現場のエコシステム構築から「顧客体験」のアップデートへ
登壇した田中次長は、金融系SIerで銀行システム基盤やモバイルアプリのアジャイル開発を経験後、2020年に同社へ入社。木造事業部のシステムを中心に開発責任者を務め、「現場の今を届けるエコシステムをいかに構築するか」に注力してきた。
「TATETA」の開発背景には、田中次長自身の実体験に基づく「顧客体験(CX)」への着目がある。問い合わせから契約、仕様決めまでは営業スタッフとの打ち合わせがあるものの、いざ施工が始まると途端に連絡が少なくなり、現場の状況が分からないことが施主の不安を増幅させていた。
「ちゃんと施工されているのか不安に思い、自ら現場に足を運んで確認するお客様も少なくない。契約後のサービスでも満足してほしいと願う中で、住宅工事の進捗をアニメーションで確認できるソリューションには確かな手応えを感じていた」(田中次長)。アニメーションを採用した理由についても、「なじみやすさと、どんな環境でも見られるため」と語る。リリース時は、年間約300棟の注文住宅施主への提供を予定している。
木造×ゼネコンの「二刀流」と、「建築に、革新を。」のミッション
同社の成長を支える根底には、「建築に、革新を。」というミッションがある。1991年に「株式会社アサカワホーム」として創業し、2015年にオープンハウスにグループ入り(翌年現社名へ変更)。従業員数は当時の約300名から1,064名(2026年4月時点)へと拡大し、売上高は1,065億円(2025年10月期実績)を誇る総合建築企業として全国規模で事業を展開している。
その強みは、個人向け注文住宅から法人向け木造建築、さらにはRC造マンションなどの総合建築まで、あらゆる建築ニーズに対応できる幅広い請負体制にある。高度な専門技術と強固な管理体制を備え、建設会社としては珍しい「木造」と「ゼネコン(RC造マンションなど)」の二刀流で多くの顧客の要望に応えているのだ。木造事業の累計完工棟数は約5万6,000棟に達し、ゼネコン事業の成長率は直近4年間で694%を記録。今後はゼネコン事業単体で年間70現場以上のRC造施工案件(10億〜20億円規模のハイグレードマンション施工など)を手掛けるなど大幅に強化していく方針だ。
そして、この成長を支える6つの強み(①品質管理の徹底による「高品質の追求」、②厳格なコスト管理による「好価格の実現」、③各事業プロセスでの「スピードの追求」、④様々な要望に対応する「設計・デザインの追求」、⑤提案からアフターサービスまでの「顧客満足度の追求」、⑥属人的な管理を逸脱する「生産性の追求」)を実現する源泉の一つに、徹底したDX戦略がある。
木造住宅分野での技能者の高齢化や人手不足に対し、2021年から自社開発の施工管理アプリ「Architect Jump」を導入。工期13%削減、出戻りコスト80%削減といった生産性向上を実現した。「現場の技能者や監督の視点を重視し、全年代が使いやすく、わかりやすい操作性を追求した結果、社内のリアルタイム更新率は99%、社外の技能者の利用率は80%という高い浸透率を達成している。高齢の大工さんからも『他のアプリは理解できないが、Architect Jumpは操作しやすい』と好評だ」と田中次長。
この「Architect Jump」シリーズを通して培った現場管理にかかわるリアルタイムなデータ連携技術の確実な基盤があったからこそ、「TATETA」という施主向けのコミュニケーションツールへと昇華させることができたのである。
注文住宅から建売へ、広がる「家づくりの透明化」
今後は、オープンハウス・アーキテクトへ建築請負をする不動産事業者へ向けて、「建売物件」の進捗状況についても同様に「TATETA」の展開を予定しており、事業者のみならずエンドユーザーへも建築過程の透明性を高める方針だ。
また、基盤となる「Architect Jump」においても、アプリでの入退場管理機能を開発。現場の負担軽減と入退場記録のデータ化を実現し、滞在作業員の可視化や、将来的には熱中症などの自動注意喚起機能も実装予定だという。
現場の鼓動をアニメーションで可視化し、施主の不安を「ワクワク」へと昇華させる「TATETA」。自社開発アプリで培った鉄壁の技術を顧客体験へ転換し、透明性の高い家づくりを具現化した。デジタルな進捗管理と現場監督の温かな「手紙」が交差するとき、住まい手と造り手の絆はより深化していくだろう。

