コンサルやゼネコンに負けない「T字型の人材づくり」
――九州に来たのは?
森田さん 2017年2月に本社から九州新幹線建設局に来ました。最初は九州新幹線建設局の工事課の課長補佐として配属されました。その後長崎建設所の副所長になって、現在所長をやっています。現場を担当するのは久しぶりです。
機構の人材育成の考え方としては、職員には、計画から設計・施工までの幅広い分野を一通り経験・理解させるというのがあると思います。「T字型の人材づくり」ですよね。Tの縦線がその人が得意とする分野で、横線がその他の分野ということです。
自分の軸となる分野については、コンサルやゼネコンに負けない知識と経験を持って、その他の分野の幅を広げるということです。そういう人材が増えれば、機構の組織も深く幅広い組織になります。
タワマン建設ラッシュで駅がパンク
――これまでで印象の残る仕事は?
森田さん 運輸政策研究機構に出向中、土木学会の元会長だった森地茂先生のもとで研究をしたことです。都市開発と駅の処理能力の整合性に関する研究でした。
東京では現在、大規模な都市開発が行われ、駅周辺にどんどん高いビルが建っています。その結果、局所的な地区で人が増えすぎて駅がパンクする事態が発生しています。
例えば、豊洲や大崎、勝どきのような中規模な駅です。人が増えると、道路の場合は「道を広げよう」という話になるのですが、鉄道の場合、それがなかなか実現しません。
駅が混雑すると、当然乗り降りに時間がかかります。高頻度で電車が走っているため、遅延の原因にもなります。首都圏などでは電車の相互乗り入れが行われているため、その遅延が広域化します。駅の混雑に端を発して、そういう負のスパイラルに陥っていきます。これを防ぐためにはどうしたら良いかということを研究していたわけです。
私が研究するまでは、駅の処理能力を厳密に把握できていなかったので、「ここまでは持つけど、ここからはオーバーフローする」という閾値的な基準を求めて、それを駅開発に活用するというような研究をしたわけです。研究成果は、世界交通学会で発表し、賞ももらいました。それが一番印象に残っていますね。
――首都圏の鉄道交通マヒは今でも続いていますね。
森田さん 都心部の交通シェアは鉄道が90%程度を占めています。都市開発を行う際、鉄道交通との整合性をちゃんと考えていないからです。