渋谷の再開発を経て、さらに都市開発へ意欲
田中 東急建設さんというと何といってもやはり渋谷の再開発だと思うのですが、そのあたりのことをお聞きできますか。
寺田 昨年の11月に渋谷駅の真上にスクランブルスクエアがオープンしました。JR、首都高、明治通り、銀座線、さらには渋谷川が流れているので5重苦というような大変な現場でしたが、関係各社と社員が大変な思いをしてつくりあげてくれました。
またお正月には銀座線の移設工事も無事に終了し、おかげさまでお客様からも喜ばれ、よかったと思っています。今後も年代・国籍・性別に関わらず多種多様なものが融合するエンターテインメントシティにしていけるようにお手伝いができればと考えています。
田中 土木の工事は、普段あまり表には出てこないものですが、渋谷のような都心のど真ん中で工事となるとタイムラスプ等を使った撮影がマスコミからも注目されましたよね。学生の採用活動にも影響があるように感じるのですが。
寺田 そうですね。学生さんの受けは良いと思っています。今では当社のPRも多摩田園都市線の写真から渋谷の再開発に変わろうとしています。やはり渋谷で働けるというのは、魅力の一つになるようですね。都心の再開発というイメージでしょうか。
田中 少し話題は変わりますが、代表取締役になられてから特に力を入れられていることはどんなことでしょうか?
寺田 やはりコミュニケーションですね。本当は現場に行った際に機会をみつけて現場の若手の話を聞いて、私の気持ちも話すという姿勢はもっていたいなと思っています。同じことは執行役員クラスともそうですね。とにかく人の話を聞いて、コミュニケーションをはかっていくことを心がけていこうと思っています。
田中 次に業界のことについてですが、働き方改革ですとかダイバーシティのことなど問題が山積している中での取組みをお教えいただけますでしょうか。
寺田 社員の皆さんには健康で働いてもらわないといけませんので、とにかく過重労働は何がなんでもやめていこうという話はしています。一方で、早く一人前になりたいという声もあるわけでして、それは効率よく仕事をして自分で時間をつくってもらうということですね。
若手の人材育成については、現在新入社員は10カ月間、現場や内勤、富士の教育センターやお寺へ合宿に行かせるなどしています。東京で学生だったのにいきなり東北の山のトンネルに勤務となるとギャップが激しいですからね。今、2年終わったところですが、軌道に乗りつつあります。
田中 10カ月間というのはとても手厚いですね。最近ですと、大学の学科によっては構造力学や土質力学を勉強しない学生さんも増えていますよね。
寺田 そうなんです。だから大学5年生みたいな感じですね。
田中 女性技術者についてはいかがでしょうか?
寺田 女性の新卒も積極的に採るようにしてはいるのですが、人数的にはまだまだ応募者数が少なくて、採りたくても採れないというのが現状ですね。ただ入社してくれる女性は非常に優秀ですし、頼りになっています。
土木技術者であることに誇りを
田中 最後に若手技術者へのメッセージをお願いできますか。
寺田 私は郷里が青山士と同じ静岡県磐田市ということもあって、彼の言葉にある「人類のため、国のため」という言葉が好きなのですが、この言葉からもわかるように、土木技術者というのは大変やりがいのある職業だと思っています。
誠実にモノをつくって、社会に貢献してほしいですね。青山士の恩師である内村鑑三が『後世への最大遺物』という講演記録を残しています。恐らくこれを読んでから青山は「自分が何になるのか」ということを考えて、パナマ運河に行ったのではないかと思うんです。
その人生がどのようなものであったかは定かではありませんが、やはりやりがいのある仕事だったことに間違いありません。ですから若い人にも土木はやりがいのある職業だという誇りをもって仕事をしてもらえればと思っています。
田中 本日はありがとうございました。
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