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【大和ハウス工業】グループ13社の総合力を結集し、2030年代”ストック再生事業1兆円”へ

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長井 雄一朗
公開日:2026.02.25
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自社ビルの移転跡地を購入後、マルチテナント型オフィスビルにバリューアップ

自社ビルの移転跡地を購入後、マルチテナント型オフィスビルにバリューアップ

目次
  1. 「建て替え」から「ストック活用」への転換点
  2. グループ13社の総合力を結集した「リブネス事業」
  3. 築古不動産のポテンシャルを最大化
  4. 優良ストック住宅推進協議会の「スムストック」にも注目

大和ハウス工業株式会社はこのほど、同社が注力するストック事業(リブネス)に関する業界動向勉強会を開催した。第1部では、本社経営戦略本部リブネス事業統括部常務理事・リブネス事業統括部長の井上富重氏が登壇。建設業界を取り巻く市場動向や社会課題に加え、同社が新たな国内事業の成長ドライバーとして強化を進めるハウジング領域の「Livness(リブネス)」、およびビジネス領域の「BIZ Livness(ビズ・リブネス)」をテーマとして取り上げた。井上氏は、全国の住宅市場の動向をはじめ、グループ全体で推進している既存住宅の売買仲介や買取・販売、リノベーション事業などの進捗状況を解説。さらに工場や物流施設、商業施設、ビルといった企業不動産を再活用するストック事業の全体像について説明し、「リブネス事業」の現状と今後の展望を語った。

第2部では、ビズ・リブネスの具体的事例として、築24年の2001年1月新築オフィス(神奈川県川崎市)を購入後にバリューアップ工事を施し、複数テナントが入居可能な「レンタルオフィス・ラボ」として再生した施設の見学会が開催された。本稿では、大和ハウス工業が展開するこのリブネス事業の全容についてレポートする。

●登壇者プロフィール
本社経営戦略本部リブネス事業統括部常務理事・リブネス事業統括部長の井上富重氏は、1983年に大和ハウス工業に入社。奈良支店に配属され、23年間の勤務のうち9年間は建築営業所長を務めた。その後、京都支店を経て奈良支店長に就任。2023年に東京本社建築事業本部 常務理事 建築事業統括部長を経て、2025年より現職に就任。

「建て替え」から「ストック活用」への転換点

勉強会は、建設市場動向の解説から始まった。株式会社野村総合研究所が発表した「2040年の住宅市場と課題」によれば、新設住宅着工戸数は2030年度に80万戸、2040年度には61万戸へと減少が予測されている。その一方で、リフォーム市場は今後も緩やかな成長を続け、2040年には9.2兆円規模に達する見込みだ。また、空き家問題については、2024年4月公表時点で空き家率は13.8%だったが、2043年には25.3%まで上昇すると予測されている。

原材料費の高騰、エネルギーコストの上昇、人手不足の要因で建築費の上昇は依然続く

原材料費の高騰、エネルギーコストの上昇、人手不足の要因で建築費の上昇は依然続く

昨今の原材料費高騰やエネルギーコストの上昇、建設業界における深刻な人手不足などを背景に、建築費は上昇の一途をたどっている。国土交通省の「建設工事費デフレーター」によると、直近の2024年時点では2015年と比較して3割近くもの上昇が見られる。また、総務省統計局「労働力調査」によれば、全産業で見れば就業者数は上昇傾向にあるものの、建設業に限っては直近5年間で約23万人も減少している。この要因としては、就業者の高齢化や若年層の建設業離れに加え、建設需要の高まりに伴う現場負担の増加などが挙げられる。

こうした背景の中、大和ハウス工業のストック事業ブランド「Livness(リブネス)」は2018年に誕生した。井上氏は、同社の芳井敬一会長が「既存建物をもう一度活躍させるためによみがえらせる事業は、建築屋として一番楽しい仕事だ」と語ったエピソードを紹介。リブネスは、顧客満足と社会貢献を第一主義とし、一人ひとりの顧客が抱える「お困りごと」の解決を通じて社会貢献へとつなげることを社会意義としている。

「Livness」は、Livness(リブネス)=「live」(「住む」)+「endless」(グループシンボル「エンドレスハート」)で、お客さまの住まいを未来まで繋げていく想いを込めている。一人ひとりの暮らしと向き合い、既存住宅を通して未来を提案し、住まいの可能性を広げていく事業である。

グループ13社の総合力を結集した「リブネス事業」

リブネス事業の合言葉は、「既存建物をもう一度活躍させるためによみがえらせる事業」だ。 大和ハウス工業本体の「住宅事業部」「集合住宅事業部」「マンション事業部」と連携し、グループ企業である大和ハウスリアルエステート、大和ハウスリフォーム、大和ハウス賃貸リフォーム、大和ハウスウッドリフォーム、大和ライフネクスト、大和リビング、デザインアークの7社が結集。それぞれの得意分野を活かして「リブネスブランド」を掲げ、全国主要都市を中心に住宅ストック事業を拡大強化している。良質な既存住宅の流通活性化を目指し、多様化する顧客ニーズに対応する構えだ。

兵庫県での買取再販事例では、大和ハウスグループの技術を掛け合わせた「ZEHレベルの断熱性能」と「デザイン提案」を実施した。性能面ではフルリノベーションによって高い断熱性を実現。デザイン面では「nook home~7つの提案」をコンセプトに、居心地の良い空間を創出した。具体的には、①空間の広がり、②魅せる収納、③可変的な間取り提案、④タイムパフォーマンス、⑤ペニンシュラ型オープンキッチン、⑥オープンエクステリア、⑦2024年トレンドのコーディネート、という7つの提案を盛り込み、1996年3月新築、買取時は築28年の物件を現代的な住宅へと再生させた事例が示された。

「たとえば40坪の敷地で、土地代4,000万円の場所に新築住宅を建築する場合、外構費用まで含めると建物全体で4,500万円かかり、合計で8,500万円が必要となるケースもある。対して住宅のリノベーションであれば、新築の半値程度のイメージ、すなわち約2000万円で新築同等の断熱性能とデザインを提案できる。『高嶺の花』と言われるエリアであっても安価に住宅を提供できるため、空き家再生にも一役買えるのではないか」(井上氏)

グループ会社との総合力を活かし、事業を伸ばす

グループ会社との総合力を活かし、事業を伸ばす

また、リブネス事業では、2024年5月から事業・商業施設を対象としたブランド「BIZ Livness(ビズ・リブネス)」を立ち上げた。ビズ・リブネスの導入により、これまで事業施設や商業施設事業で蓄積してきたノウハウ、全国の営業拠点網、グループネットワークを最大限に活用。自社施工物件に限らず、他社施工物件を含む既存施設の買取再販やリノベーション、テナント企業の誘致などを、より積極的に展開していく方針だ。

さらに、テナント企業のニーズに合わせたバリューアップ工事を行うなど、収益物件としての資産価値を向上させることで、不動産投資家のニーズにも応えていく。ビズ・リブネスは、大和ハウス工業の「流通店舗事業部」「建築事業部」「環境エネルギー事業部」に加え、グループ企業の大和ハウスリアルティマネジメント、大和ハウスプロパティマネジメント、フジタ、フジタビルメンテナンス、ロイヤルホームセンターの総合力を結集して取り組む事業となる。

リブネス事業全体の売上高推移を見ると、2019年度は2311億円だったが、2024年度には4055億円へと大きく伸長した。2025年度は4500億円を計画しており、2026年度の目標は約5000億円へと上方修正されている。さらに長期的には、2030年代に売上高1兆円を目指して加速していく構えだ。 質疑応答において井上氏は、「先行してリブネス事業を、後発でビズ・リブネス事業を開始した。売上高1兆円台に到達する際の構成比は、リブネスが4割、ビズ・リブネスが6割を想定している。件数ベースではハウジング系も伸びるが、金額規模としてはビジネス領域がより大きく伸長するためだ」と回答した。なお、事業全体での売上構成比率は、リフォーム64%、買取販売32%、仲介3%、賃料1%となっているが、井上氏は「今後は買取販売の比率が高くなるだろう」との見通しを示した。

リプネス事業は2030年代には1兆円規模にベクトルを強化

リプネス事業は2030年代には1兆円規模にベクトルを強化

築古不動産のポテンシャルを最大化

商業店舗・倉庫のストック市場に目を向けると、国土交通省「法人土地・建物基本調査」によれば、築年1981年~2005年の店舗は9万4,860棟、倉庫は7万7,130棟存在する。また、一般財団法人日本不動産研究所のデータによると、1982年以降の賃貸オフィスビルストック数は1万5,445棟に上る。 これらに加え、大和ハウス工業が手掛けた流通店舗が約4万8,700件、物流施設351棟、医療介護施設約1万800施設が存在しており、同社ではこれらの施設群を今後顕在化していく潜在マーケットとして捉えている。

ビズ・リブネスの具体的な事例として、第2部の見学会で公開された、川崎市川崎区(川崎塚越)にあるオフィスを「レンタルオフィス・ラボ」へと再生した施設が紹介された。当該物件は2001年1月に新築され、築24年を経過している。敷地面積3,718.73㎡、延床面積5,290.64㎡、S造3階建ての構造だ。大和ハウス工業が2025年3月に物件を購入し、改修工事は2025年10月20日に竣工、同年12月にテナント工事を着工する予定となっている。最終的には2025年12月の売却を予定しているという。

また、別の事例として、東京都台東区東上野の事務所ビルをアパートメントホテルへコンバージョン(用途変更)した案件も紹介された。 建物概要は敷地面積132.89m2、延床面積790.97㎡、RC造10階建て。スケルトン状態のテナントビルに対し、大和ハウス工業がホテルオペレーターをリーシングし、事務所仕様からホテルへと用途変更を行ったものである。施工はデザインアークが一括して担当し、2025年11月に竣工した。このほか、他社施工のホームセンターを複合商業施設として再生した事例なども紹介され、井上氏は「新築を建築するには予算的に厳しいケースでも、ビズ・リブネスならば最適解が出せるというお客様の認知度も高まってきている」と手応えを語った。

優良ストック住宅推進協議会の「スムストック」にも注目

一方で、大和ハウス工業は業界全体の取組みとして、一般社団法人優良ストック住宅推進協議会が運営する「スムストック」にも注力している。これは既存住宅の流通・評価に特化した仕組みであり、参加企業は大和ハウス工業、積水ハウス、住友林業、積水化学工業、旭化成ホームズ、ミサワホーム、三井ホーム、パナソニック ホームズ、トヨタホーム、ヤマダホームズのハウスメーカー10社だ。

大和ハウス工業の芳井会長は2025年8月、同協議会の会長に就任している。その際、芳井会長は「スムストックとは、我々ハウスメーカーが魂を込めて作った家や、お客様が大切に育んできた家の価値を正当に評価し、次につないでいく最も重要な仕事だ」と、会長就任にあたっての抱負を述べている。

スムストックは、売却側と購入側の双方にメリットをもたらすという。売主に対しては適正な査定を、買主には安全・安心な建物を提示できる点が強みだ。ここで大きな役割を果たすのが「スムストック住宅販売士」の存在である。彼らはスムストックの優良な既存住宅を専門に扱う資格者であり、不動産のプロであると同時に建物のプロとして、様々な試験や研修をクリアした人材だ。適正な査定においては、独自の「スムストック査定方式」を採用。一般的な既存住宅の査定とは異なり、建物価格と土地価格を分けて表示することで、建物自体の価値が適正かどうかを判断しやすくしている。

一方、買主に対しては、スムストックの3つの原則として、①住宅メンテナンス履歴の保有、②50年以上の長期メンテナンスプログラム、③新耐震基準レベルの耐震性の保持、を提示することで、既存住宅を新たな選択肢として提案している。ちなみに2024年の大和ハウス工業におけるスムストックの実績は259件で、業界3位であった。

「大和ハウス工業は、不動産仲介を行う大和ハウスリアルエステート、および大和ハウスリフォームとともに三社一体となって、スムストック関連の販売を強化していきたい。情報の多角化・一元化を図り、お客様に安心いただける価値ある査定を行う。もし空き家であれば当社が買い取り、再利用し蘇らせて販売する。また、近年は築浅の物件も市場に出ているため、リフォームをご希望であれば大和ハウスリフォームへとつないでいきたい」(井上氏)

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この記事を書いた人

長井 雄一朗
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建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
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