BIM設計-製造-施工支援プラットフォーム「BuildApp(ビルドアップ)」で建設DXに取り組む野原グループ株式会社(東京都新宿区)のリノベーションカンパニーは、医療法人社団新虎の門会酒々井虎の門クリニック(千葉県印旛郡酒々井町)を発注者とする「健診棟増築工事」で、株式会社古谷野工務店(東京都板橋区)、一般社団法人日本CFS建築協会(東京都豊島区)とともに、「モジュール建築」の一つである「CFS建築」を採用した。これにより建設現場の省人化・省施工が進み、在来工法と比べ約2か月の工期短縮を実現する見込みで、廃材やCO2排出の削減など環境配慮も同時に実現した。
野原グループは「建設DXで、社会を変えていく」という新方針のもと、デジタル技術や先進建築手法を取り入れ、建設DX推進事業「BuildApp」に注力しているが、リノベーションカンパニーではBuildAppによる維持管理のプロセス変革に挑戦している。これまでオフィス、メディカルクリニックやマンションと様々な用途の総合リノベーションを行い、多数の実績とノウハウに加え、3Dツールによるプラン提案してきたが、今回の現場での導入を皮切りに、今後も革新的な技術と関係者の協力のもと、医療従事者・地域住民・医療施設の利用者にとって利点のある医療環境を実現するため、建設DXで医療建設プロセスのアップデートを目指していく。
今回の工事では、CFS建築という新たな工法やデジタル技術で人手不足を補い工期短縮に成功したが、このポイントはどこにあったのか。野原グループ BuildApp事業統括本部 リノベーションカンパニー リノベーション部部長の熊澤智信氏に話を聞いた。
病院建築で工期短縮と省人化に手ごたえ

野原グループBuildApp事業統括本部リノベーションカンパニーリノベーション部部長の熊澤智信氏
――まず“CFS建築”について教えてください。
熊澤智信氏(以下、熊澤部長) CFS(Cold-Formed Steelの略)といわれる板厚約0.8~6.0mmの冷間成形薄板形鋼を構造部材として使用する新しい建築工法で、モジュール建築の一つです。工期と品質の両立を実現しやすい先進建築手法で、建設現場の省人化・省施工が進み、環境配慮も同時に実現することができます。
また、工事現場での造作が限りなく少ないため、作業員による仕上がりのバラツキがなくなり、壁内結露を原因とする木材の腐朽やカビの発生とこれによる室内環境の汚染の心配が少ない効果もあります。
――海外で進むモジュール建築の手法とCFS建築はどのように違うのでしょうか。
熊澤部長 海外のモジュール建築では「なるべく大きく造り、多く運ぶ」という形式が採用されています。建築の工業化という観点では、工場の段階で大きく造ったほうが望ましいかたちではあるのですが、日本は海外と比べて道が狭いなどの弊害があります。
そこで今回は、CFS建築を採用し、壁のブロックを運び吊りあげて組立てています。最初のプロジェクトの構想では部屋単位でブロックを形成することも考えていましたが、制約があったため変えました。

CFS建築の建て方現場 / (一社)日本CFS建築協会
――今回、CFS工法を導入された背景は。
熊澤部長 施主様は早期の竣工を望んでいました。オープン予定は2024年のゴールデンウイーク期間なのですが、在来工法ではとても間に合わない想定でした。また。大きな視点でも、建設産業の就業者数の激減や人材の高齢化、建設の2024年問題があり、建設の品質と生産性の両立に向けた建設産業の生産性向上とサプライチェーンの変革が急務です。とくに医療施設は医療提供の場として地域の健康を支える拠点として重要であり、新設・改修・建替えのどの段階においても質とスピードが求められます。
現在、在来工法とCFS建築の比較をして効果を検証していますが、間違いなく工期短縮と省力化に効果を発揮しています。工期はまだ明らかにできませんが、かなりの手ごたえを得ており、作業員の省力化の効果も効果を見込んでいます。今回は当社にとって初のCFS建築でしたが、工事に参加された方々とともに今後さらにブラッシュアップする考えです。
――日本CFS建築協会とのかかわりはどこで生まれたのでしょうか。
熊澤部長 旧・野原ホールディングス株式会社の傘下には、日本CFS建築協会の会員ビルダーに対して戸建住宅用の壁・天井パネルの資材を工場等に供給している野原住環境株式会社(現 野原グループ株式会社 住環境カンパニー)が存在しており、当時から同協会に加盟していました。