自由度の高い設計が実現するFMT構法
――FMT構法の概要は?
石川さん 木と鉄骨によるハイブリッド構法で、壁や梁などの構造要素が空間内に出てくることが少ない、シンプルで頑丈な造りとなっています。平面的に配置された壁が少なく、出っ張った梁がないスッキリとした構造体を実現し、フラットな空間ができあがります。
また、外観デザインについても、各層を捻ったような動きのあるデザインやキャンチを活かした箱体が飛び出したデザインなど、自由な建物形態が実現できます。
構造壁と構造スラブは、ヒノキを使った集成材厚板パネルとなっています。松を使うとヤニが表面に出て、ソファなどの家具を汚す可能性もあるので避けました。ちなみに、「ROBRA」の第一号モデルハウスを東京・世田谷区にオープンしていますが、高知県産材のヒノキを使っています。
また、鉄骨梁は通常、床を支えるため通常下にありますが、上に配置したことが大きな特徴です。室内空間で梁が出っ張るとすっきりしませんし、天井のあらわしを考えた時に、下に梁材があると途切れてしまうので、それで上に配置しました。
接合部では基本、ボルトやドリフトピンなどを使用しています。2×4工法では、釘やビスを多用します。ただ、今は職人不足が進行しているので、めり込みがないように釘を使うと施工管理に時間がかかります。その点、接合の部分はボルト、ナット、ドリフトピンで納めるほうが施工管理をしやすいメリットがあります。
木造軸組工法や2×4工法のように小断面を連続的に並べるのではなく、小断面部材を束ねた高い性能を持つ大断面部材をランダムに点在配置することで、効率的でシンプルな構造架構と自由な建物形態が実現しました。
さらに、大断面部材の性能を最大化する鉄骨部材のハイブリッド化で、シンプルな構造架構でありつつも、堅牢な建築物ができあがりました。これら様々な観点をまとめ、2019年10月に特許も取得することができました。
デザインに感度の高い人に訴求
――「ROBRA」は、やはり富裕層向けになるのでしょうか。
石川さん 従来の木造注文住宅よりも価格的には高くなるので、やはり富裕層向けになるかと思います。コンセプトは、「木造をアートにする」ことですから、富裕層の中でもデザインコンシャスの高い方向けになります。
従来の注文住宅では満足できない方は、設計事務所にRC造建築を依頼されます。しかし、設計にアンテナを張っている方は、21世紀は木造の時代が来ているということをよく理解されています。感性が高く、意匠にこだわりたい方にお届けできればと考えています。
――「ROBRA」第一号モデルハウスが東京・世田谷区に誕生しましたが、反響は。
石川さん 9月5日にグランドオープンし、現時点で2カ月が経ちましたが、反響は非常に高く、設計をお願いしたいという案件も5~6件あります。モデルハウスの訪問者数も多く、お金にゆとりがあり、設計に意識が高い層から大きな反応がありました。
モデルハウスの形状のデザインも大胆にしましたが、当社の技術力のフラッグシップをオープンにしたいと思いがありました。このモデルハウスのデザインそのままを建てるお客さまはなかなかいらっしゃらないと思いますが、ここまでの設計自由度が実現できることを見せたかったんです。
――設計はどの部署が担当される?
石川さん 当社の「オーダーグラン設計室」のメンバーが設計対応します。自社の設計メンバーをどれだけ高く評価するかは難しいですが、木造建築の常識を覆すデザインと、高い設計技術により、お客様の要望にこたえる設計が実現できると自負しています。
――施工はいかがでしょうか。難易度も高そうですが。
石川さん 鉄骨造のような作り方なので、ボルトとナットの接合部分を間違えなければ、実はそれほど難易度が高い施工ではないんです。工事については鉄骨鳶を抱えている協力会社と連携して行います。