自動運転バスの実証実験で「ICT LED電光掲示板」を設置
――道路標識業界で今後、注目すべき点はどこにありますか。
岡本社長 すべての点においてデジタル化ではないでしょうか。事業進展、工事を進める上での品質確保、安全・安心対策において重要であり、イメージ的には道路標識に通信機能を持たせるといえばわかりやすいでしょう。
――そのデジタル化やDX技術ではどのような進展が見られるでしょうか。
岡本社長 自動運転が叫ばれた時代に、私は5年後には自動運転車両が走っているだろうと予測しましたが、その予測は裏切られました。やはり日本は規制が多く、自動運転はまだまだ難しい。
そこで、まずは特区を決めて、駅、病院、市役所、コンビニ、スーパーで2~3kmなどの限定的なエリアをつなぎ、交通移動弱者のために、自動運転バスを運行させるような世界を実現したいと考えています。
栃木県那須塩原市・塩原温泉郷で実施する「栃木ABCプロジェクト 自動運転バスを活用した実証実験」では、自動運転バスと連携して点灯・表示する「ICT LED電光掲示板」を設置しました。見通しの悪いカーブの安全対策や観光施設「湯っ歩の里」での自動運転バスの接近状況の案内が目的です。実証実験では、日本工営株式会社が栃木県県土整備部交通政策課の「無人自動運転移動サービス実証検討調査業務委託」を受託し実施するもので、日本工営の指導の下、当社は自動運転移動サービスの実現による社会課題の解決を目指し、より多くの方々の安全・安心な生活に貢献していければと考えています。
また、この「電光掲示板」ですが、自動運転バスのためだけに用途を限定しない方針です。たとえば学校から児童が帰宅する時間帯に、「これから児童が帰宅します。注意してください」と掲示板で流したりする工夫も考えられます。また、道路の緊急通行止めの際に「緊急対応 通行止め」などの表示を、職員が現地に行くことなく対応可能です。道路管理者と地域住民のために用途をさらに拡大することが必要です。
自動運転などの次世代モビリティ時代の安全を道路側から補完する「路車間通信」を研究し、街の安全に生かす。次に安全・安心で快適な自動運転バスが地方都市や山間部にける交通移動弱者の役に立つ。そんな社会の実現に貢献したいと考えています。
駐車料金のキャッシュレス自動払いの駐車場の新会社に出資
――業態も大胆に変容していることが分かります。ほかの取組みは。
岡本社長 次世代モビリティの分野では、ETCマネジメントサービス株式会社に出資をして、新しい取り組みを行っています。これはETCを活用した駐車場を作り上げるのが目的です。栃木県那須町にある当社の那須工場敷地内にETCパーキングの試験施設である「ETCパーキングラボ」の建設工事が2022年4月中旬に完了しました。今後、ETCパーキングラボを用いて関連機器の調整や必要な試験などを行い、サービス開始に向けての準備を進めます。ETCパーキングは、ETC技術により車両を認証するほか、駐車料金のキャッシュレス自動支払いを可能にする新世代の駐車場です。
――他にはどのような技術開発が実施されましたか。
岡本社長 たとえば、当社では遠隔で操作が可能なICTゲートを開発しました。当初、自動運転バスの出入りのために開発したものですが、2021年1月に宮城県大崎市の東北自動車道で雪によって視界が奪われるホワイトアウト現象により、約1キロにわたって断続的に事故や立ち往生が発生し、130台超、約200人に影響が出ました。視界不良ですから、入口やサービスエリアから道路へクルマが入り、事故がさらに悪化しました。そこでネクスコの管理者がボタンを押せばゲートが閉まり、クルマが入らなくなるようなシステムにするような使い方があるのではと思いつき、先般、ある管理事務所に1セットを納入しました。
――施工面でなにか取組みはありますか。
岡本社長 施工に協力してくれる優秀な施工会社約40社が仲間にいます。彼らの中から毎年マイスターとして優れた協力会社を認定する「マイスター制度」を運用することで、協力会社さん同士が切磋琢磨して、能力を向上できるような仕組みを作っています。
さらに私たちの施工部隊は、施主様や元請様と最も近い位置で長い時間一緒に過ごすことになります。そこで現場で工程や安全を管理するだけでなく、日々、お客様の困りごとを聞き、その場で改善する、あるいは次の発注物件に向けての提案を行うなど、施工管理者が提案活動も並行して行うことが、お客様から信頼を得ることに繋がっています。
――非常に革新的な発想のお話をいただきましたが、その根底には何があるのでしょうか。
岡本社長 野原ホールディングス株式会社の代表取締役社長兼グループCEO野原弘輔が4年前に就任し、新たな改革を促進することを我々グループ会社の社長に求めています。我々はその指示のもと、新たな取組みを展開しています。
私の思想の根底には、会社の社員は家族であるという家族主義があります。従業員を大切にし、これから50年先も会社を存続していくためには、デジタル面、働き方、事業形態もさまざまな点について変革していかなければなりません。自動運転社会が到来すると、現況の道路標識(アルミ板+反射シート)は、きっと減っていくでしょう。現在は成長産業~成熟産業ですが、衰退産業にならないよう、当社としては事業戦略の一つに次世代モビリティへの取組みに注力していきます。
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