技術者だから、ついリアリティを追求してしまう
岩坂 アニメの世界の話とはいえ、“お遊び”じゃなく本気で検討しようと思ったら前田建設だけではできません。だから社外にも協力をお願いしています。「○○重工」「○○機械」といった普段から一緒に仕事をすることがある会社さんに「協力していただけないか」と、一社一社お願いしに行きました。
最初のプロジェクトのときは、許可を得に行くのも初めてでしたし、「何を言っているんだ」という反応をされて結構きつかった。でも熱意を持って話をしてみると、行く先々の会社さんで同じ悩みを持っていたんですね。
われわれはいわゆる重厚長大産業で、自動車や家電メーカーのように一般消費者の方と接点のある商品を持っていません。一般の方から見れば馴染みのない世界です。
そういう中で、「自分たちがどんな仕事をしているかをもっと知ってほしい」という思いを皆さんお持ちだった。特に経営層に近いほど共鳴してくださる方がいらっしゃって、スッと話が通りましたね。
面白かったのは、どこの会社にも私とか綿鍋みたいな人間がいるということ。「こんなヘンな話に対応できるのは、ウチではあいつしかいない!」みたいな(笑)。「お好み焼きを100人分いっぺんに焼ける機械」みたいな「何の役に立つのか?」と思うような機械を設計した人とか、ガンダムがすごい好きな人とか、必ずいるんです。
そういう方々が中心になって熱心に検討してくださり、「そんなに載せられませんよ」というくらい図面を描いてくださったり、どんどん脱線していったりして(笑)。
──脱線、というと?
岩坂 例えば、地下格納庫からマジンガーZを地上へ持ち上げるジャッキアップ装置は油圧ジャッキなんですよ。その見積もりをするんだから油圧ジャッキで考えないといけないのに、日立造船さんが「これはワイヤーで吊りたい。ワイヤーのほうが間違いなくスピードも速いし安定する」とおっしゃって(笑)。
アニメの世界って、どうしてもモノのスケールに対して動くスピードが速すぎるんですよね。作品通りにマジンガーを10秒で25メートル持ち上げるって、実際には油圧ジャッキにとって非常に厳しい要件で、採用には工夫が必要だったんです。でも、実際の技術者の意見を伝える意味で面白いので、最終的には作品と異なる提案である「ワイヤー」の話も載せました。
よりよいものをつくろうとする技術者がいて、その面白さを伝えようとするほど、コンテンツが厚くなってしまって。でも何より、これまで各社さんから上がってきた検討結果や図面を見せていただいてきたわれわれ自身が、すごく面白かった。
もし、ファンタジー営業部のコンテンツを楽しんでいただけているのだとしたら、それはつくっている私たち自身が楽しんでやっているからだと思いますね。
最初は社内にすら広報せず、開始当初は閑古鳥
岩坂 最初の「マジンガーZ」編の連載を始めた時、私は自信満々で「これは大人気になるぞ」と思っていました。ところが全然アクセス数が伸びない。当時はSNSどころかブログもまだない時代でしたから、今のように誰かが気づいて拡散するということもなくて。
でも、8月に最終回を迎えて「予算72億円、工期6年5カ月」という見積もりを出したら、途端にWebメディアに取り上げていただいて。そこからは“雪だるま式”どころではない勢いでアクセスが増えて、一時当社のサーバがダウンしたほどです。
その後、一般紙からも取材を受けるようになって、幻冬舎さんから書籍化の話が来て、テレビの露出も増えて。まあ、びっくりしましたね。
──今後、予定しているプロジェクトはあるんですか?
岩坂 今のところ明確なものはないんです。部署の体制もどうしようかなと思っていて。
綿鍋 私は温めているネタ、かなり持ってますよ。
岩坂 あるんですけどね…。これはやや個人的な話になりますが、私は今年度から、前田建設が進めていくオープンイノベーションの取り組みに関わって行くことになっていて、今はアタマがそちらに行ってしまっているというのが正直なところです。
ただ、今までファンタジー営業部で他社さんと協業してきた経験は、オープンに社外のさまざまな企業と協力してイノベーションを生み出すことにも活かせるんじゃないかと思っていて、その意味では楽しみでもありますね。
ファンタジー営業部として、あるいは前田建設として世の中に伝えたいことはまだたくさんありますので、次のプロジェクトを楽しみに、そして気長にお待ちいただければと思います。
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