できるだけ完成を前倒ししたい
西伸部は、全6車線の80km/h道路(第2種第1級)で、国土交通省近畿地方整備局(公共事業)と阪神高速(有料道路事業)による合併施行方式で行う。公共事業は道路と港湾に分かれる。全体事業費は約5000億円(公共分約2500億円、有料道路分約2500億円)。当初は、全線公共事業(国道)として事業化されたが、阪神高速と事業費を折半する合併施行方式に変更された。
2018年12月に工事着手しており、現在、駒栄ランプ付近のトンネル工事が進められている。完成時期は未定だが、広瀬部長は「事業認可上の期限は2032年3月だが、できるだけ前倒しして完成させたい」と話す。

大阪湾岸西伸部の起工式の様子(写真提供:阪神高速道路株式会社)
西伸部(今回事業着手した区間)の延長14.5kmのうち、海上ルートは約5.8km。六甲アイランド〜ポートアイランド間(新港・灘浜航路部)、ポートアイランド〜和田岬間(神戸西航路部)ともに、神戸港などに出入りする船舶にとって、重要な航路となっている。大型クルーズ船の通航のため、航路高(橋桁の海上からの高さ)は最高65.7mとなっている。
みなとまち神戸にふさわしいのは斜張橋
同社は2017年9月、学識経験者らで構成する技術検討員会(委員長:藤野陽三・横浜国立大学上席特別教授)を設置。最適な橋梁形式の選定、橋梁・構造計画に関する議論をスタートさせた。
議論に際し、「災害時の人流・物流ネットワーク機能の確保」、「『みなと神戸』にふさわしい景観の創出」、「維持管理しやすい構造」の3つの計画コンセプトを設定した。
新港・灘浜航路部は5形式(単独斜張橋、多径間連続斜張橋不等径間・等径間、多径間連続吊橋5径間・4径間)神戸西航路部は3形式(1主塔斜張橋2案、2主塔斜張橋)について、比較検討を重ねた。
連続吊橋は、連続斜張橋より経済性が劣り、アンカレイジの沈下リスクなどがあることから、選定から外された。不等径間の連続斜張橋は、側塔の張力変動が大きいほか、橋脚が多く、景観、維持管理面で劣ることから、外された。
同委は2018年12月、中間とりまとめを公表し、新港・灘浜航路部は連続斜張橋(等径間)と単独斜張橋の2案、神戸航路部は1本主塔斜張橋(主塔が和田岬側、ポートアイランド側)、2本主塔斜張橋の3案に絞り込み、さらに検討を続けた。
2019年12月、中間とりまとめⅡを公表。最適な橋梁形式として、新港・灘浜航路部に連続斜張橋(主塔4本)、西神戸航路部に1本主塔斜張橋(ポートアイランド側)を選定した。
連続斜張橋の選定理由として、3つの計画コンセプトに合致する特徴を有する上に、均等径間により桁の重量がバランスし、中央部の海上橋脚が不要になるほか、連続斜張橋として世界最大規模になることなどを上げた。主桁、主塔ともに鋼製とした。一方、単独斜張橋は、とう曲の不確定性に対するリスクがあることなどから、外れた。
1本主塔斜張橋(ポートアイランド側)の選定理由には、主塔へのとう曲の影響が小さく、景観性に優れるほか、最大支間長が480mと1本主塔の斜張橋として、こちらも世界最大規模になることなどを挙げた。主桁、主塔は鋼製。他の2案を外した理由には、とう曲の不確定性に対するリスクを挙げた。
長大橋として連続斜張橋を採用するのは国内初。世界的にも、スコットランドのフォース湾に架かる連続斜張橋「クイーンズフェリー・クロッシング」(2017年完成、橋長約2.7km、主塔3本)に並び、世界最大規模となる。
今回の橋梁形式選定を受け、広瀬部長は「連続斜張橋は、地震発生時に橋桁が外れるリスクが低く、中間橋脚が不要なため、維持管理コストも削減できる。景観的にも美しく、みなとまち神戸にふさわしい橋梁形式だ。ただ、世界最大規模ということもあり、非常に高いレベルの技術が求められる」と言う。