ワインバーをやって「建設業は恵まれている」と実感
――ワインバー「蔵しこ」がオープンしたのは平成28年8月ですから、かれこれ1年3ヵ月くらい経ちますね。実際にやってみて感じたことって何ですか?
後藤 建設業がいかに恵まれている業界か、ということがよく分かりました。私は10年以上、建設会社を経営してきましたが、建設業が恵まれているなんて今まで感じたことはありませんでした。
業界関係なく、仕事が大変なのは同じです。でも、建設業とサービス業を収益面で比べると、建設業の方がケタ外れに大きい。その分、経営が楽ですね。
――同じ町で商売をしていても、建設業とサービス業では景色が違いそうですね。
後藤 その通りです。私は高校卒業後の数年間、建設の学校に行った時期を除けば、ずっとこの羽後町で暮らしてきました。でも、ワインバーをするまでは、田舎で商売をすることの真の厳しさを分かってなかったんですね。人口の少ない田舎でサービス業をするのは本当に大変です。今では、この町でサービス業をされている皆さんに対して、「店を開けて頂きありがとうございます」とお礼を言いたい気持ちです。
このことを学べただけでも、ワインバーをやって良かったと思っています。バーテンダーをしても、この店から受け取る私自身の報酬はありません。まあ、ボランティア、趣味みたいなもんです。でも、他の業界の大変さを知り、歴史ある建物を残せたので、私としては良い体験だったなと思っています。

後藤建設がある羽後町は三大盆踊り「西馬音内盆踊り」で知られる。だが、祭り期間以外は閑散とした日がほとんどだ。
――他の商売をすることで、本業が恵まれていることを知ったというのは面白いお話しですね。
後藤 建設業は、現在も未来も恵まれている業界だと思います。人手不足や公共工事の減少などのマイナス面を折り込んでも、やっぱり恵まれている業界です。
市場は縮小すると思いますが、それに合わせて企業数も減っていきます。公共工事は少なくなるかもしれませんが、ゼロになることはありません。どこまでもバランスは保たれます。悲観しすぎることはないと思います。
従業員も社長も「個人のビジョン」を追求していく後藤建設
――このワインバーを含めた、後藤建設のビジョンについても伺いたいのですが。
後藤 従業員の皆さんには、会社がどうだという前に、どこででも働けるスキルを身に付けた方がいいよとお話ししています。勤めている会社がなくなったら困るというのは、ひと昔前の話ですよね。能力さえあれば、今は勤める会社なんていくらでもあります。
スキルがある人で、会社が潰れたらおしまいだなんて人なんてほとんどいませんよ。この『施工の神様』の読者の皆さんは、自ら情報を収集しようという方々でしょうから、とくに理解されているでしょうね。有能だったらどこでも使ってもらえます。そういう時代なんですね。
――会社主体というよりも、スキルを高めようと考える個人が集まったのが後藤建設なんですね。
後藤 そうです。ですから、私がいちいち口を出さなくても現場はしっかり回っています。段取りについて口を挟むことはないですね。安全やコンプライアンスの面でアドバイスするくらいです。
個人が大事というのは、社員だけではありません。私自身、後藤建設の社長という責任を果たしつつ、個人のビジョンを持って、やりたいことを追究していきます。その個人のやりたいことが形になったのが、このワインバーです。
このワインバーをやったことで、新たな感性が自分の中に生まれた気がしています。その感性が熟成して、しばらく先にまた新たなやりたいことが生まれる気がします。それまでは、「バーテンダー」と「建設会社の社長」と「不動産会社の社長」の3足のわらじをしっかりはきこなしていきたいですね。

株式会社後藤建設 後藤裕樹社長
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