建設キャリアアップシステムとは、作業員の処遇改善に寄与する切り札として、来年8月からの運用予定とされている業界共通制度のことで、すでに国が主導的にシステム開発に着手しているとされる。活用の仕方としては、技能者ごとにカードを発行することで、データ登録(本人確認・社会保険・資格等) ならびに、現場ごとの就業履歴(就労時間管理・技能研修等)を蓄積したカードを通じて建設キャリアアップシステムで一括管理されていくものであり、ひいては元請け企業や専門工事業者が建設キャリアアップシステムを活用することで、技能者のキャリアアップに応じた処遇改善に繋げる狙いが期待されている。尚、建設キャリアアップシステムの構想は10年以上前から検討されていたとされるが、地方ゼネコンを中心に優秀な技能者の引き抜きへの警戒感は依然として強いものとされ、民間サービスとの競合も考慮する場合、建設キャリアアップシステム自体、どこまで本格普及するかは未知数とされている。他方、元請け企業にすれば、優秀な技能者を高単価で採用した場合、労働需給の緩和に応じて低単価の技能者に切り替える懸念が否めないため、(処遇改善には)単純に比例しないと言う指摘もある。ちなみに、建設キャリアアップシステムのモデルとされる英国式では、技能レベルでカードに色分け・細分化がなされ、かつ、建設会社や発注者もカードを保有しない技能者の現場入場を認めないなどの徹底振りで知られているが、建設キャリアアップシステムにおいても(システムの)運用に関する環境整備が更に求められるものとされる。最後に建設許可業者数が増加し、1社あたりの建設就業者数が減少した現在に至るまで、工事の受注状況に応じて協力業者や低単価の技能者を外部調達することで定着してきた(建設業に根深い)重層構造こそが(技能者の処遇改善に繋がらない)主な原因とされており、建設キャリアアップシステムの導入によって処遇改善の他、施工品質に直結する作業員の育成・確保を下請け業者に任せ・切り分けることなく、技能者を適正に一から育成する技能訓練にも貢献できるものとして期待されている。