日本で実績を積み、いずれ世界で戦いたい
「3D点群データのポテンシャルはスゴイものがある。いずれ林業や建築などにも手を広げたいと考えている」と明かす。
林業について言えば、この業界では現在、林野庁が「スマート林業」を打ち出し、ICT化による森林の可視化による効率経営を目指している。逆に言えば、従来の林業は効率が悪かったことを物語っている。「従来の森林台帳のつくり方は、例えば、10haの山の場合、1haの木の数を数えて、それを10倍するというもので、不正確際まりないものだった」と指摘する。
ここに3D点群データを入れれば、ピタリとハマる。建設現場では除去対象となる樹木データだが、林業向けに、逆に樹木データを1本ずつ抽出。直径や樹高、樹冠などを自動計測した上で、森林台帳としてアウトプットする機能も開発中だ。「林業は、テック系ベンチャーがあまりフォーカスしない業界だが、どの情報を抽出するかが違うだけで、3D点群データの活用という意味では、建設業などと本質的な違いはない」と話す。
「弊社のメインの市場はあくまで地域の建設業だ。そしてここはブルーオーシャン。いくらでも入り込む余地がある。アーリーアダプターが思った以上にいたのは、嬉しい誤算だった。日本で実績を積んだ後は、いずればグローバルに戦いたいという思いがある。世界的には『メイドインジャパン』のブランド力はまだまだ強いのだから」と目を輝かせる。
酒豪の遺伝子を持つ男
最後にざっと、宮谷さんのキャリアをまとめておく。
宮谷聡さんは宮崎県延岡市出身。小さい頃から天体観測が趣味で、宇宙飛行士になるのが夢で、東京大学の航空宇宙工学科に進学する。大学では、JAXA(宇宙航空研究開発機構)との共同研究として、小惑星探査機はやぶさ2プロジェクトに携わった。
「宇宙航空業界はアメリカやヨーロッパのほうが進んでいる」ということで、ISAE-SUPAERO (Institur Supérieur de l’Aérpnautique et de l’Espace)というフランスの大学院に留学。フランス本社のAirbus(エアバス)に入社する。エアバスではドローンプロジェクトに携わった後、シリコンバレーのAirware、イスラエルのAiroboticsなどのスタートアップに移籍し、TLS、レーザースキャナーなどのソフトウェア開発プロジェクトに関わった。
Airoboticsで香港生まれのオーストラリア人で、GISデータ分析の専門家であるホン・トラン氏と出会い、2019年10月、トラン氏と共同でスキャン・エックスを設立する。
スキャン・エックス設立後、日本各地を飛び回りながら、ソフトウェア開発も行う多忙な日々を送っている。顧客からは「宇宙航空工学出身なのに、なんで建設業に来たの?」としばしば聞かれるが、「スキャンする範囲が数千kmか数m違うだけで、やることは地球も建設現場も基本的には同じ。3Dデータを扱うという点では、業界の違いをあまり意識したことはない」と言う。
好きな言葉は「Pressure Creates Diamond(宮谷氏による意訳:人はプレッシャーによって成長する)」。もともとあまりプレッシャーを感じるタイプではなかったが、スキャン・エックスの代表になってからは、すべて自分の責任になるので、「プレッシャーを感じることが増えた。失敗もした。その分、自分が成長したと感じることが多くなった」と言う。
これは余談だが、宮谷さんは「どんなに酒を飲んでも、酔わない」らしい。かなり飲むと顔は赤くなるが、酔っ払うことはないそうだ。宮谷さんだけでなく、家族全員あまり酔わないと言う。酒豪の遺伝子を持った一族のようだ。
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