自由な設計を楽しむ文化
――リノベるの事業方針を教えてください。
安江 日本では、約8割の方が新築住宅を購入しますが、新築マンションであれば、資産価値は20年で約半値まで低下すると言われています。海外と比較して新築偏重型であることは否めません。また、この人口減少の時代では、住む人が減っていくことは避けられず、空き家問題は今後益々深刻さを増していくでしょう。
中古住宅を有効活用し、新たな価値を加えて着実に資産化することで、中古住宅の流通を活性化し、ストック型社会への転換を目指すことで、私たちのミッションである「日本の暮らしを、世界で一番、かしこく素敵に。」を実現できるのではないか、と考えています。
またリノベーションは、資産性という観点から見た合理的なメリットと、感覚的な楽しさという両方の良さがあるので、それをもっと広めていきたい。リノベるでは、かしこく素敵な暮らしを具現化していくための多様な選択肢、ライフスタイルを提案しています。そうした提案を通して、もっと住まいや暮らしを楽しみ育んでいく、豊かな暮らしや豊かな住文化の形成に貢献ができたらと考えています。
――リノベるは、設計の自由度が高いですね。
安江 そうですね。リノベるでは、物件探しから顧客へのサポートをしますが、まず事前に「どんな暮らし方をされたいですか?」という質問をしているんです。その回答によって住まわれるエリア、物件の広さや間取り、内装、家具も変わってきますから。それらをトータル的にプロデュースすることで、ワンストップサービスとして提供しています。
住まいは一見、土地はここで、規模はこのくらいで、と画一的に決定していくものと思いがちですが、お客様一人ひとりにヒアリングすると、多様な住まい方の答えが返ってくるので、それに寄り添っていくと自然と自由な設計になるんです。

リノべる。本社ショールーム
――自由度の高い設計を受け止める施工部隊も大変だと思いますが、施工の強さの秘訣は?
安江 施工はパートナー企業と一緒に手掛けています。簡単なものではありませんが、それをポジティブにとらえてくれるパートナー企業も多く、中には、「決まった建物をつくるのはもう飽きたよ」という意見をいただくこともあるんです。毎回、違う設計図に沿って、プロとしてのプライドと共に施工することの楽しさを感じながら携わってくださる方もいらっしゃいます。パートナー企業もやりがいをもって、メンバーの一員として参画くださることが、施工部隊の強みです。
――パートナー企業は、施工の際にどんな工夫をされていますか?
安江 どれだけ先を読めるかがカギになりますね。棚一枚をつくるにしても、一般的に出回っている建材を使えば特に問題は起きにくいんです。これがお客様の理想に近づけるために建材も自由に選択していった場合には、反りや割れが出る可能性がある、などの課題が生じることもあります。また、躯体の壁の状況など解体してみてわかることも多いので、途中で仕様変更が必要となることもあります。
ただ、それを全て諦めてしまうとお客様らしい暮らしを提供できなくなくなります。予見できる部分については事前に顧客にしっかりと説明し、納得した上で進めていくことと、都度、社内の担当と連携し柔軟に対応すること。これがすごく大事だと考えているため、徹底しています。
――今後、建材会社などと連携して新建材の開発も考えられるのでしょうか?
安江 将来的にありえると思います。リノベーションは本来、環境に優しいものですが、実際には内装を壊して、ゴミも大量に排出していますから。もっとゴミを出さずに済んだり、建材も再利用できるようになれば、より環境に優しいビジネスになっていくと考えています。