ICT活用工事により作業時間は3~4割の縮減
――建設技能者・技術者の高齢化もあり、生産性の向上は必須になりますか。
杉山副所長 2016年9月に開催された「未来投資会議」では、「建設現場の生産性革命」に向けて2025年度までに生産性を2割向上させる方針が示されました。
この「建設現場の生産性革命」では、公共工事の現場で測量へのドローンの活用、施工検査に至る建設プロセス全体を3次元データで連結するなど、新たな建設手法の導入により、かつての3K(きつい、汚い、危険)と言われたイメージを払拭することで、多様な人材を呼び込み、人手不足を解消し、全国の建設現場を新3K(給料が良い・休暇がとれる・希望がもてる)という魅力のある職場として、劇的に改善を図っていく方針です。
実際のところ、ICT施工では労務の縮減効果が出ており、工事全体となる起工測量から電子納品までの延べ作業時間は、土工事や河川の浚渫工事では約3割縮減、舗装工事では約4割縮減効果が見られています。
その一方で、地域を地盤とする中小建設会社では、ICT活用工事を経験した企業数は、直轄工事受注企業全体の半数に留まっており、地域を地盤とする企業への普及の必要があると認識しています。
――民間だけでなく、地方自治体の土木技術者の不足も深刻ですね。
杉山副所長 ええ。例えば、橋梁や路面の点検等を土木技術者でない方が担当しなければならない実情もあります。事務職の方でも公共工事の発注手続きや監督業務を担当する方もいらっしゃいます。そのため、インフラDXや土木技術の知識を身につけなければ、発注者として対応することがいっそう難しくなっていくかと思います。
とくに今、ICT活用工事は大手ゼネコンから、中小建設会社へと広がりを見せています。その際、市町村の発注者もICT施工についての知識を持つことが重要です。地方自治体職員のレベル向上についても、当センターの重要な役割の一つであると認識しております。
「簡易ICT活用工事」で、中小建設会社にもICT施工を浸透させる
――今後、DXを現場単位でどう進めていくべきでしょうか。
杉山副所長 i-Constructionでは、ICT施工を行いやすい現場やトップランナーの企業から取組みを行ってきましたが、現在は工種の拡大、小規模現場への適用、さらには中小建設会社にも取り組んでいただく方向で、徐々に広がりを見せています。将来的にはさらに裾野を広げ、あらゆる現場でICT施工が当たり前に行われるようになることを期待しています。
そのために、国土交通省では簡易ICT活用工事もスタートしています。一般的なICT活用工事の流れは、3次元起工測量、3次元設計データ作成、ICT建設機械による施工、3次元出来形管理等の施工管理、3次元データの納品までをすべて実施するのが通常の流れですが、一方でハードルも高いです。

簡易型ICT活用工事の解説
そこで、3次元設計データ作成、3次元出来形管理等の施工管理や納品での活用は必須として、3次元起工測量やICT建設機械による施工は従来型を使うことも選択可能にし、できる部分だけでもICT施工を進めていくことを趣旨として、簡易ICT活用工事を進めています。
ICT施工未経験の中小建設会社の皆様にもICT施工Webセミナーを受講して頂き、簡易型ICT活用や全項目でのICT活用等、現場の実状をふまえた効果的な活用が進むことを期待しています。
インフラDXを一般の方々へ広める
――さらに、インフラDXを広めていく方法としてはいかがでしょうか。
杉山副所長 関東技術事務所構内には建設技術展示館があり、ここでは一般の方々でも新しい技術に「見て触れて知る」ことができます。来場された学生らは展示を見て、先端的な技術に驚かれることもあります。こうした側面からも将来の担い手確保や、一般の方と建設技術の橋渡しの役割も果たしていければと思います。

建設技術展示館に最新のインフラDX技術を体験できる「DXパーク」も開設

建設技術展示館には多くのICT技術も展示されているほか、現在、「Society5.0を実現する新技術」、「防災・減災・国土強靱化、インフラ長寿命化技術」をテーマに様々な技術が展示されている(写真提供:関東技術事務所)
人材採用・企業PR・販促等を強力サポート!
「施工の神様」に取材してほしい企業・個人の方は、
こちらからお気軽にお問い合わせください。