大東建託株式会社(東京都・港区、竹内啓社長)は、5月1日から「大東建託50周年記念商品」として、賃貸住宅ブランド「DK SELECTブランド」から新たに「VISION MyTAG(ビジョンマイタグ)」の販売を開始している。
これは、大東建託が創業50周年を迎えるにあたり、多摩美術大学(東京都世田谷区)との産学共同研究により開発した次世代賃貸住宅のプロトタイプ商品を通じて、「賃貸住宅の常識を変える」ことを目指したもので、賃貸住宅を介したコミュニティの創出で地域社会の活性化に貢献していく考えだ。

「VISION MyTAG(ビジョンマイタグ)」の完成予想図(9戸プラン)
産学共同プロジェクトの狙いは「次世代の価値観の先取り」
大東建託と多摩美術大学の産学同開発プロジェクトには、環境デザイン、プロダクトデザイン、グラフィックデザイン、芸術学の学生35名が参加し、2022年6月から活動がスタート。大学の所属学科の枠を超えた4チームを編成し、大東建託 商品開発部の社員もそれぞれのチームを担当。週1回の活動を通し、学生とともに商品開発活動を行った。
プレス向けの説明会では、大東建託 商品開発部長の峠坂滋彦氏が、共同研究を行うに至った経緯を次のように解説する。「創業50年を前に、今後、賃貸住宅入居者層のボリュームゾーンとなる学生でもあり、人の内面を感じ取る力や視覚的なコミュニケーション能力を備える美大生の視点を通して、次世代の価値観の先取りを目指し、大東建託から多摩美術大学にお声がけした経緯があります。賃貸住宅で固定観念にとらわれない商品を開発し、賃貸住宅の価値を高める新たなチャレンジの一歩としたい。そんな思いから本産学共同研究はスタートしました」
今回の共同研究の背景には、近年のコロナ禍により、働き方や暮らし方などライフスタイルが多様化する中、住宅の仕様や機能にも変化が求められる時代ニーズがある。次世代賃貸住宅では、これらのニーズを捉え、これからの時代に暮らす生活者に寄り添い、より快適な住環境の実現を目指していく。
今回、各チームに共通していた視点は「つながる」という点にある。この「つながる」ことにより生まれる「地域コミュニティ」は、災害時の地域防災として極めて重要な視点といえる。大東建託は2023年3月に、事業継続と地域内の共助の関係構築を支援する防災活動の指針「大東建託グループ防災ビジョン2030」を策定、「地域の”もしも”に寄り添う」の理念のもと、地域防災を平時と有事の両輪で支援し、グループ全体で災害時の地域の早期復興に寄与していくことを目指す。今回の商品は同防災ビジョンにも通じる商品となっているという。

商品化された、チーム「my tag(マイタグ)」のプレゼンテーションのもよう
得られた最大の成果は「情熱」
「今回の産学共同研究で得られた一番の成果は情熱。どの商品を開発するにしても働く社員がどのようなモチベーションで進めるかでまったく成果は異なります。実は今回のプロジェクトの期間は、本来であればもう半年は必要。それをやりきったことは学生の情熱が高かったことに尽きる。その熱に触れた私たちのチームメンバーも感化され、仕事に対する向き合い方もいい方向に大きく変わりました」(峠坂部長)
共同研究では、次世代の賃貸住宅ユーザーとなる学生の視点や価値観で、50周年を迎える大東建託のこれまでの賃貸住宅の概念やニーズに対する認識をアップデートする点にある。プロトタイプ開発を通じて、次世代賃貸住宅商品のリリースにつなげていく。
2022年11月には35名の学生が4つの研究チームに分かれ、次世代の価値観やサステナブルな視点でさまざまな提案を発表、同月に選考通過チームが決定した。発表では、住環境としての機能に加え、「住」を起点とした新たな社会との繋がり方、現代のデジタル社会を捉えた提案など、これからの社会を担う若い世代の価値観や視点で考えられたアイデアを盛り込んだ提案が集まり、人と人とのコミュニケーションの在り方や意義について、認識をより深める機会となった。
外との視覚的なつながりを作る「my spot」を設けた住宅を開発
選考の結果、4チームの提案のうち、「見せてつながる住まい」をコンセプトとしたチーム「my tag(マイタグ)」を記念商品として採用。各住戸の一部に外との視覚的なつながりを作る「my spot」を設け、見せてつながる賃貸住宅「VISION MyTAG」の商品開発に至った。
SNS的価値観を反映させて地域・入居者同士のリアルなコミュニケーションの醸成を図る学生のアイデアをもとに、大東建託のブラッシュアップを経て商品化し、当面9棟の販売を予定する。

「VISION MyTAG」の1/2スケールのプロトタイプは現在、大東建託ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場で展示中
成果発表展で展示された「VISION MyTAG」の1/2スケールのプロトタイプは、5月から東京・江東区にある同社ROOFLAG(ルーフラッグ)賃貸住宅未来展示場で引き続き展示している。
同商品では、それぞれ異なる役割を担う「マイスポット」「ハロースポット」「リンクスポット」という3つのスポットを設ける。建物の中央部分には、上部吹き抜けの共用庭「ハロースポット」を配置。それを取り囲むように、各住戸の玄関「マイスポット」を配置しているがこれは全住戸の1階にあり、大型のガラス窓を採用した見せる玄関となっている。また、中庭の「ハロースポット」からは、各住戸の「マイスポット」が見渡せる。また、エントランス部分には地域住民も集まるようなオープン空間「リンクスポット」を設ける。
各住戸は、長屋形式とメソッド形式を組み合わせ、すべて異なる間取りであり、2人でも使用可能なワークスペースは全住戸に設置、一部住戸にはルーフテラスを設置するなど、多様なニーズに対応可能なプラン。また、国産材の活用やZEH仕様とすることで、環境配慮型の賃貸住宅となっている。