「残業してナンボ」の世界から脱却
――どこから改革し始めたんですか?
柳井氏 社長である父がプラントメンテナンス業界に入った当時は、突貫工事で機械を動かせばモノが売れる時代でした。まるで戦時中のように、休みなく24時間働き続けるような世界です。これは50年前の話ではありますが、未だにこの働き方の名残があるのも事実です。
こうした”残業過多・休日なし”の状況を払拭すべく、月の平均残業時間を10時間以下にするなど働き方改革に努めています。また、プラントメンテナンス業界は繁忙期と閑散期がはっきり分かれているので、閑散期に当たる夏季と冬季は長期休暇を取得してもらうなどの工夫をしています。
また、当社は副業OKにしており、休みの間は別の仕事をしてもOKだと伝えています。
――建設業で副業OKって珍しいですね。
柳井氏 ええ。ただし、先ほど話したように時期により繁閑がハッキリしているので、副業は閑散期にしてもらい、繁忙期は本業をしっかり頑張ってもらいます。メリハリをつけて働くことが大事ですからね。
――単価の話も出ましたが、給与制度も見直したんですか?
柳井氏 「給与テーブル」を採用しました。私の知る限り、プラントメンテナンス業界では初めてだと思います。
これは、従来の勤続年数で給与が上がっていく仕組みではなく、職人や機械エンジニアのスキルを客観的に判断し、給与が上がる仕組みを整えたものです。ランクをつくり、スキルに応じた年収を明確に定めて、10~20年後の給与が想像できる制度としました。

柳井工業の給与テーブル。
建設業界やプラントメンテナンス工事は「残業してナンボ」の世界ですよね。しかも、年功序列です。私の入社当初も、年功序列制度を採用していました。でも、それじゃ面白くないでしょう。
製造業の若手を受け入れる「在籍型出向」を採用
――人材採用は?
柳井氏 新型コロナウイルスの影響で業績不振に悩む企業を対象に、当社が従業員を受け入れ、雇用機会を提供する「ES(エキスパート・シェア)採用」を開始しました。
これは「在籍型出向」の仕組みを活用し、”即戦力のある労働力をシェア”する採用制度です。出向元企業から当社へと出向いただき、当社からは雇用機会を提供する、というものになります。

「ES(エキスパート・シェア)採用」
「労働力調査」(総務省統計局 2020年12月分)によると、12月の就業者は前年同月比で71万人減少、宿泊業やサービス業のほか、製造業での就業者の減少も顕著なことがうかがえます。特に、製造業では若年層がリストラされているというデータもあります。
一方、建設業においては2020年9-12月の間にも就業者数は微増しており、現場では人手不足が続いています。プラントメンテナンス事業を展開する当社も例外ではなく、労働力の確保が必要な状況です。
当社は建設業ではありますが、昨今失業者が増加している製造業で働く整備士の方や工場の管理経験がある方などは、プラントで勤務する上での基本的な知識やノウハウが身に付いているため、たとえ業界が異なっていても多くの方が即戦力になり得ると考えています。