渡河部が終わって、まず「ホッとした」
――この現場の現場代理人になったのはいつからですか?
長尾さん 今年の4月からです。今の現場には2018年4月に赴任しました。
――非常にタイトな工期なので、間違いなく大変な現場だったと思うのですが、渡河部の工事が完了して、率直な心境は?
長尾さん 完了期日が定められている中で、基礎工、橋脚工、上部工という3つの大きな工事を無事期日までに完了できました。まずは「ホッとした」という気持ちが大きいです。
期日までに時間的な余裕がない中、当初から24時間昼夜施工でずっと進めてきた現場です。安全面、品質面で一つでもトラブルがあると、クリアできないという高い目標でした。そこをみんなで力を合わせてクリアできたことにホッとしています。
――ひと山越えた感じですか?
長尾さん そうですね。ただ、インクラインの解体など危険度の高い作業はまだまだ続きますので、気を抜くことなく、緊張感を持って仕事に取り組むことを心がけてやっています。
――来年3月頃開通に向けて、進捗などは?
長尾さん 今(10月上旬)は、橋面工に取り掛かっているところで、高欄や防護柵、照明灯を付けたり、排水関係や検査路などの橋梁付属物を1月中頃までに仕上げて、舗装業者に引き渡す見通しです。
――新型コロナ対策も大変だったでしょう?
長尾さん そうですね。コロナによって、想像していた以上に大きな影響が世間的に出ています。われわれの現場は、先ほども言った通り、一瞬たりとも工事を止めるわけにはいかない状況です。その現場で、一人も感染者を出さずに工事を進めていくことに対しては、非常に神経を使いました。対策としては、特別なことをしたわけでなく、一般的に言われている対策をマジメにやってきました。
具体的には、日々の体調管理ということで、社員はもちろん、下請けのみなさんも含め、1日4回の検温を実施しています。あとは手洗い、うがいの徹底、マスクやフェイスシールドの配布などです。
在来工法を組み合わせ、急速施工を実現
――タイトな工事にチャレンジするということで、急速施工のために様々な工夫を施してきましたね。
長尾さん はい。まず2台のインクラインを黒川両岸に設置しました。最大積載量は60tと巨大なインクラインを設置することで、安全で効率的な資機材の運搬が可能になりました。強風対策のためクレーン作業を極力減らしたいというねらいもありました。
橋脚で言えば、オートクライミングシステム(ACS)工法を採用しました。ACS工法は、足場と型枠を一体化させたユニットを油圧駆動装置で上昇させるジャンピングフォームのようなものです。
上部工については、600tmの超大型移動作業車を使用しました。通常の3倍の能力を持つ機械を採用することで、順次張り出していく橋桁のブロック数を21から15に削減しました。
これら過去に実績のある工法を組み合わせることによって、トータルの工事日数を大幅に削減することができました。インクラインについては、橋梁工事での実績は数えるほどしかありませんでしたが、現場が急峻な谷地形で強風が吹くことから、効果が大きいと考え、導入しました。インクラインは当初の技術提案にはなく、受注した後に提案し、採用いただいたたものです。
――人海戦術ではなかったのですか。
長尾さん もちろん人は増やしましたが、あからさまな人海戦術に出たわけではありません。機械の大型化などによる省力化が基本です。プレキャストなどの新しい技術は使わず、あくまで在来工法をメインに構築しました。
私もこの現場に携わっていました。橋梁の現場もかなり行きましたがこれほど大きな現場は初めてでした。それだけに開通が楽しみです。
私も生コン納入会社の一員として携わらせて頂きました。大成建設の監督さんたちはもちろんのこと、下請けの業者の方々みんな紳士な対応で、現場の雰囲気の良さがとても伝わってきました。打ち合わせも毎回スムーズに進みましたし、初めての打設方法、難しい配合などで難題ばかりでしたが、大成建設さんからの支援や協力で、大変良い仕事をさせていただきました。感謝に堪えません。地元の人間としても、開通が楽しみでなりません。
施工会社は縁の下の力持ちで、一般的に評価されることが少なく、談合だとか、公共工事の無駄遣いとか負の面ばっかり強調されることが多いのですが、こういった記事で施工会社が評価されるのはとても良いことですね。工事関係者の皆様本当にお疲れ様でした。これで南阿蘇方面へのアクセスがとてもよくなり、地域の皆さんが元気になられるといいですね。他県から応援します。