数千万程度の投資もできないのは、経営者としていかがなものか?
――やはり、そこは経営者次第ということになるのでしょうか?
吉川社長 それもそうかもしれません。私は、とある異業種交流の会に参加しているのですが、製造業などの他業種の若手の経営層の方々と交流する機会があります。その方々によると、製造会社では、年商と同じか、その倍の金額の投資をけっこうしているそうです。
たとえば、年商20億円の会社が海外に工場をつくるために、40億円投資するといったことをやっているそうです。それだけの額を投資するのに、それに見合った売上が約束されているわけでもないし、誰が保証してくれているわけでもありません。にもかかわらず、必要な投資だということで、投資しているわけです。言ってみれば、リスクをしっかりとって、経営しているわけです。
この点、建設業界はどうなっているかと言えば、年商10億円程度の会社でも、数千万円程度の重機を購入するのさえ、躊躇している会社が多いんです。しかも、監督官庁であるとともに発注者でもある国土交通省さんが「やりましょう」とバックアップしてくれている環境があるわけです。他の業界ではまずありえないことです。ビジネスとして、他の業界に比べると、失敗するリスクはかなり低いと言えます。
製造業に比べるとはるかに恵まれた環境にあって、投資する金額もはるかに少額なのに、建設会社がかたくなに投資しないのはいかがなものなのか、という気がしてなりません。
ICT施工の普及はまだまだ
――建設業界におけるICT施工の普及の進捗について、どうご覧になっていますか?
吉川社長 まだまだだと思っています。国土交通省の仕事を受注している会社の間では、ICT施工は当たり前になっていますが、県レベルになると、まだ当たり前にはなっていない感じです。それが、市町村レベルになると、「なにそれ?」という感じですので(笑)、普及したとは言えない状況だと見ています。
――来年度からBIM/CIMが原則適用になりますが、金杉建設の対応はいかがですか?
吉川社長 ウチの場合は、ICT施工の内製化をした時点から3Dモデルを活用して発注者との打合せを行っており、自然な流れでICT施工からBIM/CIMモデルへの対応ができているので、全然大丈夫だと考えています。BIM/CIM原則適用と言っていますが、中身を見ると、適用基準はかなりユルイので、どんな会社でも、意外と簡単に適用できると思っています。
ICT施工で成果を出したことで、採用活動も順調

インターンシップ中の一コマ(金杉建設写真提供)
――ICT施工は、若者ウケが良いので、リクルーティングに有利だという話を聞きますが、どうですか?
吉川社長 それはその通りです。ウチの会社にも、そういう若手社員が何人かいます。おかげで、社員採用は順調です。2021年5月には、(株)マイナビが主催する学生が選ぶインターンシップアワードにも選ばれました。これ以降、ウチのインターンシップの希望者、入社試験受験者は格段に増えました。
――地域の建設会社は「若い人が来ない」という嘆きの声に満ちているという話を聞きますが。
吉川社長 埼玉県内もそうです。人が来ないので、みなさんかなり苦労しているという話を聞きます。
――金杉建設と採用に苦労している他の会社とでは、なにが違うのでしょうか?
吉川社長 ウチの場合は、やはりi-Construction大賞を受賞したことが大きいと思っています。これによって、会社の知名度がグンと上がりました。ネットで検索しても、ウチの会社が上位にヒットすると思います。ウチの会社は80名程度の規模の会社ですが、以前から採用活動にはチカラを入れており、採用専属の社員を1名置いているんです。専任で責任者なので、採用活動に目一杯チカラを注ぐようになります。わたしもしばしば、学校訪問に連れて行かれます(笑)。
――働き方改革への対応については、いかがですか?
吉川社長 必要な取り組みだと考えていますが、働き方改革については、ウチは最先端というわけではありません。先行している会社の取り組みを参考にしながら、現場仕事の分業化などを進めていきたいと考えています。
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参考になります!
土木だと工種が少ないので比較的、中小企業でも対応しやすそうですね。