建築現場で「植民地」という歴史を考えさせられる
海外での建築施工の現場で、言葉と同様に大切なのは、その国の歴史です。東南アジアのほとんどの国は、戦争と植民地の経験があり、アフリカの国々は独立後50~60年しか経っていないところがほとんどです
そして、ありがたいことに、どの国も親日派で、なかには驚くほど日本人と感性が似通ってる国もあります。日本の企業が現地に進出し発展できたのも、その事実を抜きにしては語れないと思います。
しかし、日本とは違った歴史的背景に驚かされることも少なくありません。
私には、建築現場で働く中で、その国の「植民地」という暗い歴史について、深く考えさせられたことがありました。
工事現場では、日本人が現地の方々にあれこれと指示を出すのですが、 明らかに「それは無理だろう」と思えるような事でも、ほとんどの作業員が2つ返事で「YES!」と答える現場がありました。
そこで私は「無理なら無理で、ちゃんと自分の考えを言った方がいい!」と忠告しました。すると、そのとき彼等の一人が、こう小声で言ったのです。
「植民地時代にNOと言ったら、すぐに殺されたから・・・」
無論、年齢的にも彼自身の体験ではなく、そんな話を聞いていただけだしょう。が、思いもよらぬ衝撃的な返事に、私は何も言えませんでした。
目を離したら消える工事道具
海外の建築現場では、工具に関しても苦労します。
ハッキリ言って現地には工具は何もないと思ってたほうがいいでしょう。現場で用意されるモノも、せいぜい日本の一般家庭にあるような大工道具です。
しかも、それを朝配って夕方帰る前に回収するのですが、ちょっと目を離すと、すぐ消えてしまいます。私も日本から差し金を持って行きますが、本当に3分間でも目を離したら、もう無いと思ってたほうがいいです。
街中には、中古の様々な道具や工具を売ってる店があり、皆そこへせっせと持って行ってしまうのです。釘一本さえ、その辺に落ちてる釘を真っすぐに直して使うのも珍しくありません。
しかし、彼等の生活や一日の賃金など考えると、正直なところ、一概に責められないよなぁと感じることもあります。
現地教育を惜しむ日本の大手ゼネコン
さらに、道具や工具を使いこなす教育を受けている人間は、ほんの一握りしかいません。 そんな事情が現場の進捗を遅らせ、図面通りに造ることを困難にします。
どの国でも日本同様、作業員のレベルにも差があり、この作業は絶対に失敗できないというような時は、ちょっと奮発して、高い賃金の連中を使います。
が、日本の大手5社のゼネコンでさえ、そんなことは滅多にしません。可能な限り安く使える作業員、サブコンを使ってるのが実情です。それを補うための準備をすれば、多少レベルの低い作業員でも、十分に仕事をこなすことは可能だと思いますが、残念ながらそんな工夫をしようとする会社はほとんど見受けられません。
そもそも、「現地の彼等も仕事は出来る!」と思ってる日本人技術者が少ないという現実があります。同じ人間なのでそんなに大差はなく、ちょっと手間暇をかけて教えれば、彼等でも十分仕事はできるのではないか、と私は思っています。そう思いませんか?