リノベーション業界研究セミナーとは?
建設業界を志望する就活生が就職を視野に入れているのは、新築物件の設計・施工の業界だけではない。ひそかに注目を集めているのが、従来ある物件を新たな価値を見いだしていくリノベーション業界だ。
2月3日、リノベーション住宅推進協議会は、新卒者対象イベントとして「第3回リノベーション業界研究セミナー」を開催した。参加した就活生は約200名。建築学科の学生が圧倒的に多いが、法学部など文系の学生も参加した。
建設業界は若者離れが深刻な問題となっているが、リノベーション業界には若者が集まりやすい構造があるようだ。イマドキの就活生はなぜ、リノベーション業界に惹かれるのか。本音を聞いてきた。
「リフォーム」と「リノベーション」の違いとは?
「第3回リノベーション業界研究セミナー」の開催場所は、東京のLIFULL本社(実はこのビルは築50年だが、一棟丸ごとリノベーションしてある)。
ちなみに「リフォーム」と「リノベーション」は意味が異なり、似て非なる工事である。リフォームとは、老朽化した建物の性能を新築の状態に戻すことを意味するのに対して、リノベーションは、既存の建物を現在の利用用途に合わせて大規模な工事を行うことで、価値を高める工事を言う。新規で工事を行う部分と既存で残す部分が混在するため、リノベーションは新築よりも高度な提案、設計、施工能力が求められる。
セミナーの冒頭、島原万丈LIFULL HOME’S 総研所長が講演した。概要をまとめると次の通りだ。
- 家やマンションを購入は、現在の日本では新築が多数。
- 日本では中古を購入すると、「お金が無いの?」と質問される。
- しかし、これは日本特異性の問題で、欧米先進国は中古購入の方が多い。
- 海外の中古購入率は、アメリカ83%、イギリス88%、フランス68%。
- 日本も少子高齢化が進展し、経済も成熟化しつているため、住宅ストック時代を迎える。
- 住宅一次取得世帯である25歳~45歳の世帯数は首都圏でも減少を迎える。
- 壊しては造るという住宅産業から、今ある家をリノベーションする時代が到来する。
講演後、参加企業がおのおの3分間の自社PRを行った。プレゼンを担当した社員は全般的に若く、就活生とそれほど年齢が変わらない。なかには4月から入社予定の大学4年がプレゼンした企業もあった。
女子学生がリノベーション業界に就職したい理由
参加した就活生にズバリ話を聞いたところ、リノベーション業界に特有の関心事かも知れないが、設計やプランナーへの興味が高い学生が多かった。そして男子学生と女学生の比率はおおよそ7:3くらい。女子学生の参加も多いのもリノベーション業界の特徴だ。
まず、女子学生から話を聞いてみた。
「私は建築学科ではないですが、家にかかわる仕事をしたい。設計からお客様にトータルに関わる仕事を希望しています」 (首都圏大学のデザイン関係学科)
「2年の時に提出した課題では、住宅と店舗型の新築一体型を提案しました。リノベーションの会社のリクルーターの方は若い方が多い印象を受けます。私はリノベーションっておしゃれだと思います。1回古くなった住宅を再生して、魅力ある建物にするって素晴らしいし、価値があります。日本には街全体が老朽化している場所は各地にありますが、街に全体をリノベーションする仕事に憧れます」 (京都の建設系専門学校生)
女子大学生の声を集約すると、デザインや設計、プランナー希望者が圧倒的に多い。古い家をリノベーションした際、営業と同行した設計者は女性だという話も多く、女性ならではの細やかさが設計力に活かされるようだ。
「私は住宅系リノベーション会社でインターンシップをし、その後何回か会社とメールのやりとりをしています。そこで今回のセミナーも来てみないかと誘われて出席しました。希望職種は設計ですが、ほかの企業ブースも回って絞っていきたいです」 (大学3年生建築学科)という話もあった。
企業の採用活動ではインターンシップの段階から就活生とコミュニケーションの頻度を高め、採用につなげたいという動きは強い。もちろん、就活の解禁日は3月1日なのでそれ以前の採用活動は厳禁だが、そこは会社側も就活生側双方は心得ている。そのため、採用活動につながらないメールのやりとりは問題がないものの、こうしたコミュニケーションがお互いを理解するいいキッカケにもなっている。
一方、文系学科からも少なからず参加者がいた。
「国のデータや今後の施策を調べると、リノベーション業界は伸びると思います。配属先は営業、企画、広報を志望していますが、リノベーションの良さを伝えていきたいですね」(大学3年生文学部)
法学部の学生は、「技術的なことはわかりませんが、どういう業界か勉強しに来ました。志望先としては営業と提案ができる環境であればいいですね」と語った。
最近の就活生は熱心に業界研究をしているケースが多い。どの業種が成熟産業か成長産業かをセミナー前の段階でよく理解しているのだ。リノベーション業界が他の建設業界と一線を画しているのは広報の強さにあるとも言われている。また、営業手法もネットや口コミなどの反響営業が中心で、ユーザーへの提案力が求められる。そのため、文系学科からもリノベーション業界への志望が集まっている。
他にも環境デザイン学科の学生などからも「新築よりもリノベーションの方に魅力を感じる」という意見は多かった。少子高齢化を迎える日本の新築は頭打ちになり、住宅ストックをどう活用するかが問われている中で、「自分の発想力で活躍できるのでは?」と期待する学生も多かった。
リノベーション業界は成長産業であるため、既存の住宅・不動産業界の常識や慣例にとらわれない発想が要求される。そのため、文系でもノリベーション業界で活躍できるフィールドは多くあると、参加企業の人事担当は言う。