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6億円の赤字からの復活劇。愛知から世界と戦うゼネコンへ

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長井 雄一朗
公開日:2025.06.03
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株式会社永賢組の永草孝憲社長

株式会社永賢組の永草孝憲社長

目次
  1. 経営コンサルが「このままでは倒産する」と断言
  2. 「オンライン現場監督」も構想
  3. エリア拡大は人材ありき
  4. 積極的にM&A。家事代行会社もグループ化
  5. 「一隅を照らす」存在でありたい

1955年、戦後の復興期に愛知県春日井市で創業された株式会社永賢組。当時、土木事業から始まり、地域のインフラ整備や復興事業に貢献してきた歴史がある。現在は、永草孝憲社長が陣頭指揮を執り、地域の困りごとを解決する”都市問題解決カンパニー”として歩み、積極的なM&Aや建設DXの活用により、グループの成長を目指している。

M&Aでは環境理化株式会社、株式会社山建重機を事業継承し、グループ化。今後とも、後継者のいない会社を引き継ぐM&Aを強化する方針だ。建設DXでは、日本マイクロソフト株式会社業務執行役員として、生産性や創造性の向上を行い、生成AIの利活用を支援するパートナー技術統括本部をリードしてきた伊藤信博氏を顧問として招へいした。

2025年度の売上目標は100億円だが、さらにその先の1,000億円を目指すと語る永草孝憲社長にM&Aや建設DXの戦略について話を聞いた。

経営コンサルが「このままでは倒産する」と断言

土木と建築双方を主軸に / 永賢組

土木と建築双方を主軸に / 永賢組

――永賢組(ながけんぐみ)の事業について教えてください。

永草孝憲社長 当社は70年間地元で根付いてきた老舗の地域ゼネコンで、NAGAKENグループ会社では、設計会社、家事代行、水質検査、土壌改良などを手掛け、各分野のスペシャリストが集まることで、多様なニーズに対応しています。この”スペシャリスト”は、ヘッドハンティングや事業承継型M&Aを通じて集められた優秀な人材たちです。

土木事業では公共工事を中心に手掛け、地域のインフラ整備に貢献しています。今はNAGAKENグループ企業の中でも株式会社山建重機が土木系で、永賢組の土木部門の売上を加えると約40億円となりました。建築事業では商業、医療、福祉施設から集合住宅まで幅広く対応していて、建築での売上は約50億円です。これは建築の方が1件あたりの物件の金額が大きいため、このような結果になっていますが、土木と建築部門はいずれも当社にとって主軸の事業です。

不動産事業では土地探しからリフォームなどのアフターフォローまで全ての工程を社内でサポートする体制を整えています。さらに、積極的な社内起業や事業承継型M&Aを通じてグループの成長を図り、先代の遺志を引き継ぎながら地元愛知県春日井市や地域への社会貢献活動にも力を入れており、社会貢献部という部署を構えています。一例では、社会貢献活動の一環として「100万人のクラシックライブ」(主催:一般財団法人100万人のクラシックライブ)を支援しています。このライブは、プロのクラシック演奏家と提携し、地域の皆様に「クラシック音楽」と「人と人をつなぐ場」を提供するもので、地域の方々が集い、交流を深める場ともなっています。売上1億円ごとに1公演を開催しており、当社グループの今期売上高は100億円目標のため、計100公演を予定しています。

定期的に行う「100万人のクラシックライブ」は地域からも人気だ

定期的に行う「100万人のクラシックライブ」は地域からも人気だ

――一時期、経営が大変だったとうかがっています。

永草社長 当社は1955年に私の祖父・永草賢治が創業し、2代目は父・松井利行が事業を継ぎ、経営を行っていました。祖父が亡くなった当時、私は世界を渡り歩きながら総合格闘技の修行をしていましたが、父から「会社の状態があまりよくない」という話を聞き、帰国して事業を継ぐことを決めました。25歳のときに入社したのですが、経営はすでに債務超過に陥っていて、その原因もすぐには分からない状況でした。

先代が経営していた時代は、建設業の氷河期時代。当社の仕事も赤字体質だったんです。ただ、これは当社に限った話ではなく、建設業界全体で工事量が冷え切っていました。ダンピングも横行し、大手ゼネコンも合併、吸収、淘汰を繰り返していましたが、地方建設会社もかなり経営は苦しくて、地方では事業を続けることが難しくなって、倒産や廃業の道を選択された同業他社も多かったですね。

当社も過去5年間の赤字が積み重なり、6億円という額になっていて、経営コンサルタントからは「このままでは倒産する」と断言されました。そこで覚悟を決めて、今までの財務体質に徹底的に向き合いました。父は月10万円、私は月5万円の給料にして、その金額は黒字化が見える3年目を迎えるまでの2年間続けました。社員も給料2割カット、ボーナスは寸志程度に減額しましたが、それを「みんなで何とかしよう」と受け入れてくれたのは、父の人望だったと思います。

父の死後の話ですが、私が営業した覚えがないところから、仕事の依頼の電話がかかってきたことがあったんです。不思議に思いましたが、よくよくうかがってみると、父が「永賢組をひとつよろしく頼むよ」と話していたそうなんです。父は、死の直前まで会社のことを考えていたんです。祖父、父の想いを忠実に受け継いでいこうと決意しましたね。

「オンライン現場監督」も構想

――その後、どのような手法で建て直したんですか?

永草社長 当時の私は、経営はもちろん、一般企業の勤務経験もなく、財務諸表の読み方も知らなかったので、経営塾に入り、マネジメントや経営戦略の立て方など、経営者として必要な知識とスキル、考え方を3年間で徹底的に学びました。

それから、「都市問題解決カンパニー」というビジョンを掲げ、「建設業は地域の未来と環境を作る仕事である」と社員に伝え続けています。これによって、仕事への誇りが大きくなり、活気を取り戻し、利益を確保できるような体制へと転換することができました。

また、先ほど”スペシャリスト”という言葉も出しましたが、社内にスタープレイヤーが多く在籍し、それぞれが組織全体の成果を確立し、継続的な努力を続ける「プロ野球」のような組織への転換も目指しました。スタープレイヤーを増やすため、私自身がヘッドハンティングを行って想いを伝え、地方の建設企業の領域を超えた年棒を提示し、3年間で社員数を2倍以上の50人に増やしました。

結果として、事業承継後、5年で売上が50億円を超え、その後も毎年4億~10億円ずつ売上を伸ばすことができ、2023年のグループ全体の売り上げは80億円、営業利益は5億円を超えるまで成長しました。2025年度にはいよいよ目指していた100億円という目標を掲げて達成を目指しています。今後、私が50歳となる8年後には500億円、そしてその次の10年間で1,000億円の売上規模にしてから次の世代に事業承継するという構想も抱いています。

現在は好調な決算が続く永賢組

現在は好調な決算が続く永賢組

――建設DXに大きく舵を切ったことも、売上や利益の創出につながったのでは。

永草社長 これから人口は間違いなく減少し、若い方の入職も難しくなっていく中で、重要な視点は生産性の向上です。そこで、日本マイクロソフト株式会社業務執行役員をつとめられていた伊藤信博氏を顧問として招きました。伊藤氏は、日本マイクロソフト時代に生成AIの利活用を支援していた経験もあるため、AIに関する勉強会を月に3~4回開催しています。

具体的な取組みとしては、当社で活躍している現場監督の動向をデータ化し、AIに学習させ、そこに現場監督の知見も採り入れ、無人で現場を回せる「オンライン現場監督」を進めています。現行法令ではできませんが、将来を見据えた上での取組みです。これからは一つの現場を一人の監督で管理することは難しくなります。時にはオンラインで若手の現場監督に指示を出し、最終的にはAIが原価管理、工程管理、現場監督に指示を出すまでに至れるような形を想定しています。

この「オンライン現場監督」の実現の足掛かりとして、技術者・技能者の顔認証をデータに紐づける「AIによる現場での顔認証」のシステム開発にも着手しました。当社のどこの現場に行っても技術者や技能者が一度登録すれば、書類を必要としない入退場の実現を目指しています。

社内でAIの勉強会

社内でAIの勉強会

また、社内で情報共有するために、「社内報アプリ」を導入したほか、全社では生成AIの「Microsoft Copilot(マイクロソフト コパイロット)」を活用しています。どこか営業先を見つけるにしても、Microsoft Copilotを使用すれば案を出してくれるので、業務の簡素化につとめています。このほか9月にはマイクロソフト本社にうかがい、自動運転を学ぶ試みも行う予定です。

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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