塗装工事は「糖尿病」のようなもの
――分野的にもエリア的にも仕事のバランスが良さそうですね。
池田社長 そうですね。ただ、防食の仕事は、自然災害にスゴく弱い業種なんです。例えば、2018年に北海道胆振東部地震が発生したときには、護岸工事などの災害復旧工事のほうの予算が増えます。塗装工事は、やらなければいけない工事ですが、急がなければいけない工事ではないんです。人間に例えれば、骨折(災害復旧工事)と糖尿病(塗装工事)の違いですね(笑)。
――国内の造船業は近年、不況のようですが。
池田社長 確かに日本の造船業はシュリンクしています。造船業には、新しい船をつくる仕事と既存の船を修繕する仕事がありますが、新しい船をつくる仕事は、日本の造船技術を真似た結果、今は中国や韓国の力が上で、受注競争が激しい状況です。それに加えて、新型コロナウイルスの影響により、今は新しい船の買い手がつかなくなっています。造船業の売上シェアの大部分は船の新造なので、非常に厳しい状況といえます。
ウチが塗装をやるのは修繕船ですが、修繕船は法定点検があるので、今のところ仕事量が大きく減ったということはありませんが、新造が減って、日本のシップヤードの経営が厳しくなると、修繕船の仕事にも影響が出てくる可能性はあります。どうしてそうなるのかわかりませんが、造船と橋梁の景気はリンクしていないと体感しています。どちらかが不況のときには、もう一方は景気が良かったりすることが今までは多かった気がします。
――プラントのほうはどうですか。
池田社長 プラントは石油備蓄基地がメインですが、こちらもコロナの影響で、原油価格が暴落しており、石油会社に影響がでてきそうです。既存在庫の仕入れ値を下回る取引価格になっているため、これからどのくらい石油の取引価格が戻るかによると思います。石油プラントにも法定点検があるのですが、かなり厳しい状況を想定しておいたほうが良いかもしれません。コロナ収束後の世界経済に直結する分野なので注視していくしかなさそうです。
「こんなにブラストに詳しいWJ業者はウチ以外いない」
――今はどのような工法を使っているのですか。
池田社長 ウチは、ブラスト以外では、ウォータジェット(WJ)とIHメインに使っています。IHはまだ少ないですが、WJはかなり実績があります。WJはコンクリートを削る技術で、日本製、ドイツ製、アメリカ製の機材を使っています。IHは、電磁加熱で塗装を剥離する技術で、ノルウェーのベンチャー企業の機械(RPR)を使っています。ブラストの機材は、日本製、アメリカ製、シンガポール製のものを持っています。
普通、使用するメーカーはどこか1つに統一するのですが、メーカーごとに機械の得手不得手があるので、ウチではあえて複数のメーカーのものを使っています。WJとIH両方使っている会社は、今現在日本でウチだけです。通常のブラストをやっている会社は、だいたいWJは苦手なんですよ。逆に、WJをやっている会社はだいたいブラストが苦手なんです(笑)。というか、お互いの技術を知らないんです。
ただ、WJとIHのメンテナンスは厄介です。WJは「1日1回壊れる」と思ったほうが良いです。これがネックで、多くの会社がWJに手を出せないんです。施工会社が自分たちで直すのが大前提の機械です。
――それぞれ自分たちが長年使ってきた工法に対する思い入れが強いんでしょうね。
池田社長 そうです。ただ、ウチにはそういうのはないんで。効率の良い工法を考えて、使うべきだというスタンスでいます。
――特定の工法に凝り固まると、問題になりそうですね。
池田社長 そうなんです。「この工法だけでなんでもできます」と営業する塗装会社が出てきちゃうんです。なんでもできるブラスト工法なんて、世の中に存在しませんから。
――WJとIH両方持っているのは、効率が良い工法だからですか?
池田社長 ウチとしては、素地調整や塗膜を剥ぐ上で、いろいろなやり方ができるようにしておこうという考えがあるんです。ブラストしか持っていないと、ブラストでできることしかできません。WJとIHなどいろいろな工法を持つことで、いろいろな仕事ができるようになるんです。ブラストとWJの組み合わせとかも提案できるわけです。
――それは他社には真似できないですね。
池田社長 言い方を変えれば、「こんなにブラストに詳しいWJ業者はウチ以外いない」です。
仕事上、数量計算に素地調整ということを何気なく記載していたことに反省
現場がどのような作業をしているのかをもっと知らなければならないですね。
また、ブラストの品質管理等の規格が不明確であることは意外でした。