空間をつくるかを決める主体は東京高速道路だけど、東京都もある程度意見を言うという感じですか?
花木さん 東京都さんは監督行政というだけでなく、土地所有者でもありますので、引き続き関わっていかれることになります。
これまでの民間の開発プロジェクトは、都市計画決定されると、その後は、行政の手を離れて、民間にお任せというカタチでしたが、今回のプロジェクトに関しては、都市計画決定後も、東京都さんが行政としてまちづくりに関わっていくという思いを持って取り組んでおられます。
そういう意味でも、新しい公民連携のカタチへのチャレンジになっていくと期待しているところです。
プロジェクトの中身については、検討の段階から専門家や地域の方々などにご参加いただいて、議論や意見交換しながら、検討していくことにしています。工事が始まったら、仮囲いがされて、完成するまで中身がわからないということではなく、プロセスからみなさんに関わっていただき、それを楽しんでいただきながら、つくっていきたいと思っています。
――プロセスを隠すのではなく、オープンにして、みんなでつくりあげるプロジェクトということですか?
花木さん そうですね。われわれだけでつくって、「はい、みなさんどうぞ」ではなくて、プロセスにおいても、みなさんになんらかのカタチで関わっていただけるプロジェクトを目指しています。
誰かに頼るのではなく、みんなで決める

共創プラットフォーム会合の様子(写真:東京高速道路提供)
――プロジェクトを進めるための体制づくりはどうなっていますか?
花木さん 社内的には、プロジェクト推進室を立ち上げ、ここが中心となって、東京都やコンサルタントなど関係者と連携しながら、進めていく体制になっています。現在、推進室専任のメンバーは5名で、土木や建築といった技術系のメンバーも含まれます。全社的なプロジェクトなので、必要に応じて、社内の他部署のメンバーも加わります。いずれプロジェクトが本格化すれば、専任社員はもっと増えると思いますが。
その上で、「共創プラットフォーム」を立ち上げています。共創プラットフォームでは、主にプロジェクトのコンセプトやデザインなどを検討します。たとえば、一人の専門家に頼って物事を決めるのではなくて、いろいろな分野の方に参加してもらって、いろいろな観点からアイデアを出し合い、意見交換しながら、物事を決めていくのがねらいです。
このプラットフォームですが、2024年5月に齋藤精一さんにコンダクターに就任していただきました。現在は、建築家、コピーライター、グラフィックデザイナー、プロダクトデザイナーの方々が中心となっていろいろ議論していただいています。また、2024年11月には、プラットフォームのメンバーの方々と地元の方々との意見交換も行いました。

共創プラットフォームでの議論の様子(中央に齋藤精一コンダクター、写真:東京高速道路提供)
新たなスキームを考えたい
――プロジェクトを円滑に進めていく上で、課題などがあれば、教えてください。
花木さん 半世紀以上経っている既存施設を有効活用するということがあります。取り組み自体は素晴らしいことですが、今の法規制などに合わせながら、どうやって保全し、リノベーションしていくかという技術的な難しさ、課題があります。今そのキビしさをヒシヒシと感じているところです。
KK線は、もともと河川だった場所に建設されているので、区境に位置しています。中央区、千代田区、港区の3区にまたがっているため、東京都をはじめ複数の関係行政機関との一つひとつの協議、調整などが必要になり、その分手間もかかります。
このプロジェクトは、あくまで弊社の事業ですので、事業費は弊社が負担することが基本です(一部、周辺まちづくりとの連携も可能)。プロジェクトを進めるにあたっては、経済的に安定した運営スキームをどうつくっていくかという課題があります。これもチャレンジととらえて、新しいスキームを考えていきたいと思っています。
ゴールと計画を立てながら、進んでいく

花木さんとプロジェクト推進室課長の石川弘行さん(右)
花木さん 地域の方々との関係づくりも大切です。われわれだけではなく、まち全体に良い効果が波及するよう、地域のみなさんと丁寧に、真摯に対話していく必要があると考えています。関係者の利害が常に一致するわけではないので、難しい面もあり、時間もかかると思いますが、ここは一つひとつ、実績を積み重ねながら、地道に取り組んでいきたいと思っています。
このプロジェクトは、ゴールに向けてあらかじめ計画を立てて進んでいくというものではなく、ゴールと計画を立てながら進んでいくようなところがあります。われわれとしても、前例のない取組みを模索しながら進めているというのが、正直なところです。
「100年に1度あるかないかの稀有なプロジェクト」
――プラットフォームのメンバーから察するに、全然当たり前じゃない、「ワオッ!」と思わずうなるような、インパクトのあるコンセプトが出てくると思われますが。
花木さん そうでしょうね。プラットフォームのメンバーの方々の中には、「100年に1度あるかないかの稀有なプロジェクト」という方もいらっしゃいます。確かに、都心の真ん中で、これだけの長く広いスペースをデザインし有効利用するという機会は、そうそうないと思います。
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不勉強で申し訳ないのですがw
公共交通の予算の割り当て等どういう感じで割り当てられているのか?
知っている方コメントお願いします!
地方(地元)の道路状態が酷いのですが都心の予算を回してくれたりしないんですかね?
地元は工業都市で交通の必要性が高いのですが道がボロボロなんです…。