構造材トラスを分割するメリット
――開発の背景は?
島村さん 当社は首都圏をメインに施工エリアを定めていますが、必ずしも道路条件が良好な場所ばかりとは限りません。旗竿地のように道路が狭く、部材搬入が厳しい場所では、大工さんや運送会社の方々にご協力をいただきながら、可能な限りお客様のご要望を叶えられるよう設計・施工を行ってきました。
しかし、「どうしても大空間をつくりたい」とご要望いただいても、敷地条件によっては大空間はできないとお話をせざるを得ないこともありました。それでも頑張って大空間をつくろうとすると、大勢の大工さんに来てもらい、大きく重い材料を手運びしてもらわなければならず、危険も伴います。
そこで、お客様の要望を叶えるため、施工面での安全性を向上させるために、長尺の構造資材搬入が難しい敷地条件でもより大空間を構成できる構造部材として、トラス床根太『スペーストラス』を開発・商品化することになりました。
――技術的なメリットは?
島村さん 構造材トラスを分割するメリットは、搬入時の部材を短くできることです。そのため、搬入車両も小型で済みます。道路に高低差があったり細い道の場合は搬入が困難ですが、『スペーストラス』は搬入時に小回りが利くため、敷地前に搬入車両をつけることができます。大工さんにとっても荷揚げ荷下ろしする際の重量も半分になるため安全です。
分割した後も中央の金物で強固に連結し、現場で一本の強い材料として構成でき、大スパンを飛ばすことができます。従来は、当社独自の構造部材を使っても7P(6.37m)のスパンの構成が空間の限界でした。
――試験棟を施工された方の反応は?
島村さん 試験棟については、三菱地所企業グループで建築・製造・加工・販売を行う株式会社三菱地所住宅加工センターの敷地内で建設しました。トラスの連結は、最初は少しずつ時間を掛けてやってもらいましたが、2回目からは2~3分で連結できるようになりました。
また、検証に参加された同社とお付き合いのある工務店の方々は、材料をあげる時に「あ、軽いね。これなら2人で持てるよ」という声をいただきましたし、大断面の部材はしっかりと持つことが困難で引き上げるのに危険を伴いますが、スペーストラスはウェブ材に手を引っ掛けることができるため、荷揚げが非常に楽だとというお話もいただきました。
従来、7P部材を荷揚げする際はクレーンが必要でした。今回のトラスは分割することで、少人数で運ぶことが可能です。