断熱性能確保には施工が重要
――「デコスファイバー」を使った「デコスドライ工法」の特長は?
田所氏 壁の中には配線、配管や補強金物などいろんなものが入っています。そこに隙間なく断熱材を入れるというのは至難の業です。どうしても必ず隙間ができます。もちろん、手詰めできれいに詰め込む職人もいますが、かなり大変です。このくらいであればOKという判断もまちまちです。
しかし、隙間があると断熱欠損という現象が起こり、結露が発生します。そうなると、カビが発生し、木も腐食し、シロアリが木材を食べる等いろんな弊害が起こります。断熱材を施工する時は、隙間をつくってはいけないというのはこれが理由なのです。
そこで、断熱欠損をつくらないために「デコスドライ工法」を開発しました。まず、「デコスファイバー」は、新聞紙を綿状にして薬剤加工したものです。独自の機材や熟練した職人の施工により綿状の「デコスファイバー」を水や接着剤を一切使わず乾式で吹き込み、手の届かない場所にも充填出来ます。マットやボード状の断熱材施工とは異なり、断熱欠損がなく、設計通りの断熱性能を発揮します。
しかし、パンパンに入れすぎるとその後、大工さんが石膏ボードを張れなくなります。その点にも配慮して、いい塩梅で吹込みます。

研修を受け熟練した施工者が「デコスドライ工法」を使用
――施工について注意している点は?
田所氏 デコス社員が自分たちで施工して、そのノウハウをマニュアル化しました。施工技術を習得するにあたっては、山口県・下関市に研修施設がありますので、そこで施工者は一週間しっかりと、座学、実技と現場研修を受けてもらい、合格した方に免許を発行しています。そして一棟目の時は、施工指導に行き、一緒に施工します。そこで復習しつつ、しっかりと施工出来るようにしています。
熊本地震や豪雨災害後の木造仮設住宅でも採用
――熊本地震の被災地での木造仮設住宅にも、「デコスファイバー」が導入されましたが。
田所氏 東日本大震災での仮設住宅は、寒さだけでなく、結露が発生したためにカビが蔓延し、それを吸い込んだ住民が体調を悪くされた事例もありました。
熊本地震の際は、被災地での木造仮設住宅の建設を主に担ったのは、県内の60社以上の地域工務店が参加する一般社団法人熊本工務店ネットワーク(KKN)で、同協会の会長を務める株式会社エバフィールドの久原英司社長が、デコスを標準採用されていました。
久原社長は、東日本大震災の事例もご存知だったので、「寒くなく、暑くもない、心地よい仮設住宅を建設したい」と国と県に折衝され、デコスを導入していただくことになりました。まず、50棟を木造で建築しデコスを導入しましたが、入居された方からの反響も大きく、最終的には190棟563戸の全棟に標準仕様していただきました。
その後、2020年7月熊本豪雨災害でも、KNNが建設を担当した仮設住宅612戸すべてに、デコスを採用いただきました。

熊本での仮設住宅
――今後については。
田所氏 今まで断熱材は冬対策メインでしたが、これからは地球温暖化もあり、夏に強い「デコスファイバー」をPRしているところです。元々、セルロースファイバーは木からできています。木から紙、新聞紙となっていて、セルロースファイバーはその新聞紙をリサイクルしたものですから、素材特性は木と同じです。
木は、湿気を吸ってためて吐く”調湿性”を持っています。夏場、室内の湿度が下がれば、より涼しく感じるようになります。エアコンのドライ運転をしているイメージですね。ですから、調湿性を活かすデコスは夏場に適した断熱材なのです。昨今、問題になっている夏型結露対策としても提案しています。
――夏でも結露するのですか?
田所氏 今、在宅勤務が増えていますが、夏になるとエアコンがフル回転し室内は涼しいですが、その一方で外は暑い。この温度差によって壁体内部の防湿フィルムでも結露が発生します。昨年の夏頃から、この夏型結露(逆転結露)は大きな問題になっています。これから工務店業界は夏対策に力を入れていることもあり、当社もシフトして行きます。
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