鉄筋コンクリート造の建物を補強する前に、木造住宅の耐震補強を
木造住宅が大きな地震を受けた時、倒れるのはどうしてか。それは建物が大きく揺れるからです。大きく揺れ柱が傾いて上の重量を支えることが出来なくなって押しつぶされるように倒れてしまいます。これが木造住宅の倒れ方です。木造住宅の場合は、ペシャンコに潰れます。
鉄筋コンクリート造の建物は、柱や壁がビリビリ壊れていきますけど、コンクリートの塊が残ります。だから建物全体がペシャンコになりませんから、中にいる人は助かります。
日本では1968年に北海道で十勝沖地震があって、この時に鉄筋コンクリート造の建物が大きな被害を受けて、皆がショックを受けました。「これではダメだ、基準を変えなければならない」と言う事で1981年(昭和56年)に新耐震設計法が出来ました。1968年以降、鉄筋コンクリート造の建物は非常に変わっていき、特に学校では圧死して死んだという人はいません。鉄筋コンクリート造の建物で亡くなった方は、神戸の地震で数人いただけで、ほどんど死亡者はいないのです。
しかし、木造住宅はペシャンコに倒れてしまうので、その中にいた人は確実に即死です。「倒れるまで時間があるから逃げたらいいのでは」と言っても人間は大きく揺れている時、動くことさえ、立つことさえできません。
1968年以降、木造住宅で亡くなった方は数えきれないくらいます。今回の熊本地震でも当初、49人の方が亡くなったわけですけれど、そのほとんどは住宅がペシャンコになった状態です。

佐久間順三氏の話に耳を傾ける聴講者
私の極めて個人的で、誤解を招く発言かもしれませんが「人の命が大事だ。人の命を守るんだ」と言う事を大前提に建物を造らなければならないのであれば、鉄筋コンクリート造の建物を補強する前に、木造住宅の補強をしなければなりません。こちらが圧倒的に優先順位が高いと私は思っています。
しかし、鉄筋コンクリート造の学校の耐震補強は日本全国のほぼ全てで終わっていますが、木造住宅の耐震補強は終わっていません。それが現状です。非常に残念でなりません。