大型パネルは自由度の高い木造建築にも導入できる
――新たに、建築家・伊礼智氏が設計した住宅で大型パネルを導入されたが、その経緯は?
市東 2018年12月に、早稲田大学創造理工学部とウッドステーション株式会社が、早稲田大学西早稲田キャンパス校内で木造大型パネル住宅公開施工実験を行いました。
その後、私たちが木造躯体一式を千葉県旭市へ移築し、見学会を7月29日に開催しました。しばらく、モデルハウスとして使う予定です。

早稲田大学西早稲田キャンパス校内で木造大型パネル住宅公開施工実験を行った
「大型パネル=プレハブ」とイメージされている工務店も一定数おりますし、ある程度形が決まっている建物には導入できても、自由度の高い建物には導入できないと思われている方もおりますが、プレカット工法に対応出来る建物であれば施工可能です。
木造建築の95%以上はプレカット工法ですから、自由度の高い木造建築でも大型パネルは対応可能なんです。今回の見学会で、自由度の高い建物でも大型パネルを導入できると確信を持たれた方も多かったですね。

移築された大型パネルを採用した住宅
――大型パネルの展望については。
市東 かつて木造軸組工法は「手刻み」が基本でしたが、1980年代以降はプレカット工法がその地位を確立しています。今は、大型パネルは珍しい工法と受け止められていますが、令和の時代では一気に普及していくと予想しています。これから、職人や大工が不足していきますから、その中でも木造住宅を供給するためには、大型パネルは必然的に導入が増えていくでしょう。

大型パネルの施工風景
また、大型パネルの普及が進めば、重い壁材を持つような肉体労働から、優れた技術への研鑽にシフトしていきます。若い頃の職人は給料も休みも少ない。他業種で働いている友人などから給料や休みの話を聞くと、「なんでこんな苦労してまで職人をやらなければならないのか」という気持ちも沸き上がってしまいます。職人という働き方を長続きさせる意味でも、大型パネルの導入は必要だと思います。
――市東さんは、大型パネルユーザー会「みんなの会」の事務局長もつとめられているが。
市東 高度成長時代以前は、家を建てる際は地元にいる大工さんに依頼をしていたはずでした。しかし今では、ハウスメーカーに代表されるように、組織として住宅建築を手掛ける会社に依頼することが圧倒的に多くなっていますもちろん、今でも一人親方のように自分で仕事を請け負う人もいますが、絶滅危惧種に近い存在です。
彼らは建築工事に対してはプロですが、資金計画やローンのこと、各種補助金の活用の仕方、法律的な変更点、断熱性などの最新の技術的知識等には疎い方も多いんです。すると、知識不足のために失注している場合もあるわけです。そういった困っている大工さんをサポートするのも「みんなの会」の役割です。
塩地社長から「大工の知識は、工務店やハウスメーカーに負けないレベルに達しているべき」と言われたことがあります。工務店はデザインやお客様対応など、新たな知識をどん欲に勉強しています。受注するためには知識武装も必要です。
工務店や設計事務所にはいろんなネットワークがありますが、大工はそういったネットワークに行く機会がありませんし、取り残されてしまっています。
みんなの会が拡大していき、各地方で地元の課題を大工さんや工務店が互いに共有し合える場に成長していければと思っています。
※みんなの会ホームページ:https://oppartner.jp/minnanokai/
※「あさひの家」完成見学会(10/28開催):https://oppartner.jp/minnanokai/news/219/
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