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【ニチレキシリーズ最終回】「舗装の神様」が語る仕事の原点とは?

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公開日:2022.07.06 / 最終更新日:2022.08.16
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発想の転換で、ポーラスアスファルトを開発

――この経験が舗装屋としての原点になったわけですね。

羽入さん そうですね。ただ、私が本格的に研究開発をやり始めたのは、その10年後、33才のときからなんです。

それまでにも研究所に4年ほどいて、その期間に誰にも負けないぐらいアスファルトの研究をした自負はあるのですが、それを仕事に活かす機会には恵まれませんでした。その後、東京支店のほうでセールスエンジニアのようなことを6年ほどやりました。そして、再び研究所に戻ってからです。

お客様から「こういうアスファルトをつくれないか」と言われたとき、「絶対につくってやるぞ」という強い気持ちに変わりました。しかし、新しいアスファルトをつくると決意したのは良いものの、どこにも答えがありません。当時の専門書を開いても、海外の論文を読んでも、載っていません。だから、答えは自分で見つけるしかありませんでした。答えを見つける上では、20代に研究所で得た基礎知識が役に立ちました。

そこで、仮説を立てて、お客様にわかりやすいように絵に書いて、どうやったらちゃんとつくれるか、100回やったら100回ともつくれるかということを研究しました。

――それはどのような研究開発だったのでしょうか?

羽入さん 高速道路の排水性舗装です。私の40年の舗装屋人生の中でも、2回目となる運命的なチャレンジでした。

1980年代に「第二次交通戦争」ということが言われました。高速道路で多くの死亡事故が発生し、日清戦争の戦死者数を上回るほどの死亡者が出たからです。1960年代の第一次があったので、第二次と言われたわけです。

当時の高速道路の舗装は、密粒度アスファルト混合物という一般的な舗装でした。この舗装だと、短期間でワダチぼれができて、そこに水が溜まって、交通事故が多発していました。あちこちでハイドロプレーニング現象が起きたわけです。

そのころ、ヨーロッパのほうでは排水性舗装というものをちょっとずつやっていたので、日本でもこれをやってみようという話になりました。そこで、そういうアスファルトをつくることが、当時の33才だった私のミッションでした。「ポーラスアスファルト」という新たなアスファルトの開発でした。

ポーラスアスファルトは、通常の舗装に比べ、空隙率が約5倍とスカスカで、雨がよく浸透するので、水が溜らないのが特長です。

当時の日本には、ポーラスアスファルトを支える丈夫なアスファルトがありませんでした。一般的なアスファルトは、アスファルトネットワーク型で、アスファルト中にSBS(スチレン・ブタジエン・スチレントリブロック共重合体)というポリマーを分散させて強度を出すという構造でしたが、この構造のまま雨を浸透させようとすると、強度的にムリでした。何度か試験しましたが、すべて失敗しました。

そこで、それまでの常識を無視し、発想を逆転して、SBSネットワーク型に変えようということで、SBS中にアスファルトを分散させる構造を試してみました。一番安いアスファルトを増量材として使ったわけです。試験した結果、これなら使えるということになりました。

ポーラスアスファルトが採用された結果、当時の日本道路公団の調べでは、交通事故の発生率が84%も減少しました。こういう1ミクロンとか10ミクロンの世界で起きていることをコントロールすることで、巨大な土木構造物の性能を大きく変えることができるわけです。

私がこれまでやってきた仕事は、こういう国家プロジェクト的な大事な現場で使えるアスファルトの開発が多いです。最近では、コンクリート橋床のための高性能防水、30年持つ防水材料を開発しています。

世の中にないアスファルトをつくるのが喜び

――仕事で一番嬉しかったことはなんですか?

羽入さん それはやはり、今までに世の中になかったアスファルトを自分でつくったときです。自分で考えた新しい発想をカタチにして、疲労試験をやって、他の研究員たちと一緒になって、「これはスゴい、これを使って本格的にやろうぜ」と盛り上がったときです。ポーラスアスファルトを開発したときがまさにそうでした。ポーラスアスファルトが実際の高速道路に採用され、交通事故が大幅に減ったことも嬉しかったですが。

あと、親戚から「最近の高速道路は走りやすくなったよね」と言われたときも、非常に嬉しかったです。

――ツラかったことはありますか?

羽入さん 製品のクレーム対策で国内外の現場を飛び回ったことです。やっているときは大変でしたが、クレーム処理の仕事を通じて、結果として多くの新製品・新工法を開発することができました。加えて、いろいろな人脈ができましたし、技術を現場に根付かせることもできましたし、非常に密度の濃い時間でもありました。

現場で「開きを埋める」のも舗装屋の大切な仕事

羽入さん

――やはり現場仕事は大事ですか?

羽入さん 研究所でどんなに良い材料をつくっても、現場の施工力、技術力が追いつかないと、実際の現場では良いモノはできないということがあります。机上の要求性能に合わせてつくったモノが、現場の要求性能と合致するように施工できるかと言えば、それは非常に難しいことだからです。

例えば、ある高速道路の橋梁床版防水の研究開発をしたことがあるのですが、床版のすべてのコンクリートが同じ状態で仕上がっているかと言えば、そういうことはありません。橋梁屋さんの世界ではちゃんと基準を満たしているのですが、われわれがつくった床版防水がそこにうまくはまるかどうかという基準と比べると、その緻密さにおいて2オーダーぐらいの大きな開きがありました。

われわれには、その開きを埋めながら、仕事をする必要があるんです。舗装屋にとって、そういう仕事も大事な仕事なんです。

私が大切だと思っていることは、たくさんありますが、特に目に見える要求性能や仕様などを単に満足するだけでなく、そのウラ側に潜む本当の問題・課題に気づいて、丁寧に観察し、メカニズムを考え、仮説を立てて課題解決するという真摯な姿勢、丁寧な仕事を実践することです。地味ですが、コツコツとひとつひとつ良い仕事を続けることです。

今回の連載シリーズを読んで、ニチレキに興味を持ったクレイジー技術者をお待ちしております。

【ニチレキシリーズ#3】目に見えるカタチで仕事が残るのが「舗装施工の魅力」

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この記事を書いた人

四国の犬
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基本的には従順ですが、たまに噛みつきます。
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