準天頂衛星「みちびき」を活用した除雪支援
担い手不足に対応するために、道路管理者は省人化技術の開発に乗り出しています。
NEXCO東日本は、ことしから4機体制での運用が開始予定の準天頂衛生「みちびき」を活用して、高精度で除雪車の位置が把握できるシステムを開発しました。準天頂衛星からの信号と高速道路の高精度地図の情報を組み合わせることで、誤差数センチメートルで走行車線へのハミ出しやガードレールなどへの接触を予測できる優れものです。
開発した除雪運転支援システムは、除雪車両の位置や車体の向き、作業上の注意情報などをモニターに表示します。これまで熟練オペレーターの技術に支えられてきた外側線や路肩防護柵の位置把握、ホワイトアウト時や夜間の除雪装置(プラウ)の操作を一目で確認することができるようになります。
実際に作業に当たったオペレーターにお話を伺うと、「非常に正確で、10年分くらいの経験が短縮できると感じた」と効果を口にされていました。

除雪運転支援システムのモニターの様子。車の中にいながら、道路と除雪車の状況が把握できる

白線の直上までの正確な除雪をみせた
開発の契機は、将来的な担い手不足への強い懸念でした。北海道では建設業者と並び、農業従事者が冬場の閑農期に除雪作業に従事していますが、農業も建設業と同様に高齢化や担い手不足が深刻化しています。そこで、農業機械のICT化などが専門の北海道大学・野口伸教授と2014年度から共同研究を開始。試行錯誤を経て、システムの開発までこぎ着けました。
NEXCO東日本は、次の冬から道内すべての基地にシステムを搭載した除雪車を導入する予定。さらに今後は、除雪車の作業操作や運転制御技術、高速の除雪トラックなど技術開発を進め、2025年以降に完全自動化への移行を目指しています。
大雪など気候変動は激甚化へ
国土交通省と環境省、文部科学省、農林水産省、気象庁が共同でまとめた日本の気候変動に関するレポートによると、将来的には内陸部での大雪が増加する可能性が示されています。
政府は、大規模な自然災害への対応の大本となる『国土強靱化計画』に暴風雪や豪雪のリスクを追加する方向で、現在検討を進めています。
除雪の担い手不足は、地方部や建設業だけの問題でない段階まで来ています。持続的な除雪体制の確立へ対応が急がれます。