ブラストのことは、実は誰もあまりわかっていない
以前、ブラスト施工技術研究会の小寺健史会長へのインタビュー記事を掲載した。
一口にブラストと言われるが、ブラストには様々な工法があり、一長一短の世界なのに発注者もコンサルも、そして施工会社もそのことをちゃんと理解していない現状がある。ブラストに関する正しい理解を深め、それを普及、周知していく必要がある。そういうことから、研究会として活動している。
ざっくりそういう趣旨のインタビューだっだ。先日、小寺会長から「研究会メンバーにも話を聞いてほしい」旨、連絡があった。ということで、小寺会長をはじめ、5名のメンバーに集まってもらい、いろいろ話を聞いてみた。
参加メンバー
- 小寺 健史さん ブラスト施工技術研究会会長(極東メタリコン工業株式会社)
- 吉原 慎二さん 同研究会理事・会計(株式会社吉原鉄工所)
- 河原 淳人さん 同・企画運営長(山川産業株式会社)
- 深澤 文博さん 同・品質WG長(株式会社コウノ)
- 安保 充彦さん 同(安保塗装株式会社)
なぜブラストは品質が良いのか、エビデンスがない
小寺さん(会長、極東メタリコン) われわれが研究会を設立した背景には、ここ数年、インフラの長寿命化が指摘されていますが、ブラストについて、関係者の間で「いまだに深く追求されていない」ことに対する危惧がありました。
「ブラストが品質が良い」ということは、多くの方々が知っています。ですが、「なぜ品質が良いのか」は誰も良く理解していません。「ブラストがなぜ品質が良いのかを周知しよう」というのが、研究会設立の目的の一つでした。
ブラストの施工会社やメーカーなども、ブラストに関する知識や技術などをもっともっと研鑽していかなければならないという思いもありました。われわれブラストの施工会社などは、ふだんブラストを取り扱っているけども、「どこまでブラストをわかっているのか」と言うと、「実はあまりわかっていない」という実情があるからです。
それにはいくつかの原因がありますが、その一つとして、ブラストの施工会社同士の横のつながりがないことが挙げられます。「どこで誰が何をしている」という情報はほとんど入ってこない状態の中、私の会社も含め、「ウチの会社がやっているブラストこそが正しい」と考えて、それぞれ独自でやってきていたわけです。
ブラストはどういう技術なのかについてしっかりした情報発信、アウトプットを行う。ブラスト関係会社の横のつながりをつくり、それぞれの会社の取り組み、課題などを情報共有しながら、ブラスト業界を盛り上げていく。そういうところを目指して、7年前に研究会を設立しました。
研究会ではこれまで、国内でのブラスト施工のやり方、問題点などに関する情報共有を行ってきました。例えば、寒冷地ではこうやっているとか、暑い場所ではこういう問題が出るといった話を研究会メンバーの間で共有してきました。海外の事例視察なども行っており、米国サンフランシスコや韓国でのブラストの現場を訪れ、最新の技術などについて、知見を深めてきました。良いものがあれば、どんどん取り入れ、日本のブラストをより良いものにしていこうとしています。そんな感じで活動しているところです。
会員会社数は、今年7月時点で、正会員25社、賛助会員6社、合計31社となっています。今年は、コロナ禍にもかかわらず、新たに3社に入会していただいています。近年、大規模なブラスト工事が全国的に増えておりますので、研究会の活動に興味を持つ会社も増えていると感じています。ただ、研究会の目的は、「ブラストの仕事をとる」ことではなく、あくまで「ブラストに対する理解向上」と「技術力の研鑽」ですので、研究会に入っていただくことは大歓迎ですが、研究会としてとくに勧誘などはしていません。
――技術にフォーカスした集まりということですね。
小寺さん そうですね。私としては、ブラストに関する様々な技術について、学術的な根拠を与えたいという思いがあります。ブラストはこれまで、「職人の技術」だったんです。職人さんのカンとか経験によって支えられてきた技術、と言うか技能でした。これから若い人たちにブラストに関するノウハウを習得させていくためには、学術的な研究、エビデンスが必要だと考えています。ブラストに関するエビデンスを揃えていこうというねらいがあるわけです。のちに紹介があると思いますが、品質に関するWGにて、そういう取り組みを行ってきています。