新幹線整備は国土強靭化の観点から当然
――基本計画はあるのに、新幹線整備が遅々として進みません。
西田昌司議員 新幹線はもともと、日本国有鉄道(国鉄)が独自の事業として行っていたものですが、国鉄がJRに民営化されて、事業主体がなくなってしまいました。これによって、整備新幹線という上下分離になり、国が新幹線を整備し、運営をJRが行うというカタチに変わったわけです。
ところが、国が整備する段になって、バブルが崩壊しました。「国の公共事業はムダだ」という話になり、公共事業の予算は今、ピークの3分の1に減っています。当然、新幹線の予算も大きく減りました。
鉄道予算が減った背景には、鉄道は時代遅れであり、これからはモータリゼーション(車社会化)だという考えがありました。「鉄道より、高速道路に予算をつけろ」ということになって、それ以降は「ほそぼそ」と鉄道整備、新幹線整備が行われるようになったわけです。
そんな中、私は与党の北陸新幹線PTの委員になりました。北陸新幹線は、当初の計画は、亀岡市付近を通ることになっており、山陰の京丹後地域は一切通らないルートでした。私は「これはおかしい」と思いました。京丹後から東京に行く場合、在来線、新幹線を乗り継いで、5時間ほどかかり、全国で最も東京から遠い地域の一つです。北陸新幹線を整備するのに、なぜ京丹後をスルーするのか、「山陰にこそ、新幹線を通さなければならない」と考えたからです。
これは、私の地元である京都のことだけを考えてのことではありません。南海・東南海地震が起きれば、国土軸である太平洋側が大きな被害を受ける可能性があります。その代替路線として、日本海側に新幹線を整備するのは、国土強靭化の観点から、当然のことだと考えていました。そのためには、「基本計画のある新幹線はすべて通す必要がある」と考えるようになりました。
国が30兆円出せば、すべての新幹線を整備できる
――「基本計画のある新幹線はすべて」ですか。
西田昌司議員 そうです。基本計画のある新幹線をすべて整備するには、だいたい30兆円ぐらいかかります。30兆円と聞くと巨額だと思われますが、国家全体で考えれば、実はたいした金額ではありません。毎年2兆円出せば15年間で整備できるんです。
新幹線整備に限らず、本来インフラ整備は「予算制限」ではなく、「期間制限」で実施しなければなりません。かつては、日本も期間制限のもと、様々なインフラを整備してきましたが、今は「財政の範囲内」ということで、チビチビやっています。これではいつまで経っても、新幹線などのインフラを整備することはできません。
「予算制限」がデフレをつくった原因です。これを見直して、デフレの流れを変え、日本全体を再整備する。そのためには、「期間制限」によるインフラ整備が必要なんです。国民に夢を与える典型的なインフラとして、「新幹線ネットワークの全国展開」が必要だと考えているわけです。
――関西国際空港に新幹線を通す構想をお待ちですね。
西田昌司議員 ええ。これは基本計画にはありませんが、新大阪駅から関西国際空港を経由し、淡路島を通って徳島県まで新幹線をつなげるべきだという構想を持っています。鳴門大橋にはすでに新幹線が通れる鉄道用のスペースがすでに確保されています。
この新幹線が実現すれば、関空まで北陸から1時間、関西圏から30分、四国からも1時間で行けるようになります。中国地方や中部地方で考えても2時間以内です。その経済効果は計り知れないものがあります。新大阪と関空を結ぶ新幹線の基本計画はありませんが、この路線も四国新幹線と考えれば、つくることは十分に可能だと考えています。
法律的な制度改正も重要ですね。
建設の仕方として、局所的な新線建設を積み重ね、ある程度まとまった区間が繋がった時点でフル規格新幹線に切り替える、という手法も必要ではありませんか。
なぜなら、今の整備新幹線はまとまった区間で建設するありかたになっており、それもまた全国的な整備・建設の支障になっていると考えられるからです。高速道路のように局所的な建設を積み重ね最終的に全線開通させる、という手法を新幹線でも行なうべきです。
その局所的な新線建設をしている期間はいわゆる「スーパー特急方式」で暫定的に運行。但し、そのスーパー特急方式も狭軌在来線車両では時速200km運転は難しいという話を聞いたことがありますので、およそ時速170kmくらいの運転を認める。場合によっては「新幹線」の法律的な定義を「時速170km以上で運行する鉄道」に変更することも必要だと考えます。