地域建設業は365日、地域を守っている
――放射線量が高く、命の危険もある中で、不眠不休で復旧工事に邁進できた理由は。
鈴木専務 それは地域建設業としての使命感以外の何物でもないですよ。企業や社員、あるいはそのご家族の方が被災された中でも、地域を守るという強い使命感が原動力になっていたと思います。
ただし、地域建設業者は災害時以外も普段から地域を守っています。大きな災害が発生した時には、地域建設業者は「地域の守り手」としてクローズアップされますが、普段から日常の安全な生活を守ることが基本としてあり、その上に大震災、風水害、土砂崩れなどの緊急時に、地域建設業者はそれ以上の努力をしているということです。
毎日、道路パトロールをし、穴が空いていれば応急措置を施し、交通の安全を確保しています。今年の冬も雪国である福島県では豪雪がありましたが、除雪作業でも大きな役割を担っています。気象状況を調べながら、夜中から待機し、雪が降れば出動し、朝には皆さんが通勤できるように、また消防車等の緊急車両が通行できるように、道の安全を確保することも重要な仕事です。
決して目立つことではありませんが、地域建設業は365日、地域を守っているのです。しかも、それは地域の実情を十分知っていて、熟練したノウハウ、技術・技能がないとできないことなんです。こうした長年の努力で地域を守れていることを理解してほしいと思います。
――他にも、東日本大震災で忘れてはならない作業の一つに「除染」があるが。
鈴木専務 福島県での除染は、学校、公園などの公共施設から農地、個人の住宅や敷地の土を除去する作業が3~4年続きました。当初は、除去した土を仮置きせざるを得ず、用地の確保に苦労していました。その後、仮置きした土は順次、双葉町・大熊町の中間貯蔵施設に移管しています。
ただ、当初は除去した土の輸送先が決まらない状況下で除染作業が進められており、やむなく敷地や河川の中に仮置きすることで一時しのぎをするなど、難しさがありました。その後、中間貯蔵施設の設置が決まり、二次輸送で土を搬出する作業が4~5年前から開始しました。今は、各地に埋め立てられた土を中間貯蔵施設に運搬する作業が若干残っている状況です。
復興工事の次のステージ
――復旧工事が完了し、復興工事も次のステージに入っていますが。
鈴木専務 大震災を受けて、福島県と各市町村が復興計画を策定しました。観光・商工・農業など多岐の分野に渡ります。地域建設業としては、その復興計画のインフラ分野の計画に基づいて現在も続いている海岸防潮堤などの整備のほかに、復興道路の象徴である「ふくしま復興再生道路」のネットワークを整備しています。
福島県は、甚大な被害を受けた浜通り地区を復興させることが、県全体の復興につながります。また一方で、県全体の振興のためには、被害が少なかった会津地方とのネットワークを深化させるなど県全体で取り組む必要もあります。
――これからの10年をどう見据えていくのでしょうか。
鈴木専務 浜通りの復旧工事は終わり、今後の復興工事関連は、積み残している中通りや会津地方のインフラ道路の整備になります。復興予算も2021年度は、前年から8割減となり、震災事業で位置付けられた復興計画の工事は間もなく終わります。
県の公共事業予算が減少していく中で、国が「防災・減災、国土強靱化のための3か年緊急対策」に引き続き、「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」を策定したので、まずはこれに全力で取り組んでいきたいと考えています。
「防災・減災、国土強靱化のための5か年加速化対策」は、政府全体おおよそ15兆円でそのうち建設関係では9兆円。5年先までを見据え、予算を伴った事業量を計画に位置付けたことは先の見通しがついてとても分かりやすく、業界としては歓迎しています。
具体的にどういった工事なのかはこれからですが、阿武隈川をはじめとする河川の防災強靭化などです。これは相当な規模で実施すると聞いています。その他、インフラの更新・修繕の予算がつけられるものと期待しています。