課題が山積する内装・建具工事業界の現実
――もう少し内装・建具工事業界の課題を深堀りしていただけますか?
湯浅氏 まず第一に、ゼネコンが提出した数量調書と実際の数量が大幅に異なる場合が多い点です。本来であれば、数量が異なることが分かった段階で再積算・見積もりが必要なのですが、多忙な現場ではそこに手が付けられずそのまま施工が進んでいき、現場が終盤に差し掛かった段階で工事店から「実際はこれだけの数量だったので、追加の費用をお願いします」とゼネコンに要請することがあります。
ですが、ゼネコンは「そんな話は聞いていない」と断り、追加費用をもらえないケースも多い。そうなると工事店としては材料商社に値引き交渉をすることになります。これでは健全なビジネスとは言えません。図面の変更とともに数量も変更しますから、数量積算も自動化できるようにすべきで、実現すれば工事店も実際に施工した分の費用を確保することができます。
――工程にも課題がありそうですね。
湯浅氏 工程表どおりに現場が進まないことは多々あります。とくに、工事店からは前工程の遅れや図面との差異発生はよくあると伺っています。例えば、3月から現場が開始し、材料も同じ時期に投入すると聞いていても、5月にずれ込むこともあります。工事店はゼネコンの施工図や承認図をもとに施工するのですが、その図面完了が遅れてしまうためです。
ゼネコンとしても多くの工種の図面を作成しなければならない中で、躯体や設備等の前工程の図面作成を優先します。ですから、後工程の内装工事の図面は遅れてしまう。しかし、工期完了時期は決まっているので、内装工事は極めて短い工期で完了させなければならないのです。
ですが、この工程の課題も施工図・承認図の半自動作成により解決できると考えています。

内装・建具工事業界に存在する様々なムダ
――今、建設職人の高齢化により、施工力が低下している話も多いですが。
湯浅氏 いまお話したとおり、内装工事は工期が圧縮されているため、本来1日に10人で対応できた工事が20人いなければ完了しない状況にあります。とはいえ、建設職人の絶対数は限られていますから、人を増やして対応することは簡単なことではありません。
今後、人口全体が減少しているため、建設職人の数は減りこそすれ、増えることを期待することは難しい。また、内装工事業界はイノベーティブな業界ではありません。石膏ボードの施工方法は30年前と変わっていませんから。その一方で、耐震天井という新たに施工の難しい部材も増えており、昔と比べて内装工事の施工の難しさは上がっていると感じます。
――技能の伝承が難しいという声も聞きますね。
湯浅氏 建設職人は技能を囲い込んでしまう傾向にあります。優秀な建設職人であっても属人的なスキルとなり、若い世代に伝承されなければ施工力が一気に低下してしまいます。これまでであれば、材料商社の営業担当者の紹介や工事店同士の建設職人の応援などで乗り切っていましたが、これから建設職人の絶対数が減少していけば、こうした体制も維持しづらくなっていきます。
であるならば、より少ない工数で作業が完結する仕組みを構築しなければ、施工の効率化は実現できません。そのためにも、現場でやる作業をなるべく減らし、プレカット・プレハブ等の工場でやる作業を増やしていかなければなりません。
これまでは積算数量があいまいだと、ぎりぎりまで寸法が決まらなかったのですが、BIMであれば寸法も容易に算出できますし、測定方法もレーザースキャンや360度カメラでより現実に近いところで拾える未来がすぐそばに来ています。これらの技術を組み合わせることにより、現場の廃材も減らせますし、たとえ建設職人が減少したとしても生産性を落とすことのないような世界を「BuildApp」を通して実現できればと考えています。

施工の課題や解決方法について
――「BuildApp」の展開が進んでいけば、ゼネコンや内装工事業界の悩みのかなりの部分を解決できるようになりますね。
湯浅氏 前述したすべての課題での解決提案として、現行策のマンパワーではなく、「BuildApp」で支援していきたいですね。
サブコンもデジタル化対応は必須
――「BuildApp」に対して、建設会社からはどのような反響がありましたか?
山﨑氏 スーパーゼネコンでも内装や建具工事までのBIM化については手が回っていない状態にあるようで、実際いくつかアプローチがきました。ゼネコンは全般的に関心度は高く、詳細説明の要請も多く、立て込んでいる状態ですが、少しずつ実現場での実証実験が始まっています。
一方で、当社が内装工事店様を中心に組織している野原装栄会の会員企業の役員の方々に「BuildApp」のお話をさせていただいた際には、「ぜひ取り組んでいかなければいけない」という反応と「私たちには別世界の話」という反応で二分化されました。
当然のことですが、今までのやり方を変えることに抵抗がある方もいらっしゃいます。ですが、これからゼネコンは、本格的にサブコンにBIM対応を求めていきます。そして、いち早くデジタルを取り入れたサブコンに仕事を指名していくのではと考えております。
そうすると「別世界の話」と捉えてきた工事店も本格的にBIMを取り入れようとしますが、ファーストペンギンの工事店とでは大きな差が生まれてくると思います。ですので、BIMについてはこれから大きな潮目が来るでしょう。
我々はこうした課題を抱えている各プレイヤーのハブとなり建設業界を支援していきます。BIMを起点としたデータでプロセスを繋ぐのはもちろんですが、上記のゼネコン、サブコン、建材メーカー等様々なプレイヤーを繋ぐハブ機能を担い、新しい形のリアルネットワークを形成することが商社としてのこれからの価値だと考えております。
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