施工の神様 powered by 施工管理求人ナビ
  • 施工の神様とは?
  • 記事掲載・取材をご希望の方へ
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設用語

【福島建協】原発事故下の復旧作業から得た、3.11の教訓とは

  • インタビュー
公開日:2021.04.08
  • シェア
  • Tweet
  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • 0 コメント
  • メールで共有

大規模予算化された「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」

――「阿武隈川緊急治水対策プロジェクト」が正式に決まり、大規模予算がつけられました。また、国、地方自治体などあらゆる関係者の流域全体で治水を行う「流域治水」に転換していく中、地域建設業としても河川防災について展開していく?

鈴木専務 ええ。流域全体で河川を管理するという考え方はとても重要です。防災・減災の計画は行政単位で行いますが、自然災害に向けた防災・減災は流域全体で検討することは画期的な考えです。上流と下流の市町村の流域が同じ考えで自然災害に立ち向かっていくことになり、これからの新しい時代に向けた防災・減災の考え方にマッチしています。

防災・減災はハードとソフトの両輪で進めなければなりません。ハードは分かりやすく、地域建設業の仕事に直結しますが、ソフト面では、どのくらいの風水害となるのかなど情報の取得が重要になります。地域建設業は点検・パトロールとして現場に行き、目視して、情報を国や地方自治体に提供するなどの役割があります。

特に阿武隈川は長く広い川ですから、地域建設業が流域全体の守り手になることを考えると、関係機関の情報共有や連携が大切です。ですから、どこかに災害情報を一元化する必要があります。通常の災害では特に問題になることはありませんが、各地域の建設業の能力を超えた災害が発生した場合、広域的にどのように連携するかが最大のリスク管理になります。

たとえば、広域かつ大規模な河川氾濫をもたらした「令和元年東日本台風」。この災害の教訓から、これからは上流と下流のマンパワーや資機材の融通や情報の共有がますます重要になってくるでしょう。

「令和元年東日本台風」が郡山市を襲い、阿武隈川が越水したもよう / 出典:東北地方整備局

「令和元年東日本台風」が郡山市を襲い、阿武隈川が越水したもよう / 出典:東北地方整備局

――こうした大災害に対応するために福島県建設業協会としてはどのような対応を。

鈴木専務 震災以降、BCP(事業継続計画)を充実させました。具体的には、資材の備蓄は当然のこと、広域かつ大規模災害でも地域建設業が連携しながらいかに活動するかもBCPにまとめています。東日本大震災でも資材の融通により、地域間の連携が進み、被災地へ支援など効果も出ています。BCPに基づく広域支援体制の構築などがとても大事であると思います。

――災害に対応していくうえで、地域建設業の役割が重要ですね。しかし、(一社)全国建設業協会(全建)の調査では、会員企業不在エリアが増加し、いわゆる災害対応空白地帯のリスクも高まっていることに懸念を抱いています。

鈴木専務 同調査での一番深刻な地域は北海道ですが、次は福島県です。現在、59市町村がありますが、その中で1社のみ存在する地域が15町村、会員ゼロが13町村です。つまり、会員企業が存在しない地域で災害が発生すると、別の市町村の会員が出動することになります。物理的には距離の問題で、何十kmも離れていると初動体制は遅れますから、企業が各市町村に存在することが災害対応の面からも望ましいことです。

ただ、インフラが整備された町村ですと仕事も少なくなります。昔は地域建設業が存在していた市町村でも倒産、休廃業・解散などで今は存在しない地域もあります。会員ではない地域建設業も運営しているところもありますが、災害対応ができるかといえば体制的に疑問で、やはり我々建設業協会の会員がその地域に存在することで地域住民も安心感が芽生えると考えています。

――東北建設業協会連合会への取材では、「地域建設業者は半公財」との声がありました。準公務員的な位置づけが必要ではないでしょうか。

鈴木専務 理屈的に認識していただくことと法律的に位置付けることが大事ですが、現状はそうはなっていません。消防はそういった位置づけになっており、何かあって怪我をすれば公的保障が適用されます。

ところが、地域建設業はやっていることは消防と同様でも、もし何かあっても国家的な、あるいは法的な保障がありません。他にも、除雪も必ずやらなくてはならない業務ですが、不安定で法律的な裏付けが何もありません。地域建設業も何らかの法律で、地域の守り手としてのエッセンシャルワーカー的な位置づけが確立されれば、我々も胸を張って仕事ができるわけです。地域建設業は縁の下の力持ちだと言われながらも、処遇が十分でないというのが現状ではないでしょうか。

除雪ができず、終日通行止めも?

――このままだと除雪もままならなくなりますね。

鈴木専務 そうですね。確かに除雪は大変ですが、会津地方のような豪雪地帯はそれなりの体制を整えているため、人手やオペレータさえ確保すればできます。ただし、そのオペレータが高齢化しており、人材の育成・確保が深刻な課題です。

問題は、年に何回かしか降らない中途半端な地域、福島県で言えば中通りです。たまにいわき地区で降ると除雪に慣れていないため、パニックになります。こうしたエリアの地域建設業をいかに継続的に維持できるかも大きなテーマと言えます。このまま先細っていては、中通りの道路は除雪ができなくなり、終日通行止めとなる可能性もあり、そうなれば大きな社会的損失を招くことになりかねません。

除雪で活躍する地域建設業 / 提供:福島県建設業協会

除雪で活躍する地域建設業 / 提供:福島県建設業協会

――そこで重要なのは人材ですが、残念なことに建設業は高齢化も進展しています。

鈴木専務 高齢者は技術・技能の熟練者でもあり、ノウハウも持っていますが、その方々がさらなる高齢化により業界から引退されることは大きな痛手です。

特に、建設業はノウハウが必要ですから、他業種から中途で入職してうまくいくという例は多くありません。そこで若い方に入職してもらうことが最重要課題です。

県内で建設系の学科を保有する高校は14校ありますが、残念ですが会津地方は数校しかありません。地域建設業は、毎年、若い人材を雇用していかなければ経営が成り立っていきません。

福島市や郡山市を有する中通りは比較的人材には恵まれていますが、会津地方は工業高校が不足しているので、普通科学生を採用し、ゼロから育成しています。また、大学生も会津地方にはなかなか来てくれないために、地域間での人材の担い手確保・育成についてバランスが悪いことが実情です。自前でイチから建設業の教育を行うことも非常に大変です。

――人材育成で県建設業協会がなにか実施することは。

鈴木専務 2021年度から福島県建設業協会では若手新入社員技術者を対象とした教育事業を立ち上げます。2週間ほどの研修なので、すぐに一人前の技術者になることではありませんが、それでも建設技術の初歩は身に着けられるため、少しでも企業のお役に立てればと思います。

福島県建設業協会が入居する福島県建設センター

福島県建設業協会が入居する福島県建設センター

建設業界における労働力不足は、技術者と技能者のカテゴリーがあり、この2つの人材をバランスよく確保できないとうまくいきません。特に人材確保という視点から見ると、現場で働く職人さんを確保することが最も重要です。建設業協会は技術者集団の組織ですから、専門工事業者の団体と連携し、人材確保していくという協力体制を強化していきたいと考えています。

――最後に、改めて東日本大震災の教訓を。

鈴木専務 あれだけの災害は、我々が生きてきた中ではありませんでした。しかも、原発事故までを含めた複合災害です。インフラを管理し、復旧するという地域建設業の使命としては、反省点はいくつかありました。

具体的には、いざという時に連絡がつきにくいことが多かったため、どこかに司令塔を置き、情報を一元化されている体制を早めに取っておくべきでした。携帯電話がほぼ使えず、通信手段がない状態で、「情報はまだか」という焦りもありました。

また、当時は燃料が全く県内に入ってこないため不足していた状態でした。最終的には、民間団体がガソリンを融通してくれたことと、エネルギー庁の対応により、数日間で燃料の件は解決しましたが、地域建設業と一般の方とで限られたガソリンをどう分配するか相当難儀をしたため、発災時の燃料の確保は大きな課題だと捉えています。

こうした問題は、経験しなければ分からないことが多かったですが、あらゆる事象を想定した時の行政との窓口の整備をしっかりしておかないと、経験のない災害が発生したときに右往左往するだけです。この事象であれば、この窓口と、決めておくべきだと考えています。

人材採用・企業PR・販促等を強力サポート!

「施工の神様」に取材してほしい企業・個人の方は、

こちらからお気軽にお問い合わせください。

«123
  • この記事をシェアする58
  • この記事をツイートする5
この記事のコメントを見る0
こちらも合わせてどうぞ!
「まるでバイオハザード」もう一つの“放射線施設”解体工事
「まるでバイオハザード」もう一つの“放射線施設”解体工事
恐怖を感じる放射線施設の解体工事 東日本大震災から間もない時期、私はある放射線施設の解体に従事した。 原発事故とは直接関係のない施設だったが、ちょうど放射線に関する過剰報道がされていた頃で、非常に恐怖を感じる現場だった。...
除染現場で「休業災害4日未満」300万時間を達成した朝礼当番のノウハウとは?
除染現場で「休業災害4日未満」300万時間を達成した朝礼当番のノウハウとは?
完全無事故無災害だった月は「たった2回」の除染現場 私は、東電福島第一原発事故に伴う福島県内の除染事業において、宅地除染の施工管理を担当してきました。元請ゼネコンの社員、派遣社員、下請、孫請など、1日平均1400人、最も...
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
BIMを活用したいけれど、どうすればいい? アウトソーシングや人材派遣で解決しよう
※本記事は『建設ITワールド』の許諾を得て掲載しています。 「BIMを活用したいけれど、人材が見つからない」「どう始めたらいいの?」—そんな悩みを解決するのが、ウィルオブ・コンストラクション(本社:東京都新宿区)が提供す...

この記事を書いた人

長井 雄一朗
この著者の他の記事を見る
建設専門紙の記者などを経てフリーライターに。建設関連の事件・ビジネス・法規、国交省の動向などに精通。 長年、紙媒体で活躍してきたが、『施工の神様』の建設技術者を応援するという姿勢に魅せられてWeb媒体に進出開始。
【福島建協】原発事故下の復旧作業から得た、3.11の教訓とは 【福島建協】原発事故下の復旧作業から得た、3.11の教訓とは

施工の神様をフォローして
最新情報をチェック!

  • フォローする5388

現場で使える最新情報をお届けします。

  • 施工の神様
  • インタビュー
  • 【福島建協】原発事故下の復旧作業から得た、3.11の教訓とは

コメント(0)

コメントフォームへ

コメントする コメントをキャンセル


コメントガイドラインをお読みになった上で投稿してください。

email confirm*

post date*

あなたも施工の神様に記事を投稿してみませんか?
おすすめ記事
  • 【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

    【髙松建設】「古来の技術と新たな発想を融合する」世界最古の企業”金剛組”再生でベスト・プロデュース賞を受賞

  • 点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

    点数稼ぎに走るのは「なんか違う」

  • 「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

    「暗闇の先の光見て」コロナ禍の”希望のトンネル貫通写真”が心に響く

  • 「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

    「地元の人間の意地。ただ、それだけ」 家族を失ってもなお、愛する石巻の復興に命を懸けた現場監督

  • 建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

    建設業界をイヤになった主任技術者は”造園”へ急げ!

  • 人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

    人と機械はどう補完? これからの橋梁点検

注目のコメント
  • 権力を振りかざす世間知らずの勘違い野郎どもは本当に消えていただきたいです。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 公務員なんて、甘ったれのわがまま人間の巣窟。特に、バブル世代にパワハラとかするのが多い気がする。

    「○んでくれ」「くせーんだよ」 発注者からの脅迫・暴言集【実録】
  • 34℃で湿度がどれくらいか判断出来ないが今日びの38℃超え猛暑に比べればまだまし。 皆が言う体調管理なんかで対応出来る範囲を超えている。 朝一番から警戒レベルMAXが普...

    最高気温36℃の”猛暑日”。舗装工事は中止すべきか?【熱中症対策】
  • 勝手に喫煙休憩するな→即飛び蹴り シュールなコントみたいだな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 辞めていいんじゃねーか? 下請けの奴隷ならともかく、大手ゼネコンの現場監督ならやりたい奴いくらでもいるだろw

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 若くても無能なら要らない

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • そんな無能はやめた方が現場のためだよ

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 飛び蹴りは普通に罪にならないか?

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 休憩するなら水分取るだけで充分なのにねwタバコまで吸いに行き注意されると即飛び蹴りとはヤニ中毒は危険だな

    「暴力も必要かも」大手ゼネコンの若手現場監督に、飛び蹴りした鳶職人
  • 結局本人の申告によるものでしかないので、無理がありますよ。 すべての作業員さんにカメラつけて録画でもするならば別ですが。 公共工事にしろ民間工事にしろ、昔からすれ...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 熱中症チェックシートは本当に不毛。 挙句の果てに、それを書いていても熱中症が発生したら「管理が甘かったからだ!」といってチェック項目を増やしたり、記入内容の真偽を...

    「チェックシートで熱中症を防ごう!」 それができたら誰も苦労しない
  • 建設業界のパワハラと言うよりは特定の会社の特定の上司のパワハラ。

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 返信した人の日本語もわかりません。 やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 建設業界って 何処に業界のパワハラをかいてるの? やり直し

    元自衛官が建設業界に転職したら、”パワハラの巣窟”でした
  • 所長が部下の人間性を否定するような現場がうまく回るはずがない。 現場は信頼関係で成り立っている。 現場の雰囲気は主に所長がつくりあげあてしまう。そのような管理職が...

    65歳以上と外国人は、全員”安全弱者”のヘルメットバンドをつけろ!? 納得できない話
  • この著者は神様とは思えないです まず、職人は工程を縮めたいんじゃなく無駄が嫌いなんです。それは管理者もだと思いますよ。 無駄=損害ですからね。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • スーパーゼネコンの監督とは仲良くなれないな。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • まったく現場の事を理解していない! もっと色んな事を経験して、勉強して下さい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • 不仲は横柄で生意気ななゼネコンのセコカンが原因だと思いますけどね。 舐められない様な教育受けているので仕方ない所もありますが。 職人さんも見栄えよりも工数へらして...

    「不仲説」 現場監督と職人
  •  不仲なら発注しない、請負わない。 お互い仕事できなくなればいい。

    「不仲説」 現場監督と職人
  • キャリアを考える
  • インタビュー
  • 失敗を生かす
  • 技術を知る
  • エトセトラ
  • 資格を取る
  • 建設
    用語
【PR】施工管理技士の転職に特化した求人サイト
施工の神様ロゴ
  • 施工の神様とは?
  • 原稿募集
  • 取材ライター募集
  • 運営会社
  • PR・プレスリリース
  • プライバシーポリシー
  • 広告掲載について
  • お問い合わせ
Copyright © 2025 WILLOF CONSTRUCTION, Inc. All Rights Reserved  リンクフリー
施工の神様