建設DXが切り拓く「障壁なき」ものづくりの未来
――2026年度以降の建設用3Dプリンタの普及はどのようなフェーズに突入するとお考えですか。
吉村氏 我々の挑戦は、2020年7月に実施した日本初の建設用3Dプリンタによる集水桝の導入から始まりました。2021年9月には法面工事における穴あきブロック工を完遂しました。さらに2022年7月には、国道24号の歩車道境界ブロック整備において国内初となる「現場直打ち(オンサイト・プリンティング)」を実施しています。これにより通行規制期間の大幅な短縮を実現し、社会インフラ整備における実効性を示すことができたと考えています。その後もさまざまな現場で実証や施工を重ねており、引き続き公共工事および自社私有地整備工事でも活用を計画しています。今回の中山石見線道路改築工事で実施したオンサイト・プリンティングの経験自体はこれまでも積み重ねてきましたが、これほど大規模な公共工事で擁壁部材を造形する取り組みは、当社にとっても極めて大きな挑戦でした。
当社は2020年からPolyuseさんと伴走しながら、建設用3Dプリンタを活用した施工DXを推進してきました。現在では当社にとどまらず、同じ志を持って3Dプリンタ活用に挑む地域ゼネコンが着実に増えています。今年から来年にかけては、業界全体が「試験導入」の段階から「実用化」へと大きく舵を切る、重要な転換点になると考えています。

2025年11月に開催した、「中山石見線道路改築工事」の現場見学会
大岡氏 吉村取締役がおっしゃるように、フェーズは確実に変わりつつあります。近年は建設コストの高騰や担い手不足を背景に、標準労務費や積算体系のあり方についても見直しの議論が進んでおり、従来の仕組みのままでは業界の持続性が揺らぎかねないという危機感が広がっています。こうした中、国土交通省の「i-Construction 2.0」でも、省人化と生産性向上の徹底が最優先課題として掲げられています。
当社はこうした大きな潮流に沿い、建設用3Dプリンタ「Polyuse One」の社会実装を進めています。すでに約30台が現場へ導入されており、今後1年ほどで約100台規模の全国稼働体制を構築する方針です。世界的に見ても同一国内でこれほどの規模で建設用3Dプリンタの実装と生産体制を同時に構築している例はほかになく、その取り組みには大きな意義があると考えています。
日本は公共事業を通しての業界課題解決に向け、建設用3Dプリンタの導入において世界をリードするスタートを切ったと実感しています。これまでは当社が主導して活用の土壌を耕してきましたが、これからは全国の地域ゼネコンやPC(プレキャスト)メーカーが、自社の事業スキームの中で「Polyuse One」を自律的に運用していくフェーズに入ります。そして、急速的に施工DXの成功事例が各地で蓄積・共有され、建設用3Dプリンタへの需要も着実に広がっていくと考えています。
――技術が標準化・実用化された先で、建設業界の「参入障壁」や「ものづくりのあり方」はどう変わっていくのでしょうか?
大岡氏 現在、建設用3Dプリンタの採用事例は加速度的に増加していますが、ルールなき普及は混乱を招きかねません。こうした状況を踏まえ、土木学会による指針が策定されました。ただし、この指針は一度の策定で完結するものではなく、技術の進展に合わせて動的にアップデートしていくことが重要です。
市場への参入プレイヤーが増えたことでコスト低減は着実に進み、実装への障壁はすでに大きく下がり始めています。次に求められるのは、建設業の従来型の経営スタイルのみに固執するだけでなく、ICT施工との高度な融合を実現する先駆者の存在です。重要なのは単なる設備導入ではなく、「変革を主導する人間」です。吉村取締役のような次世代のリーダーが経営の中枢に参画することで、意思決定の速度と精度は飛躍的に高まります。将来の建設業の絵姿を構想する際、新設・維持管理を問わず、現状に甘んじることなく建設用3Dプリンタの活用に可能性を感じている方々と手を取り合い、この技術を昇華させていきたいと考えています。
特筆すべきは、この技術が建設業の参入構造そのものを変えていく力を持っている点です。従来の建設業は、長年の経験や専門資格を前提とした産業でした。しかし建設用3Dプリンタは、その前提を大きく書き換えます。適切なトレーニングを受ければ誰もが高度なオペレーションに携わることができ、これまで建設業と縁のなかった人材にも新たな挑戦の機会を開きます。 将来は、業界未経験の人材が建設用3Dプリンタを活用した製造・運用ビジネスを立ち上げ、地域のインフラ整備に参画する。そんな新しいプレイヤーが次々と生まれ、建設業界に新しい風を吹き込んでいく。私はその未来を本気で見据えています。
吉村氏 行政側も「土木の自動化」に対して極めて前向きな姿勢を示しており、就労環境の改善を含め、時代の流れは確実に良い方向へ進んでいます。一方で建築分野に目を向けると、公共・民間の制度や運用の違い、さらには工期の逼迫といった事情もあり、BIMの浸透についてはまだ道半ばだと感じる場面も少なくありません。
現在、建設用3Dプリンタはその希少性ゆえに単体の技術として注目されがちですが、本来の価値はDXという大きな文脈の中でこそ発揮されます。建設用3Dプリンタは単なる設備ではなく、デジタルとリアルをつなぐ新しい施工基盤の一部なのです。例えば今回の工事のように、CIMの実装プロセスと建設用3Dプリンタを融合させていくことで、設計・施工・管理がシームレスにつながる次世代のものづくりが実現します。私は、こうした統合的なデジタル施工こそが、これからの建設業が進むべき「正道」になると考えています。
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