静岡発の橋梁の総合メンテナンス企業

深澤さん(ブラスト施工技術研究会 理事・品質WG長、コウノ)
深澤さん(同理事・品質WG長、コウノ) 当社は、塗装や補修など橋梁のメンテナンスを軸にした施工会社で、売上の95%が橋梁の仕事です。ブラストについては、先代社長のころから造船改修のために使っていたと聞いていますが、橋梁にブラストを使うようになったのは、ここ10年ぐらいです。
弊社の社長と小寺会長とのつながりで、3年ほど前から研究会に参加しています。研究会では、理事として品質のWGをお引き受けしていますが、私自身がブラストに携わるようになったのはここ6〜7年前です。私自身ブラスト施工の現場に出て、仕事を回していますが、他の皆さんと比べれば、全然場数を踏めていないと思っています。
ここ5〜6年で橋梁へのブラスト施工はスゴく数が増えてきていますが、未だに「ブラストの正解ってなに?」という思いが常にあります。現場で一生懸命やることしかできないので、今でも常に勉強している感じです。
発注者がわからないまま、ブラスト施工が行われている
――「これがブラストだ」と言えるものがないということですか?
深澤さん そうですね。われわれだけでなく、発注者さんやコンサルさんもちゃんと理解されていないと思います。ISOで定める「Sa2 1/2という素地調整のグレードを確保するためには、ブラストを打たなければいけない」という本だけ見て、「ブラストをやれ」と提示されるケースがかなり多いんです。私から見れば「まだ全然大丈夫」なのに、です。
現場では、「ブラストとはこういうもので、こういうやり方でやるんです」というふうに一から全部説明しないと、発注者さんなどに理解してもらえないのが現状です。私自身ちゃんとわかっていませんが、発注者さんなどは、もっとわかっていない。そういう現状があるんです。
「Sa2 1/2とはこういうものだ」という客観的な基準がなく、「目視確認」のみです。これをなんとか「数値化」、「見える化」できないかと考えているところです。海外には、素地調整をチェックする検査機関があると聞いています。
ブラストの素地調整の仕上がり具合は、私も含め、職人や現場監督などそれぞれの経験に基づき、独自に判断しているのが現状です。
私としては、素地調整の客観的な基準をつくって、それを元にチェックできる人を育てていく必要があると考えています。研究会としても、ブラストの施工マニュアルをつくろうと動き始めたところです。
――素地調整について、職人さんと話し合いすることはあるのですか?
深澤さん 現場では職人の主観も当然入ってきますので、グレードに関するすり合わせは日々行っています。「コレ足りないよ」とか「ここまでしなくても良いんじゃないの」とか。私と職人で判断が分かれることはありますが、そこは私の「我」、「主張」を通します(笑)。
――施工会社で素地調整などの基準がバラバラな現状があるとして、それがどういう問題になるとお考えですか?
深澤さん 問題なのは、発注者がわからないところで、橋梁のブラストが行われているということです。仕事量につられて、ブラストを始める輩が増えているのも事実です。私は現場で職人たちに「橋梁のためになることをやれ」「やりちらかすな(適当なことをやるな)」ということを常に言っています。発注者が見てもわからないからといって、いい加減なことをやりたくないんです。
発注者に対して、なぜこういうやり方のブラストが必要なのかについて、毎回一から説明するのは、私は複数の現場を抱えているので、大変な労力を伴います。同じことを職人とも話し合わなければなりません。そういう状況だと、現場がなかなか進んでいきません。一方で、休みはしっかりとらないといけない。ブラストに関するちゃんとした基準がないと、現場監督として、いろいろと問題が出てくるということもあります。
「ブラストは高くて使えないよ」
――ブラストに対する発注者などの理解について、安保さんはどうお考えですか?
安保さん 失礼ながら、やはり、理解しているとは言えないと思います。以前、ある役所の責任者にブラストの説明に伺ったのですが、「ブラストなんて高いから使えないよ」と言われました。やはり、ブラストに関するちゃんとしたデータがないと、理解してもらえないと強く感じました。
発注者の無理解を覆すには、コンサルから提案してもらうしかないと考えました。ただ、コンサルも発注者同様、理解しているとは言い難いものがありました。インターネットとか、防食便覧とかの情報だけしかなく、実際のブラストがどういったものかについては、ちゃんと理解していないと思いました。
そこで、自分なりにブラストに関するデータなどを集め、コンサルに説明に行きました。素地調整程度3種で施工しても、ライフサイクルコストで見ると、これだけムダがあることなどについても、資料をつくって、説明して回りました。
新橋で使っている強溶剤型錆止塗料は、かなり錆止め効果が高いのですが、現場塗替塗装で現在使用している弱溶剤型錆止塗料は、防錆力が低いと感じています。以前は現場塗替塗装仕様でも強溶剤型錆止塗料が使用されており、昔は素地調整程度3種(電動サンダーによる素地調整)でも結構防錆効果を発揮していたのですが、弱溶剤になってからは、サビの発生が早いと思われます。
「なぜ3種ケレンがダメなのか」についても、自分の現場でやった写真を見せながら、説明しました。今は、比較表をつくって、「ブラストが一番良い」ということを説明しています。
――それでもまだブラストに対する発注者などの理解は進んでいないのですか?
安保さん そうですね。マニュアルには「橋梁の塗替えは重防食を基本とする」と書かれているのですが、そう書かれていることを知らない発注者の方がまだいます。一人ひとり説明して回るのは限界があるので、「マニュアルに重防食と書かれている。だから選ばないのはおかしい」という資料やブラストの必要性の資料をつくって、発注者さんやコンサルさんに一斉に配りました。私の説明だけでは、発注者はなかなか信用してくれませんので、公の書類をもとに資料をつくりました。