建設業界=長時間労働というイメージ
「23.2%」。この数字、何の数字かご存知でしょうか?
この数字は、週休2日以上の工事現場の割合です。日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)の調査(『4週8閉所ステップアップ運動 2020年6月閉所状況調査結果』)によると、4週間あたり8日以上の休みを設定している工事現場は全体の約1/4にも満たず、土曜日や祝日の稼働が常態化しています。
特に現場監督業務から書類作成などのデスクワークまでこなす施工管理技士においては、残業時間も多く、週休2日の休みを取れる現場なんて想像すら難しいという方は少なくないのではないでしょうか。
ゼネコンを中心に「現場環境のホワイト化」の動き?
そこで国土交通省や建設業界団体は、「週休1日以下」や「残業80時間超」が常態化している建設業の働き方を変えるべく、「週休2日の推進」や「総労働時間の削減」、「有給休暇の取得促進」の実現に向けて動き出しました。ゼネコンの役員を中心に「週休2日推進本部」という組織が、一般社団法人日本建設業連合会(日建連)の中に設置されています。
政府が推進している残業時間の上限規制について、建設業は5年の猶予期間が与えられていますが、今回の自主規制は、円滑に法適用するために猶予期間のうちから、段階的に残業削減に取り組むことが目的です。残業時間が一向に減りそうにない建設業界ですが、日建連の「働き方改革」への本気度が伺える決定でした。
この自主規制は自民党が音頭を取ったと言われており、国発注の公共の評価にも影響することを踏まえると、まず大手ゼネコンが遵守して、徐々に中堅ゼネコンにも影響が及ぶことになると考えられます。また、毎週土日を休工日とする「週休2日制確保モデル工事」の取り組みを神奈川県が行うなど、官民一体で本格的に建設現場の労働環境の改善に取り組んでおり、残業時間を減らして休日の日数も増やしている「ホワイト建設会社」も実際に増えてきています。プレミアムフライデーを導入したゼネコンもあります。
しかし、その一方で、国の目が届かない小規模の建設会社では、実際の残業時間を減らすのではなくサービス残業で対応すると予想され、結果として「ブラック建設会社」と「ホワイト建設会社」の格差や、時給の差がさらに開くのでは、と専門家は分析しています。
労働環境の改善には複雑な思いの人も
日建連の基本方針は、5年程度で週休2日を建設業界に定着させ、残業時間も削減するというものですが、目標を掲げたからといって建設業界の労働環境改善がスムーズに進み続けるかはまだ分かりません。
特に両手を挙げて週休2日に賛成できないのが、下請け会社で日当給を貰って働いている方々です。日当給ではないという場合でも、残業があるという前提で貰っていた給料が、自主規制によって減るのではないかという懸念を持つ方もいるのではないでしょうか。
先に述べたとおり、今回の自主規制によってブラック建設会社のサービス残業が増え、「ホワイト建設会社」と「ブラック建設会社」の労働環境や給与の格差が更に開く可能性が高いため、あながちその懸念は間違いと言えるものではありません。