スナップは人泣かせ
鋲打ちに欠かせない物は「スナップ」です。打ち手も当て盤も共に使うのですが、これがまたクセモノで、1万本打ってもビクともしない頑丈な物もあれば、数本打っただけで割れてしまう物もありました。
カシメ屋は、もちろん百も承知で、複数のスナップを準備しているのですが、取り換えるごとに割れが出て、手持ちゼロということも、ごく稀に起こります。
東京や大阪の街中であれば、一走りで調達できるのですが、地方の橋梁架設現場などでは大問題になります。
当時は、個人が車を持っているというような状況ではなかったので、まずは職人さんが乗ってきた会社の車を借りて、直近の鉄道の駅まで行き、カシメの親方に聞いた大阪の機材問屋まで汽車を乗り継いで買いに行くというのが、監督見習いの仕事でした。
リベットは盗まれる
橋で使うリベット径は22mm(昔の言い方では「7分」→ 7/8インチの分子の数字だけを言う)が標準で、よほど大きな橋や、荷重が大きな鉄道橋では25mm(同「インチ」)が使われでました。一方、鉄骨は19mm(6分)、16mm(5分)が大半でした。
現場では、詰所の建物に接して、リベット倉庫を設置します。倉庫といっても、現場で手づくりした木製の箱で、4周の囲いと蓋があり、長さの寸法別に油をひいた麻袋に入れて保管します。
1日の作業が終わると、蓋を締めて南京錠をかけていました。しかし、夜は誰もいなくなるので、このリベットが時折盗まれることがありました。特にスクラップの値段が上がった時期には、その危険が増します。
盗る方は昼間に、何の関係もない通行人のような顔をして、詰所の状況や倉庫の様子を観察しているそうです。南京錠1個が掛かっているだけの木の蓋ですから、小さなバールを持ってくれば、簡単にこじ開けることができます。
朝、現場に来てみると、倉庫の蓋が壊され、リベットの麻袋が無くなっています。監督が大慌てかというと、そうでもなくて、電話帳で現場周辺にあるスクラップ屋を調べて、22mmのリベットが来ていないか尋ねます。あるといえば「それはウチのだから動かさないように、後から警察と一緒に行くから」と伝えます。
22mmのリベットを使うのは橋梁のみですから、すぐに足が付くのです。だから盗難については、さして慌てなくてよいのですが、今日の作業で使う分を盗られた場合は、この盗品を大急ぎで回収しなければならないので大騒ぎでした。
超おもろいやんけ!
とても面白い連載記事でした。
まさにTHE 職人 という記事です。
他の職方の記事も読みたいと思います。
記事面白いです。
屋根工事をしていますが、これからの季節は太陽光と屋根の熱で倒れそうになりますが、カシメ屋さんに比べたらマシですね。大変なのは変わらないけど励みになります。ありがとうございました
確かに、技術も進歩しましたが、1番の違いは、働く環境の変化ではないでしょうか。