海上自衛隊で勤務していた頃、主に国有財産である施設(建築物、工作物等)の維持管理の主担当部署にて勤務していました。
海上自衛隊では、施設の使用者も適切な維持管理をするよう内務規定で定められています。今回は、実際にあった施設管理におけるトラブルをご紹介したいと思います。
ボラードが曲がってる?
南の島の部隊で勤務していた時のことです。基地の電気主任技術者の技官さんが、現場から帰ってきて私に報告に来ました。
「桟橋の燃料給油口の保護のためのボラード4本のうち2本が、根元から30度くらい曲がっていました。停泊している船のやつらに心当たりはないかどうか聞いたけど、だいぶ前からあの状態だ、としか言わんのだわ。知っていたんだったら連絡しろって話だよね。燃料配管に当たっていないからボラードの機能は果たしているけど、直さんといかんね。折れてからでは遅いわ。あれは絶対に車がぶつかって曲がっているね」
私はその報告を受け、現場を見に行きました。確かにボラードは曲がっていました。停泊している掃海艇の艇長に話を聞きに行きましたが、技官さんが聞いた答えと同じです。私はこう言いました。
「桟橋の使用者も内務規定上、施設の不具合や損壊をした場合、速やかに関係部署に報告する義務があります。ましてやだいぶ前からあの状態であれば、直さなければ何かの拍子に折れて、燃料配管にあたって漏油の原因になる可能性もあります。ボラードは、一時的に機能を果たしてくれましたが、直さないことにはその機能の保持は不可能です。以後、部下にもこのことは徹底してください。」
そう告げてから現場を離れました。船乗りは、自分の乗っている船は大事にしますが、それ以外のものについては意外と無頓着です。
船乗りに関わらず、施設の維持管理は自分とは関係ないと思っている隊員も多く、陸上勤務者にも同じことが言えます。
「Think Unthinkable!(でもやり方は教えない)」ですよね。