「原価開示方式」は悪の軍団との協業で効力を発揮
岩坂 しかし建設業の新たな入札契約方式なんて一般の人は読まないじゃないですか。だから、どうすれば「面白そう」と思ってもらえるかは今回本当に悩みました。
でも、映画を観ると──詳細はネタバレになるので話せませんが──「マジンガーZ INFINITY」の物語では、Dr.ヘルが謎の復活を遂げて、人類と協力して工事をするという設定なんですね。
片や地球を守る“正義”の側の光子力研究所と、“悪”の側である鉄十字軍団や鉄仮面軍団が一緒になって工事をする……そうなったら間に入る前田建設は相当透明性を高くしないと、どちら側からも睨まれかねないぞ……などと考えていたら、「原価開示方式」がしっくりくることに気がついた。そこからはイメージが膨らんで、スムーズに進められましたね。
建設業の魅力を広く知ってほしい一心で続けた
──ファンタジー営業部の創設が2003年ということは、もうかれこれ15年くらい続いているのですね。
岩坂 そうですね、恐ろしいことです(笑)
──ファンタジー営業部は業界でも大変異色な取り組みだと思いますが、どういう経緯で始められたのでしょうか?
岩坂 念のためお断りしておきますと、当社に「ファンタジー営業部」という部署が実際にあるわけではありません。有志が集まって運営するバーチャルな部署です。
私はもともと土木をやっていた人間です。トンネル屋ですね。1993年に前田建設へ入社したのですが、その頃の建設業界では大きな不祥事があり連日新聞を騒がせていました。私の回りでも建設業界を好意的に捉えてくれない人がいたりして、「何とかしなければ」という問題意識をずっと持っていました。
でも実際仕事をしている人はお分かりだと思うのですが、建設業界の仕事ってスケールが大きくて面白いし、ものすごい技術が注ぎ込まれているじゃないですか。クリエイティブな仕事がいっぱいあって、みんな一生懸命アタマも使って汗もかいて働いてますよね。
だから「面白い、価値のある仕事なんだ!」ということを、普段、建設業に興味のない方にもどうにかして知ってもらいたかった。そして浮かんだのが、アニメに出てくる建造物を実際につくったらどうなるかを「読み物」で伝えるアイデアでした。
コンテンツは自分たちで手作り
──具体的にどうやってコンテンツをつくっていくんですか?
岩坂 毎回違いますが、何らかの建造物の見積もりの場合は、だいたい最初にテーマを決めて、われわれである程度全体のシナリオをバーッと書いてしまいます。
そうすると、ウチの会社の中で「こういう技術の専門家が必要だな」という目星が付くのと同時に、ソトのどんな会社さんに協力をお願いしないといけないかも明らかになってくる。
そこから、一つ一つ検討をお願いしていくわけですけれども、社内、社外にかかわらず、皆さん本業がある中でお手伝いいただくことなので、なるべく余計な手間をかけずに検討していただけるよう、お願いする作業は細かく指定して、「ここの検討だけよろしくお願いします」などと最小限の作業時間になるようお願いしています。
今回の「マジンガーZ INFINITY」編はやや特殊で、見積もりプロジェクトではなかったので、私がひと通り書いた原稿に綿鍋がさらに加筆して…というのを2〜3往復して、わりと短期間で書き上げました。
──全部自分たちで書いてるんですか?!
岩坂 はい。「広告代理店はどこですか」とか「誰が書いてるんですか」とよく聞かれるのですが、実は僕らが書いています(笑)。皆さんそこに驚かれますね。
一人の専門分野は限られるので、プロジェクトのテーマによってメインのライターをファンタジー営業部から2〜3人立てます。あとは、関わる技術によって幅がありますが、10〜20人くらいの方が関わることになります。今回は2人だけでしたけどね。