グラスウールよりもセルロースファイバー
――「デコスファイバー」の開発の経緯は?
田所憲一氏(以下、田所氏) デコスの親会社、株式会社安成工務店が、太陽熱で床暖房しながら換気する「OMソーラーシステム」のFC(フランチャイズ)に加盟したことがきっかけです。
「OMソーラーシステム」は設計段階で、どのくらいの室温になるかのシミュレーションができるのですが、最初の1棟めに施工した物件を冬場に実測すると、シミュレーション通りに温度が上がりませんでした。要は、家の中が寒かったということです。
原因の一つは窓の性能が不足していたこと、もう一つは当時、断熱材として使用していたグラスウールが壁の中にきちんと隙間なく施工出来ていなかったためです。窓は性能の良い製品に取り換えれば解決出来ますが、グラスウールは隙間なく詰めることが技能的に難しいという声が出てきました。
そうすると断熱材を変える必要が出てきたため、日本中からさまざまな断熱材を取り寄せ、比較検討を行いました。その中で最も良さそうだったのがセルロースファイバーでした。セルロースファイバーは、アメリカ発祥の断熱材です。もともとは新聞紙がもったいないので、それを有効利用しようという発想から始まったそうです。1棟めの現場で施工済みのグラスウールを撤去し、セルロースファイバーを吹き込んだところ、シミュレーションに近い温度になったんです。
これきっかけとなり、社長もセルロースファイバーを気に入り、断熱材はグラスウールからセルロースファイバーに切り替えることになりました。
工務店の社長がセルロースファイバー製造を決意
田所氏 最初は他社製品を採用していました。ところが使いたい防火構造認定や省エネ基準を満たしていない製品が多かったんです。メーカーには認定を取得してほしいとお願いしましたが、「手間とカネが掛かるから」と断られてしまいました。「だったら、セルロースファイバーを自社開発しよう」ということになったんです。
そこで元々、安成工務店の不動産部門の子会社だったデコスを断熱材メーカーへ業態変更しました。自社工場もつくり、様々な認定も取得しました。「デコスを安成工務店のみで独占するのはもったいない」ということで、今では「デコスドライ工法」として全国展開しています。販売にあたっては施工代理店制度を設け、現在70社が加盟しています。

原材料の8割が新聞紙でできている断熱材「デコスファイバー」
――販売は施工代理店に限定?
田所氏 そうです。普通の断熱材メーカーは商社に製品を卸したら、そこで終わりです。しかし、デコスは顔が見える施工代理店にしか売らない。なおかつ、木造住宅内部結露被害20年保証制度も行っているため、最終ユーザーまで分かっています。ですから、他の断熱材メーカーとは、販売方法が異なります。
――商社に売り切りのほうが商売的には楽だと思いますが、そこまで徹底したワケは。
田所氏 一番は、施工です。住宅の断熱施工は、正しい施工が欠かせません。断熱材と施工をセットで担保できるかが大きなポイントです。断熱材は、大工さんと専門業者が断熱施工する二つのケースがあります。大工さんにまかせると、断熱材を入れた後、石膏ボードを張る作業を行うのも大工さんです。適当な入れ方をして塞がれてしまっては見えないですから、チェックできません。
また、現場監督も正しい断熱施工を理解していない場合もあり、最悪いい加減な施工をしても分からないのです。確かに商社に売れば楽ですが、断熱施工が正確にできる人材の育成にも重点に置きました。ですから、材料と施工で保証がつけられる制度としています。