働き方改革のためのインフラDXに注力中

本省庁舎内に設置された「インフラDXルーム」
――課長として、とくにチカラを入れてやっている仕事はありますか?
見坂さん やはり、建設業界に関する仕事ですね。とくに働き方改革に絡むところにチカラを入れています。
建設業界は従来、キツイ、キタナイ、キケンの「3K」と言われてきました。今は、「新3K」として、「給料」がしっかりもらえる、「休暇」がしっかりとれる、「希望」が持てるの「新3K」を打ち出しています。
これを実現するために、I-ConやDXといった新しい取り組みをしていく。そういうスタンスで仕事をしているところです。
建設業界の給料はまだまだ低い
――具体的にはどういう取り組みになるのでしょうか?
見坂さん たとえば、給料で言えば、設計労務単価などを10年連続で引き上げています。この流れは今後も続けていくべきだと思っています。
私は、建設業界の給料水準は、ほかの業界に比べて、まだまだ低いと思っています。工場などの製造業と比べると、現場で働く方々の給料は引き上げられたとは言え、まだまだ低いと思います。
まずは、発注者が設定する単価については、今後もしっかり引き上げていく必要があると感じています。建設会社も、これを踏まえて、従業員の給料を引き上げていっていただきたいというのが、私の思いです。
週休2日の定着により、罰則付き時間外労働規制をクリアする
見坂さん 2024年4月から、建設業においても、罰則付きの時間外労働規制が適用されます。改正労働法の施行に伴う5年間の猶予期間が終わるからです。この規制が適用されると、月45時間、年360時間という時間外労働の上限規制がかかってきます。これを守らない建設会社は罰せられます。
いわゆる「2024問題」ですが、残り1年半を切りました。国交省としても、建設会社と一緒になって、働き方改革を進めていかなければならないと考えているところです。
その一つの手段として、建設現場の週休2日制があります。建設業界も「週休2日が当たり前」にならなければいけません。国交省直轄の土木工事で言えば、97%が週休2日になっています。都道府県、市町村の土木工事についても、週休2日を拡げていただきたいということで、お願いしているところです。
公共工事で週休2日が定着すれば、民間発注工事にもその波が及ぶことが期待されます。民間同士の契約なので、なかなか難しいところがありますが、われわれとしては、民間事業者に対して、週休2日の定着をお願いしていかなければならないと思っています。
週休2日が定着したとしても、平日の残業が増えてしまっては意味がありません。これを防ぐためには、工事書類や手続きなどの簡素化や削減といったことにも取り組んでいきたいと思っています。
インフラDXは現場だけでなく、国交省の働き方も変える

本省エレベータ内に掲示された本省での働き方改革に関するポスター(右)
見坂さん 期待を持ってもらうためのツールとしては、I-ConやインフラDXの推進があります。
I-Conについては現在、「2025年までに建設現場の生産性を2割向上させる」ことを目標にして、取り組んでいるところですが、すでにかなりの効果が確認できています。工種によっては、生産性の向上が見込めない工事もありますが、そういう工事も含め、目標達成に向け、引き続き取り組みを進めていく考えです。
インフラDXは、I-Conの取り組みをさらに広げた概念になります。I-Conが建設現場の生産性向上を目指した概念であるのに対し、インフラDXは、インフラの利用やサービスの向上を目的としたツールとしての活用といったことも含んでいます。たとえば、ハザードマップの3D表示、VRを用いたバーチャル現場、AIによる画像判別などがあります。
インフラDXを進めることは、建設現場で働く方々だけでなく、国交省職員の働き方改革につながる。そう考えています。