東急建設株式会社と株式会社アイリッジは、RFID(無線自動識別)タグとスマートフォンアプリを活用した建設DXサービス「工具ミッケ」を共同開発し、このほど販売を開始した。概念実証では最大8割程度の工数削減効果が認められており、東急建設の鉄道工事5か所の現場での導入も決定している。アイリッジと取引実績のある鉄道会社の建設現場を中心に2022年度中に20か所の展開を目指す。また、今後もサービス改善を重ねながら、より幅広い建設現場のDXを支援する。サービスの提供はアイリッジが担当する。
鉄道工事では一つでも工具の置き忘れがあると重大な事故が発生するおそれがあるため、工具管理は徹底して行われている。終電から始発までの短時間の夜間工事のなかでその工具管理の効率化を図ることができれば、鉄道工事の働き方改革も実現できる。
今回、東急建設 価値創造推進室デジタルイノベーション部 部長の小島文寛氏、同社都市開発支店 鉄道土木部 学芸大学総合事務所 所長の津島史人氏、株式会社アイリッジ MaaS事業推進室 室長の吉岡大輔氏が解説する。
鉄道工事での工具置き忘れは古典的チェック手法
鉄道工事で使用する工具はドリルや脚立など多岐にわたるが、現場への工具の置き忘れを防止するため、これまでは持ち出す工具をまずヤード(資材置き場)で紙に書き出し、現場に移動後の作業開始前に1回、作業終了後に1回、ヤードに戻って1回の計3回、一つずつ目視確認をしながら慎重に照合するという作業が毎回行われてきた。
「工具ミッケ」では、ひとまとめにした工具類の上にRFIDスキャナをかざすだけでスマートフォンアプリ上のリストと照合でき、概念実証ではトラック1台分ほどの工具類でも1分もかからず照合から作業報告完了までが可能になり、ターミナル駅の工事現場などの大規模な現場ほど工数削減の効果が期待できる。

建設DX サービス「工具ミッケ」の概念図
では、従来方法と比較して、どのくらい短縮するのか。一般的には、紙の点検票の用意(5分)から始まり、紙の点検票への工具一覧の記入(10分×2人)、工事終了後の工具再チェック(10分×2人)、報告書提出1分でを要するという。「工具ミッケ」を使えば、新規工事登録(追加1分)、持ち込む工具のスキャン(30秒×1人)、工事終了後の工具再スキャン(30秒×1人)、報告書レポート送信(1分)と合計わずかで済むと概念実証で確認した。

従来の工具管理と「工具ミッケ」を使った比較
東急建設がデジタルイノベーション専門部署を設立した狙い
東急建設ではデジタルイノベーションに注力し、専門部署を設立している。その責任者が小島文寛氏だ。同氏は、2004年に東急建設に入社。技術研究所でコンクリート分野の施工・維持管理技術の研究開発に関わり、東北新幹線延伸工事や東日本大震災直後の復旧工事の施工管理にも携わった。
2012年から、社内の土木部門にBIM/CIMやICTの導入を始め、国土交通省のi-Constructionの社内推進にも携わった。日本建設業連合会の専門委員として、国土交通省のCIMガイドライン策定にも関与した。2021年4月より、新設された価値創造推進室デジタルイノベーション部に配属、東急建設のデジタルトランスフォーメーションに向けて、新しい価値創造に取り組んでいる。
そんなことしてる場合か?
相鉄のやりそこなった工事のリカバリーとっととやれよ