江戸橋JCTは「めちゃくちゃカッコ良い」
――橋の写真に目覚めたのはいつころですか?
依田 2010年ごろですね。その前は馬の写真ばかり撮っていました。
――馬ですか?
依田 ええ、競走馬が好きだったので。全国の競馬場に行きました。今も一口馬主です。とにかく馬が好きすぎて、サラリーマンを辞めて、北海道の牧場で1年間働いていました。ところが、毎日の作業がツラくて、馬がキライになりました(笑)。
――(爆笑)。
依田 それで東京に戻って、家業を継ぐことにしました。馬の写真を撮るのもアキたので、「夜景でも撮ろうかな」と思って、日本橋あたりを歩いていました。ふと見上げると、江戸橋JCTがあって、「めちゃくちゃカッコ良いな」と思いました。それで立体交差が好きになって、立体交差の写真ばかり撮り始めたんです。
都内には27箇所の立体交差があるのですが、すべて撮りました。すぐに撮り終わって「物足りないな」と思ったので、全国各地のJCTを撮りに行くようになりました。
――最初は立体交差だったんですね。
依田 そうです。橋になったのは、JCTを撮影しているうちに、「橋もキレイだな」と気づいたからです。最初にキレイだと思ったのは、首都高速中央環状線の「かつしかハープ橋」でした。斜張橋なのにS字になっている珍しい橋です。それで橋を撮り始めたんです。個人的には斜張橋が好きです。
橋についていろいろ調べていると、土木学会の田中賞の存在を知りました。そこで、「田中賞を受賞した橋とJCTをすべて制覇しよう」と思い立ちました。
――その発想がスゴイですね。
依田 ありがとうございます。とりあえず、2016年までに全国のJCT、田中賞を受賞した橋はすべて撮影しました。
海外の橋はまだ行けてないんですけど、今年の夏、初めての海外、アメリカに撮影に行きました。奥さんのお姉さんがアメリカ人と結婚して現地に住んでいるので、連れて行ってもらいました。
――スゴイ。
依田 ただ、JCTはドンドン新しいのが建設されますし、田中賞も毎年増えます。西日本の橋はまだ撮れてないんですよね。
国内76万箇所の橋を「全部撮る」
――撮影は基本的に趣味なんですよね?
依田 ええ、単なる趣味です。本業は雑貨屋で、土木の素人です。ただ、「いつか橋の写真集を出したい」という夢はあります。これまでに延べ2,500橋以上を撮りためています。
ところが、橋は全然撮り終わらないんですよ、多すぎて(笑)。国内だけでも76万箇所ぐらいありますからね。それでも「全部撮るぞ」という気持ちでいます。性格的に突き詰めちゃうんですよ。「人がやらないことをやろう」と。仕事ではなくて、趣味だからこそ、撮り続けられるのだと思います。
――移動はどうしているのですか?
依田 土曜日しか休みがないので、金曜日に仕事が終わった後、車で撮りに行っています。京都日帰りとか。1泊2日で和歌山の串本まで行ったのが、一番ツラかったですね(笑)。
――撮った写真をどうしているのですか?
依田 撮った写真はブログにアップしています。僕のブログを見て、「写真を借りたい」とか「写真を撮ってほしい」というオファーがちょくちょく入るんです。
――例えば?
依田 国土交通省が発刊している月刊誌「道路」とか、「土木技術」や「東京舟旅」などの雑誌ですね。ある広告代理店からオファーを受けたこともあります。一応報酬をもらって、写真を提供しています。ただ、それで食っているわけでないので、あくまで趣味の範疇でやっています。
僕自身が取材を受けることもあります。変わったところでは、慶應義塾の機関誌である「三田評論」に出たことがあります。
――なんすかそれ?
依田 やはり僕のブログを見て、取材のオファーが来たのですが、「橋ものがたり」をテーマに話をしてほしいということでした。僕は慶應義塾となんの関係もないのですが、慶應義塾のOBで明石大橋建設工事に関わった技術者の方と浮世絵の専門家の方と三人で(笑)。
――編集者もスゴイですね(笑)。