トータルステーションって難しい。でも「測量頑張ります」
璃音さんが通う天草工業高校は、熊本県の中心部から西へ車で約2時間進んだ、絶景の海と自然に包まれた天草市にある。
隣接するループ式の天草瀬戸大橋を渡っていくと、まるで海中に浮かぶ大型客船のように校舎がそびえ立つ。

大型客船を思わせる熊本県立天草工業高校。右端に見えるのが天草瀬戸大橋
1963年(昭和38年)4月に開校し、現在、約600人の生徒たちが土木科をはじめ機械科、電気科、情報技術科の各コースで、社会に貢献できる技術者を目指し専門教科を学んでいる。
土木科では、道路やトンネル、橋など、社会資本の整備に必要な測量・基礎力学・施工やパソコンの操作などを学習する。
トータルステーションのポエム「気泡は言うことを聞きません」
璃音さんは、県内の工業高校10校が集う「ものづくりコンテスト」に出場するため、授業と並行して土木測量の練習に励んでいた。
コンクールで金賞を受賞した作品は、その一コマを詠んだものだ。
先生からトータルステーションの操作の指導を受ける璃音さん。水平器を調整しようとすると、「気泡は言うことを聞きません」「気泡の行き先が分かりません」「求心がズレています」と、思い通りにならない悲しい気持ちをあらわにする。
しかし、「昨日も今日も測量します。明日も明後日も測量します」と前を向く。
やっと据え付けが終わり、トータルステーションを覗くと、今度は「ミラーが見つかりません」「米粒より小さいミラーが見つかるわけがありません」と嘆く。
友達が無線でダメ出しし、あたふたする様子を先生が笑っている。それでも「今日も測量頑張ります」と結ぶ。
測量の難しさに苦悩しつつも、ひたむきに頑張る姿が目に浮かぶ。土木に携わる者にとって、何とも頼もしく、心に響く詩だ。
高2で2級土木施工管理技士と測量士補に合格
璃音さんは、2017年もコンクールに応募したそうで、「選ばれてびっくり」と喜ぶ。将来は土木の技術職を目指しており、朝の課外を頑張っている。
ものづくりに興味を抱いたのは、中学生のとき。自宅を新築することになり、職人や技術者の働く姿を見て「面白そうだな」と思ったという。

熊本県立天草工業高校 土木科の実習棟。モダンな建物でくまもとアートポリス参加作品
土木科に入学してからは、専門教科の難しさに負けそうになりながらも、「きっと将来に生かせる」と自分を奮い立たせてきた。
その結果、2018年5月には測量士補を取得。2019年1月には2級土木施工管理技士の学科試験にも合格した。
権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。