架設の段取りに注力
――この砂防事業はかなり規模が大きいそうですね?
北沢さん これだけ大きな規模の砂防事業は初めてです。めったにないと思います。

法面の現場の様子(2019年10月下旬時点)
――大きな現場ならではの工夫というと?
北沢さん モノをどう運ぶといった架設の段取りには力を注ぎました。それをうまくやっておかないと、早く終わらないからです。この現場では、足場のある中央部分にモノが運べるよう索道を2条張り、荷降ろしできるようにしました。
そこを拠点にして、あとは人力で上や下にモノを移すようにしました。なるべく人力での作業を軽減することが、作業を早く終わらせるコツだからです。
――索道ですか。
北沢さん 一口に索道と言っても、どこに張るかで作業効率が大きく違ってきます。慣れていない技術者だと、「どう張るか」をまずイメージできないんです。
僕はもともとダム屋なのですが、高さを考慮して段取りを組むことに慣れています。この現場は上の部分が最初から崩れているので、全て見えているわけです。僕にとっては、「ここが危ない」「あそこが危ない」というのがすぐにイメージできたので、むしろやりやすいほうでした。
重機14台での大規模な無人化施工
――最初のころは無人化施工でやったそうですね。
北沢さん 砂防事業の現場では、下の方で土留盛土をつくる部隊と上の方でラウンディングする部隊の2つの部隊がありました。私は上の部隊のメンバーとして、無人化施工を担当しました。
無人化施工は、下での作業も含めると、2016年5月から2017年3月まで続きました。細かい点ではいろいろありましたが、トータルとしては非常にスムーズな作業ができました。まず、普通のバックホウに遠隔操作のための機器を取り付け、バックホウをバラして、上までヘリで上げました。遠隔操作ができるよう、その後、無人化施工に入りました。

無人化施工の様子
――無人化施工のメリットは?
北沢さん 熊谷組の「ネットワーク対応型無人化施工システム」の特長は、数十km離れた操作室から操作できることです。ヘルメットを脱いで、空調の効いた部屋にて、モニターを見ながら作業できるわけです。実際は、現場から1kmほど離れた立野病院の前のヤードに設置し、14台のバックホウなどを動かしました。
オペレーターさんは14名ほどいましたが、1人で複数の重機を動かしていたこともありました。無線が混線することはないので、何十台単位で同時に動かすことができます。

無人化施工操作室の様子
――精度はどうでした?
北沢さん 遠隔操作は、オペレーターさんが目視ではなく、モニター見ながら作業をするので、仕上がりの精度は、やはり目視の方が良いです。操作方法もラジコンのようなコントローラーで行うのですが、オペレーターさんは、通常のバックホウのレバーでの操作に慣れている分、操作感覚を掴みづらかったようでした。
ただ、しばらく作業をしているうちに遠隔操作にも慣れてきたので、工程管理などに支障をきたすということはありませんでした。なにより、人がケガすることはないので、安心して見ていられました。
作業は日中のみでした。夜間は、無人化施工とは言え、ちゃんと照明で照らして細かいところまで見ながらでないと、やはり危ないので。
――困ったことはなかったですか?
北沢さん 無線の入り方に波があったのは、困りましたね。ちゃんと電波が飛ぶよう櫓を建てて、そこから飛ばしていたのですが、霧が出たりすると、たまに無線が入りにくくなったりしました。霧が出たら、モニターも見えなくなるので、そもそも作業できないんですけどね。どんな条件でも、安定的に無線が飛ぶよう改良が必要だと考えています。
――重機の点検はどうしていたのですか?
北沢さん 重機の点検は、毎朝、昼行いました。重機をワイヤーに吊るして降ろして、人が目視で点検しました。原始的なやり方でしたが、山の上に30cm角の丸太を地面に埋め、アンカー代わりにしてワイヤーを張りました。
大型台風は今後も来るだろうから、ダムはまだ必要だな。
大変なお仕事ですよね…
災害から命や自然をも護る為にも必要です。
作業されている方々には感謝の念しかありません。皆様お身体に気を付けて頑張ってください!!